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えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

モーパッサン

「ギュスターヴ・フロベール」1884年、翻訳掲載

これも1年前に描いたフロベールを恥ずかしながら掲載。 モーパッサン 『ギュスターヴ・フロベール』 (I) モーパッサン 『ギュスターヴ・フロベール』 (II) 昨日、ようやくのことで仕上げたモーパッサンによるフロベール論(『ジョルジュ・サンド宛書簡集』に…

「十六世紀のフランス詩人たち」翻訳改稿

昨年の4月に描いてみた手描きのモーパッサンを恥ずかしながら掲載。 それはそうと、ふと思い立ってモーパッサンの評論「十六世紀のフランス詩人たち」の翻訳を改稿する。軽い気持ちで取り掛かったら、けっこうな仕事になってしまった。 モーパッサン 『十六…

愛国主義という卵/ミレーヌ・ファルメール「City of Love」

目下、モーパッサンと戦争について考え直す、という論文を執筆中。そこでふと思い出したのが、モーパッサンの名言として巷に流布しているらしい言葉である。 「愛国主義という卵から戦争が孵化する」というのがそれなのだが、これまできちんと調べたことがな…

映画『マドモワゼル・フィフィ』/クリスチーヌ&ザ・クイーンズ「サン・クロード」

本日、映画『マドモワゼル・フィフィ』を(フランス版のDVDで)鑑賞。1944年、ロバート・ワイズ監督。シモーヌ・シモン主演。 「脂肪の塊」と「マドモワゼル・フィフィ」をくっつけて一本の作品にするという発想は、クリスチャン=ジャックの『脂肪の塊』(1…

「持参金」、あるいは結婚詐欺/クリストフ・マエ「人形のような娘」

「持参金」は1884年9月に『ジル・ブラース』に掲載。シモン・ルブリュマン氏はジャンヌ・コルディエ嬢と結婚することになる。ルブリュマン氏は公証人の事務所を譲りうけたばかりで支払いが必要だが、新婦には30万フランの持参金があった。 新婚夫婦は二人き…

「痙攣」、あるいは早すぎた埋葬/クリストフ・マエ「パリジェンヌ」

「痙攣」は1884年7月に『ゴーロワ』に掲載。舞台は温泉保養地のシャテルギヨン。モーパッサンは自ら湯治のために、この地に最近に訪れていたようである。また、新聞小説において説明抜きの語り手「私」は、容易に署名者=作家と同一視されえたから、初出時に…

「ロンドリ姉妹」、あるいは南国の女/アブダル・マリック「ダニエル・ダルク」

「解説」で触れられているように、モーパッサンには長編(新聞連載の後に単行本)と短編(新聞一回読み切り)の間に、中間の長さの作品が複数存在している。その多くは短編集編纂の際に核となる作品(そのタイトルが作品集のタイトルになる)を書き下ろした…

「散歩」、あるいは人生の空虚/テテ「君の人生のサウンドトラック」

「散歩」は1884年5月、『ジル・ブラース』に掲載された作品。 40年間、実直に会社に勤めていた男性、ルラが、ある春の宵、陽気に誘われるようにして街に出る。凱旋門の近くの店のテラス席で食事をとり、さらにブーローニュの森まで散歩することに決める。行…

なぜ傘が要るのか/テテ「歓迎されない人」

モーパッサンの短編「傘」についての補足。 この小説を今の目で読んでよく分からないのは、そもそもオレイユ氏はなぜ毎日職場へ傘を持って通勤しているのか、ということである。ここ数日雨が降っていたから、というわけではない。 雨が降っていなかったのは…

「雨傘」、あるいは吝嗇/フランス・ギャル「もちろん」

「雨傘」は1884年の作。かつて岩波文庫に杉捷夫訳で入っていたので、日本でもよく知られた短編の一つであろう。吝嗇はノルマンディー人の特徴の一つとして農民を扱った作品に見られるテーマであるが、ここではそれが、都会に住む小市民の心性として描かれて…

「ローズ」、あるいは女の欲望/「抵抗せよ」

「ローズ」(1884)は初読時には面白く読めるが、再読、三読時にはあれこれと弱さが目につく作品である。合理性や本当らしさに欠けるのは否めまい。 冒頭はカンヌの花祭りにおける花合戦の情景が描かれているが、プレイヤッド版の注釈によれば、1884年には1…

「マドモワゼル・フィフィ」、あるいは男女の闘争/Kyo「聖杯」

「マドモワゼル・フィフィ」は1882年の作で、「脂肪の塊」に次いで、娼婦と戦争とを結び付けた作品。1884年に書かれる「寝台29号」と合わせて、戦時下における娼婦を主題とした三部作と呼んでもいいかもしれない。モーパッサンは早くから男女の関係を闘争、…

「冷たいココ」、あるいは不条理な宿命/フー!チャタートン「ボーイング」

昨日はうっかり「冷たいココはいかが!」を飛ばしてしまった。 1878年発表のこの作品は、これも習作の色が濃いのであるが、さて、この話はいったい何なのだろうか。 語り手のおじのオリヴィエは生涯の節目となる出来事の起こる時に、必ず道を行くココ売り(…

「脂肪の塊」、あるいは自己欺瞞/ギエドレ「立ちション」

「脂肪の塊」についてはこれまでに何度か書いたり話したりする機会があったので、言いたいことはだいたい言ったという思いがあるのだけれど、それでもせっかくなので一言記してみたい。 モーパッサンの文学にとってキー・ワードの一つは hypocrisie であり、…

『脂肪の塊/ロンドリ姉妹』について/ザジ「ペトロリアム」

勢いのついているうちに、これについて一言記しておきたい。そもそも、記すのは義務と思えば、気軽に取りかかれずに手が遠のいてしまったのであった。 モーパッサン『脂肪の塊/ロンドリ姉妹 モーパッサン傑作選』、太田浩一訳、光文社古典新訳文庫、2016年9…

『女の一生』(2016)フランスで公開

当「えとるた日記」は http://etretat1850.hatenablog.jp に正式に移行いたしました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 ところで、ステファヌ・ブリゼStéphane Brizé 監督の映画『女の一生』Une vie が23日にフランスで封切られた。 主演は舞台女優…

モーパッサン批評文『繊細さ』翻訳

別件で訳文が必要となるが、該当する評論文をまだ訳していなかった自分に腹を立て、一気呵成に翻訳を仕上げる。学祭(のお蔭の休日)に感謝。 モーパッサン 『繊細さ』 なお参照したかったのは次の箇所。 Quand un homme, quelque doué qu'il soit, ne se pr…

愛の根の深さ

学会の行き帰りにピエール・ルメートルの『傷だらけのカミーユ』を読む。いやはや暗いにもほどがあるのではないか、ピエール・ルメートル。ヴェルーヴェンが可哀相すぎる。思えば『その女アレックス』には、最後のところでヒロインに対するぎりぎりの同情の…

モーパッサンの未発表作?「天職」について

出版社Hermannが、創立140周年を記念する書籍を電子出版で刊行するにあたり、同社が保有していた手稿のコピーの画像、およびその転写と、それについての調査報告を掲載した、という話をメールマガジン"Maupassantiana"で知る。 Déborah Boltz, « Récit d'enq…

モーパッサン「ディエップの浜辺」

モーパッサン 『ディエップの浜辺』 宿題の残り半分、モーパッサンのこれこそ新発見のテクスト、「ディエップの浜辺」の翻訳を掲載しました。 ご一読頂けましたら嬉しいです。 「豚の市場」の受けが良かったのか、雑誌の編集者からもう一本書いてみるように…

モーパッサン「豚の市場」

まる5ケ月を経て、誓いの半分を実現にこぎつけ、モーパッサンの新発見のテクスト1編を翻訳しました。 モーパッサン 『豚の市場』 ご一読いただけましたら幸いです。 青年モーパッサンによる豚の擁護と顕彰。そして「聖アントワーヌと豚はいかにして結びつく…

モーパッサン「戦争」(1881年版)

9ケ月ぶりにして本年最初の翻訳を掲載いたします。 モーパッサン 『戦争』 1881年4月10日に『ゴーロワ』に掲載されたほうの「戦争」と題する記事。 83年12月11日『ジル・ブラース』に掲載されたほうは早くから知られていたが、81年のこちらの方は同題で重複…

モーパッサンの2作品、発見のニュース

ブログLa Porte ouverte の1月28日の記事 DEUX TEXTES RETROUVÉS DE MAUPASSANT : LE MARCHÉ AUX COCHONS, LA PLAGE DE DIEPPE | la porte ouverte に、筆者の Monsieur N が、モーパッサンの知られてないテクスト2編を発見したと報告されている、ということ…

「モーパッサンを巡って」移転のお知らせ

このたび、長らくお世話になっていたlitterature.jp から独立することになりました。 モーパッサンを巡って なんと、maupassant.infoのオリジナル・ドメインを取得しての再出発になります。 再出発を祝うべく、翻訳を一本掲載いたします。ふと勢いで「首飾り…

イヴァン・トゥルゲーネフ(『ジル・ブラース』)

引き続き、モーパッサンの評論を翻訳。 モーパッサン 『イヴァン・トゥルゲーネフ』 イヴァン・トゥルゲーネフに関してはこれが4つ目にして最後のものとなる。 4つの翻訳の間に間違いなく進歩したのは絵の技術であるが、その他はどうなのか、なんとも心もと…

私生活のギュスターヴ・フロベール

モーパッサンの評論を一つ翻訳しました。 モーパッサン 『私生活のギュスターヴ・フロベール』 お読みいただけましたら幸いです。 それにしても「頑として肖像画を描かせなかった」という人の肖像を描いて喜んでいるのもいかがなものなのか。 それはともかく…

自由思想

唐突に、やっぱり大事だろうあの記事は、という思いに駆られて一気に訳しました。 モーパッサン 『自由思想』 アンリ・ミットランはモーパッサンの批評文の中でももっとも暗いものの一つと呼ぶが、しかし「解説」にも記したとおり、社会生活上において我々の…

メヌエット

ふと思い立って、モーパッサンの短編小説を翻訳しました。 モーパッサン 『メヌエット』 とくに深い考えはなく、今回は短編集『山鴫物語』から一編訳してみよう、ということで、えいやと決めたのが「メヌエット」でしたが、新潮文庫、岩波文庫にともに翻訳の…

クリスマスの夜

モーパッサンの顰に倣うように、時事的な題材を選んで翻訳をしてみました。 モーパッサン 『クリスマスの夜』 お読みいただけましたら幸いです。 ルイ・フォレスチエの指摘するごとく、ここで語られるのは聖夜の「降誕」のお話であり、それは「同時にグロテ…

あるパリのアヴァンチュール

モーパッサン 『あるパリのアヴァンチュール』 モーパッサンの短編を翻訳しました。 新庄嘉章訳では「パリの経験」と訳されている作品。ここで aventure はもちろん「情事」も含意しているが、もう少し広い意味で「向こう見ずな冒険」のニュアンスを汲み取り…

「親殺し」翻訳

これを機会にモーパッサンの短編の翻訳をしてみようと思い立ち、 モーパッサン 『親殺し』 モーパッサンの「親殺し」を翻訳してみました。 (全国の円朝ファンに)お読みいただけましたら嬉しい限りです。 短編の翻訳はなんと7年ぶりのことであります。 この…

対訳で楽しむ『脂肪の塊』第6回

『ふらんす』9月号に、 「対訳で楽しむ『脂肪の塊』」第6回(最終回)掲載されました(32-35頁)。 「脂肪の塊」不在の宴会の場面から、翌日の馬車の中の最後の場面まで、 コラムは「男性中心社会に生きる女たち」です。 お読みいただけましたら幸甚です。 …

ある風景画家の生活

夏休み翻訳できて嬉しいな。 モーパッサン 『ある風景画家の生活』 モーパッサンの「視線」に、どれほど同時代の画家と共通するものがあったか ということが、残念ながら日本ではあまり知られていないのではないかと思い、 翻訳しました。 お読みいただけま…

対訳で楽しむ『脂肪の塊』第5回

遅くなってしまいましたが、 『ふらんす』8月号に「対訳で楽しむ『脂肪の塊』」第5回掲載されております(p. 32-35.)。 いよいよ大詰め、旅客たちによる娼婦「脂肪の塊」攻略の顛末です。 コラムは「スクリーンの中の『脂肪の塊』」。挙げた作品は5本。 皆…

平野威馬雄の「祈り」

祈り……モオパッサンへ 頭髪よ 重き憂の鼓動に泳ぎ 靈の舗道に笑ふ頭髪よ 汝は温かき陽の唄ふ時に、 樂園の色を、透明に映し 年若き狂人を喜ばしめ、 冷たき午後の陽差しうなだれ歩む時に、 枯れ朽ち乾くが如き音にて、 さらさらと動く。 而して、青き頭髪よ…

対訳で楽しむ『脂肪の塊』第4回

また今月も宣伝になります。 『ふらんす』7月号に、 「対訳で楽しむ『脂肪の塊』」第4回、掲載されています(32-35頁)。 宿屋に足止めされた理由が明らかになる、物語中盤の山場になります。 コラムは「『脂肪の塊』ってなによ!?」 ヒロインの名の訳語に…

対訳で楽しむ『脂肪の塊』第3回

いささか遅くなりましたが、 『ふらんす』6月号に「対訳で楽しむ『脂肪の塊』」第3回掲載されております。32-35頁。 馬車の中で、「脂肪の塊」が皆に弁当を分け与えることで、 最初自分を馬鹿にしていた貴族・ブルジョアの面々に受け入れられるまでです。 コ…

「田舎のヴィーナス」翻訳

連休中におとなしく、積年の宿題をこなす。 モーパッサン「田舎のヴィーナス」 モーパッサンが1880年に刊行した『詩集』の19の詩篇中の最後の1篇。 「最後の逃走」の翻訳が2008年初めであったから、まる6年かかったことになる。 といっても、もちろんのごと…

対訳で楽しむ『脂肪の塊』第2回

宣伝ばかりで恐縮です。 『ふらんす』5月号に、「対訳で楽しむ『脂肪の塊』」第2回が掲載されています(32-35頁) 今回は馬車に乗り合わせた乗客たちのプロフィールになっています。 モーパッサンの描写の妙をじっくり味わっていただけましたら幸いです。 コ…

対訳で楽しむ『脂肪の塊』連載開始!

竜之介さん、長い間のご無沙汰どうも失礼いたしました。 昨年度に職場環境ががらりと変わっていらい、 まったくこちらへ戻って来ることのできない日々が続いておりまして まったくふがいないばかりです。 もうブログの書き方忘れてしまいました…。 でもとに…

バンヴィルとモーパッサン

余勢をかうように次の翻訳を掲載。 テオドール・ド・バンヴィル 『誠実さ』 訳してみたら、バンヴィルの文章は たいへん古典的にレトリカルなもので いささか苦労した上に、結果としても読みにくい。 しかしモーパッサンがよく売れて、 たちまち一流作家の仲…

『今日の人々』のモーパッサン

鹿島茂・倉方健作、『カリカチュアでよむ19世紀末フランス人物事典』、白水社、2013年 刊行を寿ぎ、勝手に便乗企画を立てました。 ピエールとポール 『ギ・ド・モーパッサン』 件の『今日の人々』の第246号、「ピエールとポール」の手になる モーパッサンに…

フランス自然主義文学

おもむろに宣伝させていただきます。 アラン・パジェス、『フランス自然主義文学』、足立和彦訳、白水社、文庫クセジュ、2013年5月 もうすぐ刊行です! Q980 フランス自然主義文学 - 白水社 この際アマゾンもはっつける。 Amazon CAPTCHA はるか以前から出し…

『ベラミ』映画公開に寄せて

人、それを便乗と呼ぶのであるが、 なにはともあれ、 映画『ベラミ』の日本公開を祝いたい。 http://www.belami-movie.info/index.html フランス語でやれ、と言っても仕方ないし。 さて、素晴らしいのは映画化の波及効果である。 (波及効果で仕事が回ってく…

モーパッサンのお墓に

夏の終わりに、 モンパルナス墓地にある、 モーパッサンのお墓にお参りしておこう。 この夏の個人的課題は、 日刊紙『ジル・ブラース』を読むことだった。 1881年末にモーパッサンが寄稿を開始した時、 紙上ですでに活躍していた作家の中心メンバーは テオド…

モーパッサンの石像に

あちこちに頭を下げてばかりいると モーパッサンに怒られるというか 呆れられそうな気がしないでもないので、 モンソー公園のモーパッサン像。 なにやら子どもがおったり、 頭に鳩がとまったりしてますが、 みんなに愛されるモーパッサン、 ということにして…

パリ、モーパッサン通り

マルモッタン美術館から徒歩で10分くらいのところ、 16区の閑静な住宅街の中に、 ギ・ド・モーパッサン通りがある。 別にモーパッサンと縁があった場所でもないのだけれど。 長さ90メートルほどの短い通りで、何があるわけでもないが、 パリに住めるものなら…

ラ岬

ブルターニュへさらに思いを込めて翻訳しました。 http://www.litterature.jp/maupassant/chronique/chro21fev1883.html お読みいただければ幸甚です。 (いつもの記述だと文字化けするのでどこかに問題があるやもしれぬ。 文字コードは今もってよく分からな…

モーパッサンとブルターニュ

6月30日がマラルメ。「エロディアード」を読み終える。ばんざい。 最後8行がどんでん返しだったのね。 そこに至って、エロディアード自身の内面に葛藤があることが暴露される。 だとすれば、劇作品としては、この作品はそこからこそ始まるはずのものではなか…

太宰治「富岳百景」のモウパスサン

「モウパスサンの小説に、どこかの令嬢が、貴公子のところへ毎晩、河を泳いで逢いにいったと書いて在ったが、着物は、どうしたのだろうね。まさか、裸ではなかろう。」 「そうですね。」青年たちも、考えた。「海水着じゃないでしょうか。」 「頭の上に着物…