えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

マラルメ

関西マラルメ研究会 第24回研究発表会

チラシを作成したのでこの場でも宣伝を。 関西マラルメ研究会 第24回研究発表会 日時:2017年4月15日(土)14:00~18:00 場所:京都大学人文科学研究所セミナー室1(本館1階) 発表題目: 詩人たちの手(仮) 田島 義士(水産大学校) 詩における発話行為と…

抹消された α と β /イズィア「波」

2月11日(土、祝)は関西マラルメ研究会@京都大学文学部仏文研究室。4名。 「部屋からの外出」に関する草稿の内のアルファ稿、およびベータ稿の途中まで。プレイヤッド版では851-853ページ。 閉まるドア、振り子の音、廊下、磨かれた壁に映る影、螺旋階段、…

純粋自我みたいな何か/ヴァネッサ・パラディ「あなたを見るとすぐに」

1月21日(土)関西マラルメ研究会@京都大学人文科学研究所、の3階の談話室には「以文会友」の額(が外して立てかけてあった)。出典は『論語』「顔淵 第十二」の24である、と。 曾氏曰く、君子は文を以て友を会し、友を以て仁を輔く。 曾先生の教え。教養人…

彼は部屋を出て、そして階段に消える途中/ミレーヌ・ファルメール「影で」

12月17日(土)、関西マラルメ研究会@京都大学。『イジチュール』草稿。" Il quitte la chambre et se perd dans les escaliers, (au lieu de descendre à cheval sur la rampe)" 途中まで。 初期マラルメの文章は後期のような構文的ねじれはさほど見られな…

モーパッサンとブルターニュ

6月30日がマラルメ。「エロディアード」を読み終える。ばんざい。 最後8行がどんでん返しだったのね。 そこに至って、エロディアード自身の内面に葛藤があることが暴露される。 だとすれば、劇作品としては、この作品はそこからこそ始まるはずのものではなか…

主語がないなんて

一週間が怒涛の勢いで過ぎ、週末沈没の日々が始まる。 発作的に、 水村美苗、『日本語が亡びるとき 英語の世紀の中で』、筑摩書房、2008年 を読み、これを読んだら絶対読み返したくなる『三四郎』(岩波文庫)を読み、 丸山真男、加藤周一、『翻訳と日本の近…

「詩の危機」読了

土曜日マラルメ。日曜日宴会。 ようやく「詩の危機」を(とりあえず)読み終えた。すごい。 ユゴーの死後、自由詩が主張され、韻文定型詩は「危機」に遭遇した。 マラルメは公的なものとしてのアレクサンドランへの支持を表明する一方、現代詩人達の試みの内…

物憂い春

逃避のためにデヴィッド・リーン版『オリバー・ツイスト』を観る。1947年。 原作の要点を綺麗に押さえ、終盤はややこしい人物関係を省略してきっちりまとめた佳作かと。 一番良かったのはサイクス役のロバート・ニュートン、 あるいは彼のブサイクな犬。 194…

休眠中

長らく休眠中で、ブログ書く習慣もどこへやら。 9月末、我が人生のそれなりの大仕事に、時間切れでどうにかけりをつける。 Xデーは12月9日。それまでいわゆる蛇の生殺し状態。あうあう。 逃避でほそぼそ読んだ電車本。 ディケンズ、『大いなる遺産』、佐々…

一杯一杯

暑さも加わって一杯一杯の日々を過ごす間に、あっという間に一月経ってしまう。 6月18日、ついで昨日とマラルメ「詩の危機」3、4回目。 「詩を書くこと」versificationが先にあって、 その後に韻律法prosodieは確認されるのであって、 韻律さえ守れば詩がで…

ユゴーの呪縛

連休はあちこち遠征。 土曜日マラルメ。評論「詩の危機」を読む第一回目。2ページ。 あらゆる言説を韻文の内に叩きこんだヴィクトール・ユゴーは 自らの存在で詩句そのものを体現するがの如くであり、 余人をして発話する権利さえもを奪い取ってしまった。 …

気疲れの日々

はじめはいろいろ疲労がたまる。 16日マラルメ『賽の一振り』ひとまず読了。 かりに賽が振られても、偶然は廃棄されず、ただ場所のみがあるのであるが、 もしかすると遥か天上に北斗七星のような星が瞬きはじめるのかもしれず、 つまり地上では成し遂げられ…

次がヴィエレ=グリファン

ああ、もう2月が終わってしまう、と、毎年言っているような。 昨日マラルメ。『賽の一振り』もほぼ終わりへ。 最後の手前の頁。主幹文を終えて「後奏曲」とでも呼びたいところか。 たとえサイコロを振ったとしても偶然は廃棄されず、 「場所以外の何も起こら…

走破

29日マラルメ。「一振りのサイコロ」も実ははや佳境に突入しつつ、いよいよ混迷。 まだ読み方がよく分かっていない気がする。 「ふらないことを躊躇う」船長が、振ってもしそれがあの「唯一の数」だとしたら、 それは・・・偶然であるだろう(と繋がるかどう…

不十分な準備

マラルメ自身が「分からない」ことについて語っている言葉に、もう一度謙虚に耳を傾けてみよう。 とおもむろに思い立つ。 そこでお決まりのジュール・ユレの『文学の進歩についてのアンケート』。 以下拙訳。 ――私は信じるのですが、と彼は私に答えた。内容…

分からないのは問題か

今日一番良かったことは、でっかい虹が見られたこと。 できることならあの足元まで歩いていきたかった。 二番目によかったことは、「のばら犬」どののコーラスがまた聞けたこと。 今日は控えめのようでした。 じっと見てたら、「あっちいけ」と怒られました…

壮麗にして混濁した

月一マラルメ。 1898年刊行『ヴァスコ・ダ・ガマへの記念アルバム』所収。 8音節、エリザベス朝式ソネ。 壮麗にして混濁したインドを越えて 旅するという唯一の関心に向けて ――この挨拶が、君の船尾が越えていく岬 時を告げる使者たらんことを あたかも、カ…

詩の朗読

金曜日りんくうタウン。 土曜日、京都芸術劇場・春秋座にて『マラルメ・プロジェクト』鑑賞。 第一部は松浦寿輝『喫水都市』朗読(松浦寿輝、浅田彰、渡邊守章)と 渡邊守章による『エロディアード―舞台』『半獣神の午後』日本語による朗読。 第二部はマラル…

ヴェルレーヌのお墓

土曜日マラルメ。 1897年元旦、『ルヴュ・ブランシュ』掲載。 これはほんまにむずかしい。てか分からへん。 墓 命日――1897年1月 黒き岩、北風に転がされて憤り 敬虔なる手の下にても止まりはしない 人間の苦難との類似を手探りし その不吉なる鋳型を祝福する…

奥方よ

土曜日、月一マラルメ。新しい人に会えるのはよいことだ。 久しぶりの愛する中華屋で、 紹興酒で撃沈し、 計15時間ぐらい寝た挙句、起きたら鼻がぐずぐずする。 1896年2月10日『フィガロ』紙に掲載。詩集収録はなし。 1888年年頭に、メリー・ロラーンに贈っ…

凝縮された魂

土曜日マラルメ。 日曜日会議。 本日、苦手な例文作り。 ジェロンディフ(同時性)についてはこんなの。 Elle a regardé le ciel en essuyant ses larmes. 「彼女は涙を拭きながら空を眺めた」 元ネタはマルスリーヌ・デボルド=ヴァルモール。 だめっすか。…

小曲(好戦的な)

月一マラルメ。 1895年2月1日『ルヴュ・ブランシュ』に時評「行動」のエピグラフに掲載された作品。 デマン版詩集からは除外された。 例によって、やけっぱちな翻訳もどき。 小曲 (好戦的な) 黙っているのでないなら 私に相応なのは 感じていること 暖炉の…

シャヴァンヌへのオマージュ

月一マラルメ。やれ嬉しや大賑わい。 『プリューム』紙、1895年1月15日付、ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ特集号。 オマージュ この音なきものに口を当てられた 蒼穹の喇叭に触れる 暗い拳を痙攣させるほどに かじかんでさえいるどんな曙の女神も 牧人を持つ …

小曲I

月一マラルメ。 『愛の賛歌』という詩集に載せるため、挿絵に合わせて詩を書くも、 挿絵と合ってない、と駄目出しされて、お蔵入りした後、 Epreuve 『校正刷(ないし試し刷)』1894年11月号に掲載。 解釈はいろいろあるうちの一つ(のつもり)。 小曲 I な…

ボードレールの墓

月一マラルメ。 1894年に書かれ、1895年元旦の『プリューム』誌 96年刊行の『ボードレールの墓』所収。 もう勘弁してください、としみじみ思いつつ、訳のつもり。 シャルル・ボードレールの墓 埋もれた神殿が曝す その墓のような 排水口から泥とルビーとを垂…

小曲II

月一マラルメ。とりあえず訳す。 1893年と記載の手稿あり。1899年『詩集』所収。エリザベス朝式ソネ。 小曲 II 飼いならされることなく 我が希望がそこに身を投げ出す時 あの上で、弾け、失われたに違いない 激昂と沈黙とを伴って、 声、木立とは無縁な ある…

ベルギーの友人達の回顧

月一マラルメ。 "Remémoration d'amis belges" は1893年、『エクセルシオール(より高く)』に掲載 (初出時は「エクセルシオールの者達へのソネ」)。 もはや、これは訳とも呼び難いが、せめても読んだという印に。 ベルギーの友人達の回顧 時々に あの微風…

乾杯

月一マラルメ。新顔さんあり。 『ラ・プリューム』、1893年2月15日。 2月9日の同誌主催の宴会の席で朗唱されたもの。最初の題は「乾杯」。 以下、お世辞にも上手と言えない拙い訳。 挨拶 何もない、この泡、無垢なる詩句 ただ杯を示すのみ そのような一団が…

マラルメ夫人の扇

月一マラルメの日。 『ほら貝』(ジッド、ヴァレリー、ピエール・ルイス)1891年6月1日 とりあえず訳してみる。 マラルメ夫人の扇 言葉の代わりであるかのように ただ天への羽ばたきのみによって 未来の詩句が立ち昇る とても貴重な住まいから 翼 ただ低く …

つむじ風

月一マラルメ、のあと西中島南方。 "Billet", The Whirlwind, 15 novembre 1890 の乱暴な拙訳 短信 帽子の黒い飛翔に従う 通りを占領するように、些細なこと についての突風ではなく。 かわりに現れ出るのは一人の踊り子 泡となって散る、モスリン あるいは…