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えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

フランス文学

『フランス文学は役に立つ!』/ZAZ「シャンゼリゼ」

鹿島茂『フランス文学は役に立つ!』、NHK出版、2016年を読む。 「役に立つか立たないか」という功利主義的な発想は、えてして短絡的で底が浅いものである。したがって、「役に立つか」というような問いを安直に立てないような人になるためにこそ、文学は有…

楽しむ秘訣(『パスカル『パンセ』を楽しむ』)/ディオニゾス「ジャックと時計じかけの心臓」

山上浩嗣『パスカル『パンセ』を楽しむ 名句案内40章』、講談社学術文庫、2016年を読む。 17世紀の思想家パスカルは、なにしろ言うことが厳しく、その調子はさながら人間性を丸ごと断罪するかの如くのものだから、これに挑もうとする読者の側はついつい、膝…

彼は部屋を出て、そして階段に消える途中/ミレーヌ・ファルメール「影で」

12月17日(土)、関西マラルメ研究会@京都大学。『イジチュール』草稿。" Il quitte la chambre et se perd dans les escaliers, (au lieu de descendre à cheval sur la rampe)" 途中まで。 初期マラルメの文章は後期のような構文的ねじれはさほど見られな…

燃やしてはいけないもの/ヴァネッサ・パラディ「空と感情」

『ハリー・クバート事件』を読んでいたら、はじめの方にこんな場面が出てくる。殺人事件の容疑者として疑われた師匠たる大作家に、手書き原稿などの品を燃やしてくれと、物語の語り手が頼まれるのである。 原稿は大きな炎となって燃え上がり、ページがめくれ…

『繻子の靴 四日間のスペイン芝居』私的感想

拝啓 不知火検校さま 先日(12月11日(日))、京都芸術劇場春秋座で観劇したポール・クローデル作『繻子の靴 四日間のスペイン芝居』(翻訳・構成・演出:渡邊守章)について、詳しく感想を述べよとのご指示を頂戴いたしました。その勤めを果たすべく、ここ…

『あらゆる文士は娼婦である』

石橋正孝・倉方健作『あらゆる文士は娼婦である 19世紀フランスの出版人と作家たち』、白水社、2016年を読む。 芸術作品はそれが流通する媒体と切っても切れない関係にある。19世紀フランス社会においてはペンで身を立てることが可能となり、作家が職業とし…

『ゴリオ爺さん』覚え書き

「それじゃあ」と、ウージェーヌは、うんざりしたといった顔つきで言った、「あなたたちのパリってのは泥沼じゃないですか」 「しかもへんてこな泥沼でね」と、ヴォートランは言葉をついだ。「馬車に乗ってその泥にまみれる連中は紳士で、徒歩でその泥にまみ…

「モーパッサンを巡って」移転のお知らせ

このたび、長らくお世話になっていたlitterature.jp から独立することになりました。 モーパッサンを巡って なんと、maupassant.infoのオリジナル・ドメインを取得しての再出発になります。 再出発を祝うべく、翻訳を一本掲載いたします。ふと勢いで「首飾り…

ああ、ユゴー

Le Magazine littéraireの4月号に、「フランスを代表する作家は誰か」というアンケートを取ったという記事が載っている。35人の作家の中から6名までを選ぶ、という形式で、回答者は1,006名(18歳以上)。その結果は以下のとおり。括弧内は%。 ヴィクトール…

シャルル・クロの頭

引き続き、何枚かの肖像画を追加。 その中の1枚がシャルル・クロ。なぜかほぼ完成状態で放置されていたものを仕上げる(元写真はナダール撮影のものの由)。 シャルル・クロに関しては、現在、日本語でもしっかりとした研究を読むことができて素晴らしい。 …

『今日の人々』のモーパッサン

鹿島茂・倉方健作、『カリカチュアでよむ19世紀末フランス人物事典』、白水社、2013年 刊行を寿ぎ、勝手に便乗企画を立てました。 ピエールとポール 『ギ・ド・モーパッサン』 件の『今日の人々』の第246号、「ピエールとポール」の手になる モーパッサンに…

フランス自然主義文学

おもむろに宣伝させていただきます。 アラン・パジェス、『フランス自然主義文学』、足立和彦訳、白水社、文庫クセジュ、2013年5月 もうすぐ刊行です! Q980 フランス自然主義文学 - 白水社 この際アマゾンもはっつける。 Amazon CAPTCHA はるか以前から出し…

ジョルジュ・サンドの理想主義

似顔絵の次は彫像と、 我ながらそんなに「顔」が好きなのかと呆れるが、 これまたおじさんばかり続いた後には、 ジョルジュ・サンドに救いを求めるのだった。 リュクサンブールのサンド像は、 François Sicard (1862-1934)により、1905年作の由。 いかにも19…

ルコント・ド・リール的絵画

またリュクサンブール公園に戻って、 この公園随一の仰々しい大作、 ルコント・ド・リールの像。 Leconte de Lisle (1818-1894). 豪勢な名前だが、貴族ではなかった。 「前の名前」はシャルルであるが、 姓だけをペンネームのように使ったので、 もっぱらル…

シャトーブリアンの時代

パリ、7区。 Square des Missions étrangères にある シャトーブリアンの像。 彫刻家 Gambierによって1948年に作られた由。 この公園はrue du Bacに面しているのだが、 この通りの住居に、晩年のシャトーブリアンが 住んでいたのにちなんでいる。 そういえば…

ミュッセ頌

モンソー公園に戻って、 ミュッセ(1810-1857)の像。 Alexandre Falguière (1831-1890) が手掛けたものを、 Antonin Mercié (1845-1916) が完成させたものらしい。 1906年にコメディー・フランセーズの前に置かれ、 後に今の場所に移された由。 「夜」連作詩…

靴底が前のランボー

ここのところ度々お世話になったT君に 感謝の気持ちを込めて、 ランボー像をささげます。 パリ4区、place du Père-Teilhard-de-Chardin にある Jean-Robert Ipoustéguy (1920-2006)による "L'Homme aux semelles devant" 「靴底が前にある男」という題の作品…

モンテーニュの顰み

19世紀ばかり続いたので、 今度はモンテーニュ。 rue des Écoles, ソルボンヌの真横あたり。 Wikipédia によるならば、 Paul Landowski (1896-1961)の作。 1934年にパリ市に寄贈される。 もとは石像だったが、1989年に、 学生によるいたずらや破壊によりよく…

スタンダール徒然

ロダンといえば、 リュクサンブール公園にも像がある。 今度はスタンダール。 1920年に設置らしいが、正確なことはよく分からない。 ブロンズが溶け出してるんでしょうか。 彫刻家David d'Angers のデッサンに基づくものの由。 バルザックといいスタンダール…

時々はバルザック

私自身が「彫像熱」statumanieに憑かれたみたいに なってますが、ロダン作のバルザック像。 ロダン美術館にある方が元のようで、 これはラスパイユ通りとモンパルナス通りの交差点にあるもの。 1939年に設置された由。 ロダン作バルザック像は、 文学者協会…

『ジル・ブラース』の標語

リュクサンブール公園には ヴェルレーヌの像もある。 実物はやたらに大きいことに驚かされる。 Auguste de Niederhäusern, dit Rodo (1863-1913)作。 1911年に公園に置かれたものの由。 これまたすり減ったのか、なんだか可愛らしくなっている。 3人の女性の…

読書の影響

何の脈絡もなく、 リュクサンブール公園のボードレールの像。 なんとなくおかっぱ頭に見えるのであるが、 古びてすりへったからかしら。 Pierre-Félix Fix-Masseau (1869-1937)の作、 1933年に制作、 公園に置かれたのは1941年である由。 よく見ると台座に詩…

筆名の氾濫

La pseudonymie contemporaine (...) a pris en effet, dans ces dernières années, des développements considérables et jusqu'alors inusités. (...) Aujourd'hui la pseudonymie s'est généralisée et étendue à un tel point que les mêmes pseudonymes…

かつて仏文研究室で

採点と準備と書類書きに追われる日々。 加藤周一の『羊の歌』を読むと、 戦時中に東大の仏文研究室が一種のアジールとしてあったことが窺えて感慨深い。 無力ではあったに違いないが、そこに良識が息づいていたということを、 記憶に留めておいてもよいだろ…

生存確認とフランス・ミステリ

とりあえず生きております。 5月26日(土)がマラルメ。「エロディアード」読み切れず。 先週末、関東遠征。おもに三四郎池をじっくり観賞。 100年の間に、植物が育ちまくり。 この春、文庫で読んだフランスのミステリを順不同で列挙。すべて創元推理文庫。 …

まんがで読破すること

いかん、もう四月だ。どうしよう。 今更な話ではあるが、 バラエティ・アートワークス、『まんがで読破 女の一生』、イースト・プレス、2012年 を本屋で見かけた時はおどろいた。 190頁で主要なところはきっちり描いて、その職人芸は見事なものです。 なかな…

時はすぎゆく

2月前半、買ってもらえるかどうか分からないまま翻訳に勤しむ。 昨日、ご採択いただけるとのご連絡あり。あれ嬉し。 2月後半、頼まれて翻訳のお手伝い。及び関東遠征。 3月に入って、これも買ってもらえるかどうかはまだ定かならぬ 問題集のお仕事。合間に発…

おおファンタスティック

竜之介さん、あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いもうしあげます。 またしてもあれこれ申し上げたくなるコメントありがとうございました。 メリメとネルヴァルの全集は私も欲しいと思います。 前者6冊が出たのはなんと戦前。ネットだと美…

モーパン嬢

テオフィル・ゴーチエ、『モーパン嬢』、井村実名子訳、上下巻、岩波文庫、2006年 フランス文学史で序文だけが名高い作品(1835年刊行)を諸事情で急ぎ読む。 面白いところは色々あるが、いかんせんいささか冗長ではあるまいか。 もっともそんなこといったら…

エッフェル塔の潜水夫

ところでもうずいぶん立つけれど、 ピエール・カミ、『エッフェル塔の潜水夫』、吉村正一郎訳、ちくま文庫、1990年 を読みました。 原著は、Pierre Cami (1884-1958), Le Scaphandrier de la Tour Eiffel, 1929. ユーモア小説とミステリーと冒険ものとを全部…

大人の読書

なんとなく、今さらのように、 小倉孝誠、『「感情教育」歴史・パリ・恋愛』、みすず書房、「理想の教室」、2005年 を読む。まことに明快明瞭。 『感情教育』は主人公フレデリックに語りの焦点が当てられているにもかかわらず、 その主人公に対して批判的距…

ユゴーの呪縛

連休はあちこち遠征。 土曜日マラルメ。評論「詩の危機」を読む第一回目。2ページ。 あらゆる言説を韻文の内に叩きこんだヴィクトール・ユゴーは 自らの存在で詩句そのものを体現するがの如くであり、 余人をして発話する権利さえもを奪い取ってしまった。 …

疲れた時にはヴェルレーヌ

エコパリのモーパッサンについてのアンケート若者編は、 あと四人ばかり残っているけど、今日はお休み。 思ったよりも大変であった。 ちょっと前に描きなおしてみたヴェルレーヌ(1844-1896)でも掲載し、 詩を一遍訳してみる。拙い訳で恐縮です。 Nevermore (…

マンデスとトリスタン・ベルナール

カチュール・マンデス(1841-1909)ってどんな顔なのかなあ、 とか思ってしまったのが運の尽き。 描いちまったんだな、これがまた。 うーむ、さすがはパトロン。 にしてもヒゲと髪に相当てこずる。 頼むから剃ってくれ、刈ってくれ、と言いたい。 せっかくなの…

超男性

ジャリ、『超男性』、澁澤龍彦訳、白水社、1975年(1978年6刷) 初めて読む。驚いた。原作1902年。 前半に出てくる「永久運動食」を食う自転車乗りと汽車との一万マイル競走は、 道具立ての古さにもかかわらず、今でも新鮮さを失わない見事な疾走感。 SFとは…

描いたようなマルスリーヌ

今日は宿題をお休みし、 趣向を変えてマルスリーヌ・デボルド=ヴァルモール。 絵に描いたような、て元が絵なので当然ですが。 ジョルジュ・ポンピドゥーのアンソロジー詩集には、 彼女の作が2篇載っていて、一個はもちろん「サアディの薔薇」。 他方は « Qu…

お次はヴァレット

おもむろに一息で読んだ本。 出口裕弘、『辰野隆 日仏の円形広場』、新潮社、1999年 半ばまではとても面白い。後半はやや「ふくらまし感」ありか。 というか、この本全体がそれ自体として、日本における仏文学に携わってきた人の思いの記録ということで、 こ…

レコー・ド・パリが読めるなんて

これまた一年ぶりに描きなおしのサミュエル・ベケット。 なぜベケットか(ただの条件反射なので、特に意味はない)。 なんとなくデュラスの『苦悩』と「待ち」つながりで、て、ただのこじつけです。 『ゴドーを待ちながら』の場合、客観的にはゴドーさんはま…

苦悩

デュラスのLa Douleur『苦悩』は作品集だけれど、最初の「苦悩」だけをとりあえず読む。 実際のところは、夫の帰還後に書かれたもののようなので、 回想の時点で多かれ少なかれ物語化が起こっているのは確かなのだろう。 待つとはいつでも辛いものだけれども…

死者を起こせ

フレッド・ヴァルガス、『死者を起こせ』、藤田真利子訳、創元推理文庫、2002年(2008年再販) 先史時代専門のマティアス(マタイ)、中世のマルク(マルコ)、第一次大戦のリュシアン(ルカ)の 3人の歴史学者(いずれも35歳、定職に就けずに「クソ溜」には…

マラルメ論

原書はこちらで、 Jean-Paul Sartre, Mallarmé La lucidite et sa face d'ombre, Gallimard, coll. "Arcades", 1986. ま、本当に読んだのはこちらです。 ジャン=ポール・サルトル、『マラルメ論』、渡辺守章・平井啓之訳、ちくま学芸文庫、1999年(2010年3…

フロベールはすごい

レポートを読むか絵を描くかしかないとなると、だんだん「究極の選択」じみてくる。 今日は55本。都合146本。おお、終わりが見えてきた。 みなさん大層変換ミスが多いのが困りものですなあ。 (しかし「侵食をともにする」とかいうのは、本当にただの誤変換…

夜鳥

モーリス・ルヴェル、『夜鳥』、田中早苗訳、創元推理文庫、2003年 ようやく読みました。 そもそもモーリス・ラヴェルと間違えやすい上に、 創元推理文庫の棚では「モーリス・ルブラン」の後ろにちょこんとあって、 その紛らわしさたるや見逃すこと必至であ…

カルメン

さて、かくして、今となっては西欧白人の一方的おしつけイメージの代表となってしまったかの感のある メリメ、『カルメン』、杉捷夫訳、岩波文庫、1929年第1刷(2009年第89刷) をはらはら読んでいたら(それにしても80年ものの翻訳とは凄い)、 本当の話、…

夜間飛行

サン=テグジュペリ、『夜間飛行』、二木麻里訳、光文社古典新訳文庫、2010年 ひとたびサンテックスの手にかかると、 労働は、人間が人間であることの存在証明と化し、 命がけの責務こそが、人間を崇高な存在たらしめる。 ストイシズムに満ちる人物達の姿は…

異邦の香り

野崎歓、『異邦の香り―ネルヴァル『東方紀行』論』、講談社、2010年 事情があって二日で急ぎ読む。 『東方紀行』を読み進めながら、面白いところを拾い上げていく手つきはお手の物で、 ところどころ、アルトーやジュネといった20世紀作家と繋げるところもま…

ボリス・ヴィアン伝

寝る前本を読了。 フィリップ・ボッジオ、『ボリス・ヴィアン伝』、浜本正文 訳、国書刊行会、2009年 終戦から残りの40年代までだけで、記述は全体の三分の二ぐらいに至ると思うのだけど、 ほんの五年足らずの間に『日々の泡』はじめの小説を書き、ヴァ―ノン…

馬車が買いたい!

鹿島茂、『新版 馬車が買いたい!』、白水社、2009年 実は旧版を持っていなかったので、どの辺が新しいのかはよく分からないんだけど、 主に19世紀前半のフランス社会の風俗を詳しく説いてお見事で、 この時代に関心のある者にとっては、やはり必読の書。 モ…

第四の書

ようやくに読み終える。 ラブレー、『第四の書』、宮下志朗 訳、ちくま文庫、2009年 嵐におびえ、クジラにおびえ、パニュルジュはえらいことになって大変なんだけど、 別段彼に罰が与えられるわけでもなんでもなく話がおもむろに終わるところが さすがはラブ…

光になった日

本日おもむろに光ファイバーになった。 なにか変ったんだろうか。 モーパッサンのクロニックは全然訳されてこなかった。 と常々不平を漏らしているのだけれど、その状況下、これは大変に貴重。 「役人」、鹿島茂 訳、バルザック『役人の生理学』、ちくま文庫…