えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

フランス文学

『寛容論』の中の日本人/ザジ「すべての人」

キリスト教徒がお互いに寛容でなければならないのを立証するには、ずば抜けた手腕や技巧を凝らした雄弁を必要としない。さらに進んでわたしはあなたに、すべての人をわれわれの兄弟と思わねばならないと言おう。なに、トルコ人が兄弟だと、シナ人、ユダヤ人…

『風から水へ』/クロ・ペルガグ「凶暴サタデーナイト」

縁あって拙著を出版していただいた水声社の社主の(インタビューによる)回想 鈴木宏『風から水へ ある小出版社の三十五年』、論創社、2017年、を読む。 とくに後半では学術関連の書籍出版の実態が詳しく語られていて、私も他人事とは言えないのでたいへん興…

『ファントマ』書評/クロ・ペルガグ「磁性流体の花」

ご縁あって『図書新聞』第3321号(2017年10月7日)に、ピエール・スヴェストル、マルセル・アラン『ファントマ』、赤塚敬子訳、風濤社、2017年の書評を書かせていただく。せっかくなので、冒頭の2段落を引用。 犯罪大衆小説の古典、本邦初の完訳 シュルレア…

名前の問題:Romuald/ヴィアネ「パ・ラ~君がいない~」

久し振りにゴーチエ『死霊の恋・ポンペイ夜話 他三篇』、田辺貞之助訳、岩波文庫、1982年の内の「死霊の恋」を読み返す。 神学生が僧侶になる儀式の最中に絶世の美女に一目惚れ。僧職に就くも鬱々として思いは晴れないでいるところ、件の遊女クラリモンドが…

『モーパッサンの修業時代 作家が誕生するとき』刊行

このたび、水声社より『モーパッサンの修業時代 作家が誕生するとき』を刊行いたしました。A5判上製、361頁、定価5,000円+税。装幀は齋藤久美子さんです。 blog 水声社 » Blog Archive » 10月の新刊:モーパッサンの修業時代――作家が誕生するとき そして本…

シンポジウム「象徴主義と〈風景〉」

チラシを作成したので、こちらでも宣伝を。 連続シンポジウム「象徴主義とは何か」第1回 「象徴主義と〈風景〉 ―ボードレールからプルーストまで」 日時:2017年9月30日(土)10:00 - 18:30 場所:東北大学 マルチメディア教育研究棟6階ホール 主催:東北象…

『フランス文学は役に立つ!』/ZAZ「シャンゼリゼ」

鹿島茂『フランス文学は役に立つ!』、NHK出版、2016年を読む。 「役に立つか立たないか」という功利主義的な発想は、えてして短絡的で底が浅いものである。したがって、「役に立つか」というような問いを安直に立てないような人になるためにこそ、文学は有…

楽しむ秘訣(『パスカル『パンセ』を楽しむ』)/ディオニゾス「ジャックと時計じかけの心臓」

山上浩嗣『パスカル『パンセ』を楽しむ 名句案内40章』、講談社学術文庫、2016年を読む。 17世紀の思想家パスカルは、なにしろ言うことが厳しく、その調子はさながら人間性を丸ごと断罪するかの如くのものだから、これに挑もうとする読者の側はついつい、膝…

彼は部屋を出て、そして階段に消える途中/ミレーヌ・ファルメール「影で」

12月17日(土)、関西マラルメ研究会@京都大学。『イジチュール』草稿。" Il quitte la chambre et se perd dans les escaliers, (au lieu de descendre à cheval sur la rampe)" 途中まで。 初期マラルメの文章は後期のような構文的ねじれはさほど見られな…

燃やしてはいけないもの/ヴァネッサ・パラディ「空と感情」

『ハリー・クバート事件』を読んでいたら、はじめの方にこんな場面が出てくる。殺人事件の容疑者として疑われた師匠たる大作家に、手書き原稿などの品を燃やしてくれと、物語の語り手が頼まれるのである。 原稿は大きな炎となって燃え上がり、ページがめくれ…

『繻子の靴 四日間のスペイン芝居』私的感想

拝啓 不知火検校さま 先日(12月11日(日))、京都芸術劇場春秋座で観劇したポール・クローデル作『繻子の靴 四日間のスペイン芝居』(翻訳・構成・演出:渡邊守章)について、詳しく感想を述べよとのご指示を頂戴いたしました。その勤めを果たすべく、ここ…

『あらゆる文士は娼婦である』

石橋正孝・倉方健作『あらゆる文士は娼婦である 19世紀フランスの出版人と作家たち』、白水社、2016年を読む。 芸術作品はそれが流通する媒体と切っても切れない関係にある。19世紀フランス社会においてはペンで身を立てることが可能となり、作家が職業とし…

『ゴリオ爺さん』覚え書き

「それじゃあ」と、ウージェーヌは、うんざりしたといった顔つきで言った、「あなたたちのパリってのは泥沼じゃないですか」 「しかもへんてこな泥沼でね」と、ヴォートランは言葉をついだ。「馬車に乗ってその泥にまみれる連中は紳士で、徒歩でその泥にまみ…

「モーパッサンを巡って」移転のお知らせ

このたび、長らくお世話になっていたlitterature.jp から独立することになりました。 モーパッサンを巡って なんと、maupassant.infoのオリジナル・ドメインを取得しての再出発になります。 再出発を祝うべく、翻訳を一本掲載いたします。ふと勢いで「首飾り…

ああ、ユゴー

Le Magazine littéraireの4月号に、「フランスを代表する作家は誰か」というアンケートを取ったという記事が載っている。35人の作家の中から6名までを選ぶ、という形式で、回答者は1,006名(18歳以上)。その結果は以下のとおり。括弧内は%。 ヴィクトール…

シャルル・クロの頭

引き続き、何枚かの肖像画を追加。 その中の1枚がシャルル・クロ。なぜかほぼ完成状態で放置されていたものを仕上げる(元写真はナダール撮影のものの由)。 シャルル・クロに関しては、現在、日本語でもしっかりとした研究を読むことができて素晴らしい。 …

『今日の人々』のモーパッサン

鹿島茂・倉方健作、『カリカチュアでよむ19世紀末フランス人物事典』、白水社、2013年 刊行を寿ぎ、勝手に便乗企画を立てました。 ピエールとポール 『ギ・ド・モーパッサン』 件の『今日の人々』の第246号、「ピエールとポール」の手になる モーパッサンに…

フランス自然主義文学

おもむろに宣伝させていただきます。 アラン・パジェス、『フランス自然主義文学』、足立和彦訳、白水社、文庫クセジュ、2013年5月 もうすぐ刊行です! Q980 フランス自然主義文学 - 白水社 この際アマゾンもはっつける。 Amazon CAPTCHA はるか以前から出し…

ジョルジュ・サンドの理想主義

似顔絵の次は彫像と、 我ながらそんなに「顔」が好きなのかと呆れるが、 これまたおじさんばかり続いた後には、 ジョルジュ・サンドに救いを求めるのだった。 リュクサンブールのサンド像は、 François Sicard (1862-1934)により、1905年作の由。 いかにも19…

ルコント・ド・リール的絵画

またリュクサンブール公園に戻って、 この公園随一の仰々しい大作、 ルコント・ド・リールの像。 Leconte de Lisle (1818-1894). 豪勢な名前だが、貴族ではなかった。 「前の名前」はシャルルであるが、 姓だけをペンネームのように使ったので、 もっぱらル…

シャトーブリアンの時代

パリ、7区。 Square des Missions étrangères にある シャトーブリアンの像。 彫刻家 Gambierによって1948年に作られた由。 この公園はrue du Bacに面しているのだが、 この通りの住居に、晩年のシャトーブリアンが 住んでいたのにちなんでいる。 そういえば…

ミュッセ頌

モンソー公園に戻って、 ミュッセ(1810-1857)の像。 Alexandre Falguière (1831-1890) が手掛けたものを、 Antonin Mercié (1845-1916) が完成させたものらしい。 1906年にコメディー・フランセーズの前に置かれ、 後に今の場所に移された由。 「夜」連作詩…

靴底が前のランボー

ここのところ度々お世話になったT君に 感謝の気持ちを込めて、 ランボー像をささげます。 パリ4区、place du Père-Teilhard-de-Chardin にある Jean-Robert Ipoustéguy (1920-2006)による "L'Homme aux semelles devant" 「靴底が前にある男」という題の作品…

モンテーニュの顰み

19世紀ばかり続いたので、 今度はモンテーニュ。 rue des Écoles, ソルボンヌの真横あたり。 Wikipédia によるならば、 Paul Landowski (1896-1961)の作。 1934年にパリ市に寄贈される。 もとは石像だったが、1989年に、 学生によるいたずらや破壊によりよく…

スタンダール徒然

ロダンといえば、 リュクサンブール公園にも像がある。 今度はスタンダール。 1920年に設置らしいが、正確なことはよく分からない。 ブロンズが溶け出してるんでしょうか。 彫刻家David d'Angers のデッサンに基づくものの由。 バルザックといいスタンダール…

時々はバルザック

私自身が「彫像熱」statumanieに憑かれたみたいに なってますが、ロダン作のバルザック像。 ロダン美術館にある方が元のようで、 これはラスパイユ通りとモンパルナス通りの交差点にあるもの。 1939年に設置された由。 ロダン作バルザック像は、 文学者協会…

『ジル・ブラース』の標語

リュクサンブール公園には ヴェルレーヌの像もある。 実物はやたらに大きいことに驚かされる。 Auguste de Niederhäusern, dit Rodo (1863-1913)作。 1911年に公園に置かれたものの由。 これまたすり減ったのか、なんだか可愛らしくなっている。 3人の女性の…

読書の影響

何の脈絡もなく、 リュクサンブール公園のボードレールの像。 なんとなくおかっぱ頭に見えるのであるが、 古びてすりへったからかしら。 Pierre-Félix Fix-Masseau (1869-1937)の作、 1933年に制作、 公園に置かれたのは1941年である由。 よく見ると台座に詩…

筆名の氾濫

La pseudonymie contemporaine (...) a pris en effet, dans ces dernières années, des développements considérables et jusqu'alors inusités. (...) Aujourd'hui la pseudonymie s'est généralisée et étendue à un tel point que les mêmes pseudonymes…

かつて仏文研究室で

採点と準備と書類書きに追われる日々。 加藤周一の『羊の歌』を読むと、 戦時中に東大の仏文研究室が一種のアジールとしてあったことが窺えて感慨深い。 無力ではあったに違いないが、そこに良識が息づいていたということを、 記憶に留めておいてもよいだろ…