えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

モーパッサン

「対訳で楽しむモーパッサンの短編」第2回/ミレーヌ・ファルメール「忘れないで」

『ふらんす』11月号に、「対訳で楽しむモーパッサンの短編 (2) 宝石②」、順調に掲載されました。今月が完結編になります。コラムは「「宝石」と「首飾り」」。手に取ってご笑覧頂けましたら嬉しく思います。 我らがミレーヌ・ファルメール Mylène Farmer の…

「対訳で楽しむモーパッサンの短編」第1回/クリス「ああ、言ってよ」

『ふらんす』、2018年10月号より、6回にわたって、「対訳で楽しむモーパッサンの短編」を連載することになりました。1回4ページ。 せっかくなのでモーパッサンの一番良いところが詰まった作品を紹介したいと思い、最初の2回は「宝石」"Les Bijoux"を取り上…

『モーパッサンの修業時代』書評掲載/グラン・コール・マラード「赤信号で」

『図書新聞』、第3339号、2018年2月17日付に、倉方健作氏による拙著『モーパッサンの修業時代 作家が誕生するとき』についての書評が掲載されました。やれ嬉しや。この場を借りて感謝を申し上げたいと思います。 前半は主に著書の内容の紹介。後半部の一部分…

「ひげの女」ほか翻訳/ミレーヌ・ファルメール「ストウルン・カー」

モーパッサンの若かりし頃の笑劇『バラの葉陰、トルコ館』を訳したのを機に、合わせて訳してしまおうと思い立った詩篇が三つ。 モーパッサン「ひげの女」 モーパッサン「我が泉」 モーパッサン「69」 1881年、ベルギーで地下出版された『19世紀の新サチュロ…

『バラの葉陰、トルコ館』翻訳公開/アルバン・ドゥ・ラ・シモーヌ「偉大なる愛」

本日、モーパッサンおよび仲間たちの共作による一幕散文劇『バラの葉陰、トルコ館』の翻訳を公開。 モーパッサン『バラの葉陰、トルコ館』について モーパッサン 『バラの葉陰、トルコ館』 私の知る限り、日本語の紹介としては、種村季弘の一文(初出1974年…

エッフェル塔に反対する芸術家たち/フランス・ギャル「エラ、彼女はそれを持っている」

先日のエッフェル塔の話の続き。 モーパッサンが加わったというエッフェル塔反対の抗議文書はいったいどういうもので、誰が署名していたのだろうか。 ということが気になったので、当時の新聞を幾つか見てみる。中では『タン』紙、1887年2月14日の記事が、抗…

映画『女の一生』の中の詩

ステファヌ・ブリゼ監督『女の一生』(2016)の中には詩が朗読される箇所があるのだが、その詩がモーパッサン自身のものであると、パンフレットの永田千奈氏の解説に書かれていて「おお、そうだったか」と思う。そりゃあ、もちろん気がつきませんでした。 実際…

映画『女の一生』(ステファヌ・ブリゼ監督)鑑賞報告

映画『女の一生』オフィシャルサイト 12月9日(土)より岩波ホールなどで公開される、ステファヌ・ブリゼ監督『女の一生』を試写会にて鑑賞。その感想を記しておきたい(というのはつまり宣伝と無縁ではないと、前もって記しておこう)。 この映画の第一の特…

「十九世紀における小説の進化」/ジョイス・ジョナタン「幸福」

昨日はモーパッサンの誕生日。 それより数日前に翻訳を一つ仕上げる。 モーパッサン 『十九世紀における小説の進化』 また文芸論を訳してしまった。 『1889年万国博覧会誌』に載ったこの記事には挿絵が2枚あって、1枚はこのルイ・ブーランジェによるバルザッ…

「ギュスターヴ・フロベール」1884年、翻訳掲載

これも1年前に描いたフロベールを恥ずかしながら掲載。 モーパッサン 『ギュスターヴ・フロベール』 (I) モーパッサン 『ギュスターヴ・フロベール』 (II) 昨日、ようやくのことで仕上げたモーパッサンによるフロベール論(『ジョルジュ・サンド宛書簡集』に…

「十六世紀のフランス詩人たち」翻訳改稿

昨年の4月に描いてみた手描きのモーパッサンを恥ずかしながら掲載。 それはそうと、ふと思い立ってモーパッサンの評論「十六世紀のフランス詩人たち」の翻訳を改稿する。軽い気持ちで取り掛かったら、けっこうな仕事になってしまった。 モーパッサン 『十六…

愛国主義という卵/ミレーヌ・ファルメール「City of Love」

目下、モーパッサンと戦争について考え直す、という論文を執筆中。そこでふと思い出したのが、モーパッサンの名言として巷に流布しているらしい言葉である。 「愛国主義という卵から戦争が孵化する」というのがそれなのだが、これまできちんと調べたことがな…

映画『マドモワゼル・フィフィ』/クリスチーヌ&ザ・クイーンズ「サン・クロード」

本日、映画『マドモワゼル・フィフィ』を(フランス版のDVDで)鑑賞。1944年、ロバート・ワイズ監督。シモーヌ・シモン主演。 「脂肪の塊」と「マドモワゼル・フィフィ」をくっつけて一本の作品にするという発想は、クリスチャン=ジャックの『脂肪の塊』(1…

「持参金」、あるいは結婚詐欺/クリストフ・マエ「人形のような娘」

「持参金」は1884年9月に『ジル・ブラース』に掲載。シモン・ルブリュマン氏はジャンヌ・コルディエ嬢と結婚することになる。ルブリュマン氏は公証人の事務所を譲りうけたばかりで支払いが必要だが、新婦には30万フランの持参金があった。 新婚夫婦は二人き…

「痙攣」、あるいは早すぎた埋葬/クリストフ・マエ「パリジェンヌ」

「痙攣」は1884年7月に『ゴーロワ』に掲載。舞台は温泉保養地のシャテルギヨン。モーパッサンは自ら湯治のために、この地に最近に訪れていたようである。また、新聞小説において説明抜きの語り手「私」は、容易に署名者=作家と同一視されえたから、初出時に…

「ロンドリ姉妹」、あるいは南国の女/アブダル・マリック「ダニエル・ダルク」

「解説」で触れられているように、モーパッサンには長編(新聞連載の後に単行本)と短編(新聞一回読み切り)の間に、中間の長さの作品が複数存在している。その多くは短編集編纂の際に核となる作品(そのタイトルが作品集のタイトルになる)を書き下ろした…

「散歩」、あるいは人生の空虚/テテ「君の人生のサウンドトラック」

「散歩」は1884年5月、『ジル・ブラース』に掲載された作品。 40年間、実直に会社に勤めていた男性、ルラが、ある春の宵、陽気に誘われるようにして街に出る。凱旋門の近くの店のテラス席で食事をとり、さらにブーローニュの森まで散歩することに決める。行…

なぜ傘が要るのか/テテ「歓迎されない人」

モーパッサンの短編「傘」についての補足。 この小説を今の目で読んでよく分からないのは、そもそもオレイユ氏はなぜ毎日職場へ傘を持って通勤しているのか、ということである。ここ数日雨が降っていたから、というわけではない。 雨が降っていなかったのは…

「雨傘」、あるいは吝嗇/フランス・ギャル「もちろん」

「雨傘」は1884年の作。かつて岩波文庫に杉捷夫訳で入っていたので、日本でもよく知られた短編の一つであろう。吝嗇はノルマンディー人の特徴の一つとして農民を扱った作品に見られるテーマであるが、ここではそれが、都会に住む小市民の心性として描かれて…

「ローズ」、あるいは女の欲望/「抵抗せよ」

「ローズ」(1884)は初読時には面白く読めるが、再読、三読時にはあれこれと弱さが目につく作品である。合理性や本当らしさに欠けるのは否めまい。 冒頭はカンヌの花祭りにおける花合戦の情景が描かれているが、プレイヤッド版の注釈によれば、1884年には1…

「マドモワゼル・フィフィ」、あるいは男女の闘争/Kyo「聖杯」

「マドモワゼル・フィフィ」は1882年の作で、「脂肪の塊」に次いで、娼婦と戦争とを結び付けた作品。1884年に書かれる「寝台29号」と合わせて、戦時下における娼婦を主題とした三部作と呼んでもいいかもしれない。モーパッサンは早くから男女の関係を闘争、…

「冷たいココ」、あるいは不条理な宿命/フー!チャタートン「ボーイング」

昨日はうっかり「冷たいココはいかが!」を飛ばしてしまった。 1878年発表のこの作品は、これも習作の色が濃いのであるが、さて、この話はいったい何なのだろうか。 語り手のおじのオリヴィエは生涯の節目となる出来事の起こる時に、必ず道を行くココ売り(…

「脂肪の塊」、あるいは自己欺瞞/ギエドレ「立ちション」

「脂肪の塊」についてはこれまでに何度か書いたり話したりする機会があったので、言いたいことはだいたい言ったという思いがあるのだけれど、それでもせっかくなので一言記してみたい。 モーパッサンの文学にとってキー・ワードの一つは hypocrisie であり、…

『脂肪の塊/ロンドリ姉妹』について/ザジ「ペトロリアム」

勢いのついているうちに、これについて一言記しておきたい。そもそも、記すのは義務と思えば、気軽に取りかかれずに手が遠のいてしまったのであった。 モーパッサン『脂肪の塊/ロンドリ姉妹 モーパッサン傑作選』、太田浩一訳、光文社古典新訳文庫、2016年9…

『女の一生』(2016)フランスで公開

当「えとるた日記」は http://etretat1850.hatenablog.jp に正式に移行いたしました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 ところで、ステファヌ・ブリゼStéphane Brizé 監督の映画『女の一生』Une vie が23日にフランスで封切られた。 主演は舞台女優…

モーパッサン批評文『繊細さ』翻訳

別件で訳文が必要となるが、該当する評論文をまだ訳していなかった自分に腹を立て、一気呵成に翻訳を仕上げる。学祭(のお蔭の休日)に感謝。 モーパッサン 『繊細さ』 なお参照したかったのは次の箇所。 Quand un homme, quelque doué qu'il soit, ne se pr…

愛の根の深さ

学会の行き帰りにピエール・ルメートルの『傷だらけのカミーユ』を読む。いやはや暗いにもほどがあるのではないか、ピエール・ルメートル。ヴェルーヴェンが可哀相すぎる。思えば『その女アレックス』には、最後のところでヒロインに対するぎりぎりの同情の…

モーパッサンの未発表作?「天職」について

出版社Hermannが、創立140周年を記念する書籍を電子出版で刊行するにあたり、同社が保有していた手稿のコピーの画像、およびその転写と、それについての調査報告を掲載した、という話をメールマガジン"Maupassantiana"で知る。 Déborah Boltz, « Récit d'enq…

モーパッサン「ディエップの浜辺」

モーパッサン 『ディエップの浜辺』 宿題の残り半分、モーパッサンのこれこそ新発見のテクスト、「ディエップの浜辺」の翻訳を掲載しました。 ご一読頂けましたら嬉しいです。 「豚の市場」の受けが良かったのか、雑誌の編集者からもう一本書いてみるように…

モーパッサン「豚の市場」

まる5ケ月を経て、誓いの半分を実現にこぎつけ、モーパッサンの新発見のテクスト1編を翻訳しました。 モーパッサン 『豚の市場』 ご一読いただけましたら幸いです。 青年モーパッサンによる豚の擁護と顕彰。そして「聖アントワーヌと豚はいかにして結びつく…