えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

モーパッサン

改めて、簡単なのか

モーパッサンのフランス語は(少なくとも相対的に)簡単だ。 と断言すると、しかしなんとはなしに疾しい気分がしないでもない。 「モーパッサン先生」に怒られそうな気もするし。ははは。 Maupassant par les textes にThierry Selva 氏による、 Une étude q…

フランス語で読むこと

モーパッサン関係の最近のトピックのもう一つは、 佐藤若菜、『フランス語で読むモーパッサン 対訳ジュールおじさん・首飾り・シモンのパパ』、NHK出版、2011年 でありました。 こういう需要があるのは大変喜ばしいことである。 この本が目新しく見えるの…

まんがで読破すること

いかん、もう四月だ。どうしよう。 今更な話ではあるが、 バラエティ・アートワークス、『まんがで読破 女の一生』、イースト・プレス、2012年 を本屋で見かけた時はおどろいた。 190頁で主要なところはきっちり描いて、その職人芸は見事なものです。 なかな…

11ヶ月ぶりの翻訳

時間があるのかないのかよくわからないこの頃、 思いたって翻訳を仕上げる。 モーパッサン 『時評文執筆者諸氏』 自身、新聞紙上で「時評文執筆家」であり小説家でもあったモーパッサンが、 両者の性質の相違を説いた後に、当時の一流時評文書き4名を紹介す…

妹はジョルジェット

K-Aさま、コメントをどうもありがとうございました。 こちらこそ今年もよろしくお願いもうしあげます。 試しにツイートしてみたのですが、埋もれてしまったかもしれません。 ルブランの出生証明書、原文トランスクリプトしてみましたので、 よろしければメー…

モーパッサン、アグレガシオンの課題に

一月前。おお大変だ。 すでに旧聞に属するけれども、 10月号の『マガジン・リテレール』はLe Mystère Maupassant「謎の人モーパッサン」と題する モーパッサン特集号であった。 これは来年のアグレガシオン(中高等教育教授資格試験)の課題図書の中に、 『…

旅人かへらず

しばらく前にFさんにご教示いただいたもの。 二一 昔の日 野ばらのついた皿 廃園の昼食 黒いてぶくろ マラルメの春の歌 草の葉先に浮く 白玉の思ひ出 無限の情 (西脇順三郎、『旅人かへらず』(1947)、『Ambarvalia / 旅人かへらず』、講談社文芸文庫、1995…

ニヒルなひと

今日、ふと「ああこれがニヒリズムということなのか」と納得してしまったので、 そのことを記す。 モーパッサンの作品について考えていると、その大きな特徴として 価値の相対化というものに突き当る。 モーパッサン、あるいは極めつけの相対主義者。 そこに…

オブセッションがいっぱい

竜之介さん、ペレンナさん、コメントをどうもありがとうございます。 風邪のことまでどうもどうも、お恥ずかしい限りです。 昨年の冬にFさんに「手洗いうがいをちゃんとしてたら風邪なんか引かないんだよ」 と力づよく断言いただきまして、「おおそうか」と…

モーパッサンと渡辺一夫

『渡辺一夫評論選 狂気について 他二十二篇』、大江健三郎・清水徹編、岩波文庫、1993年(2010年8刷) を読むと、戦後すぐ、冷戦の始まった頃に渡辺一夫がすごく怒っていることが分かる。 終わったと思えば、またぞろ戦争をする気なのか、と。 16世紀フラン…

レアリスムじゃないかも

日記を書く余力のないまま日がどんどん過ぎる。 6日慶事で関東遠征。 この一月ばかりの間に二度風邪を引いたので、 一度目で『Xの悲劇』、二度目で『Yの悲劇』を読み、 遠征の行き帰りに『Zの悲劇』(いずれも越前敏弥訳、角川文庫)を読み、 勢いで『レーン…

ジュリヤンについて

なんか目の覚める曲でもないじゃろか、と思ってさ迷ううちに、 Michel Delpeche, "Pour un flirt"(邦題「青春に乾杯」)に辿りつく。 目は覚めたが、腰がくだけた。 引き続き『女の一生』。 ジャンヌの夫ジュリヤンについて、あんまり誰もものを言っていな…

あるいはカンディード

誕生日。 なにかよいことはないかと思って、『舞踏会の手帖』を観る。渋い選択だ。 オムニバスの各篇いずれも味わい深いが、それにしても人生観、苦み走りまくり。 これぞ古き良き大人の映画かな。 相変わらず『女の一生』。 「無垢」な状態にある人物が、そ…

ジャンヌの父

週末、東京に。色々あった。 先日、『女の一生』のジャンヌはルソー的な「野性人」だと記してみたが、 それってつまりは『人間不平等起源論』ということなのか。 ところで、もちろん、ジャン=ジャックの名前は『女の一生』の冒頭に書き込まれているのである…

タイトルの語ること

精神的にゆとりがないとブログなんて書けないわ。 とかなんとかぶつぶつと。 おもむろに『女の一生』のタイトルを考える。 原題Une vie はどうしたって「ある一生」「一つの人生」という意味である。 身も蓋もないタイトルだ。 『ボヴァリー夫人』に倣うなら…

あらためてマンデス

仕事開始の前日。多少なりと緊張します。 たびたび名前が出てきたので、『エコー・ド・パリ』のマンデスの回答も訳しておこう。 Ce qu'il faut admirer avant tout, me semble-t-il, en Guy de Maupassant, c'est le parfait équilibre entre le pouvoir et …

マルセル・バイヨとアドルフ・レッテ、とマラルメ

ようやく最後まで来る。 La paralysie générale vient de foudroyer une des plus belles intelligences de ces temps-ci. Guy de Maupassant, héritier direct de Gustave Flaubert, ne fit que passer parmi les disciples de Médan, et de suite, il cher…

ピエール・キヤールとレオン・デシャン

Parmi les écrivains strictement naturalistes, seul peut-être, M. de Maupassant eût le sens de la beauté verbale et du rhythme supérieur : il parle quelque part du mystérieux frisson qui saisit les initiés à la lecture de telles strophes de…

モーリス・ポッテシェールとルイ・ル・カルドネル

Parmi les fausses monnaies, sa langue claire et grave sonnait la loyauté ; c'est par elle qu'on entendra vivre tout ce que l'écrivain a écouté de la vie. Les élections académiques, le message des « Cigognes », l'assaut des mages ne console…

モーリス・ボーブールとピエール・ヴェベール

Maupassant eût continué son œuvre qu'il eût achevé de quitter ces malheureux naturalistes, qui n'ont décidément que des fonctions !... Il eût laissé leur domaine aux sciences physiques destinées à l'amélioration des calorifères, et eût mon…

ジュリヤン・ルクレール

J'aime la prose lorsqu'elle est composée par les poètes. Je n'aime pas les vers lorsqu'ils sont l'œuvre d'un prosateur. Voilà pourquoi je n'aime ni la prose, ni les vers de M. Guy de Maupassant. – Julien Leclercq. (L'Écho de Paris, supplém…

ルイ・デュミュール

シャルルさんお返事ありがとうございました。 お陰様で束の間いい夢が見れました。 おっしゃるとおり、モーパッサンのたくさんの短編はその多様性にこそ驚かされます。 ので一冊でその多様な面を窺えるように、なるべく色んなタイプの作品を取り上げたい、 …

ロマン・クーリュスとアンドレ=フェルディナン・ヘロルド

新学期を迎える、が、とりあえず変わらぬ日。 だんだんおざなりになって、既に飽きてきているのがばればれではあるが、 本日の宿題。 Guy de Maupassant tient dans mes actuelles lectures une place si modique ! Serais-je même coupable d'avouer que je…

マンデスとトリスタン・ベルナール

カチュール・マンデス(1841-1909)ってどんな顔なのかなあ、 とか思ってしまったのが運の尽き。 描いちまったんだな、これがまた。 うーむ、さすがはパトロン。 にしてもヒゲと髪に相当てこずる。 頼むから剃ってくれ、刈ってくれ、と言いたい。 せっかくなの…

モーパッサン短編集を編んでみる

29日、ベケットとマラルメとジャリの日@六甲。 シャルルさま、お初にお目にかかります(よね?) 嬉しくも悩ましいご質問をどうもありがとうございました。 私自身、前々から自分の「モーパッサン短編集」を編むとしたらどうするか というのを宿題に抱えて…

アンリ・マゼルとルネ・タルディヴォー

引き続いて、エコパリのモーパッサンについてのアンケート。 終わらないー。 L'étonnant n'est pas de rappeler Gavarni ni Edgar Poë, mais les deux. – Henri Mazel. (L'Écho de Paris, supplément illustré, 8 mars 1893.) 驚くべきは、ガヴァルニやエド…

スチュアート・メリル

Guy de Maupassant est un auteur prisé des commis-voyageurs. Ses nouvelles se laissent lire d'une gare à une autre ; ses phrases courtes sont rythmées aux cahots des wagons, et ses personnages, qui sont ses admirateurs, se retrouvent à chaq…

ジャリとミュルフェルド

エコパリのモーパッサンのアンケートに ジャリの名前は残念ながら無いのだけれど、 いささか故あって描く。 ジャリだからいいか、ジャリだし、という適当な配色。 不知火どの曰く「昇天しそう」な感じとか。 お元気でいらっしゃることを祈っております。 宿…

エミール・ベニュスとタデ・ナタンソン

5日間外出して労働。まだ寒くても春は近い。 Ce monde-ci, où nous passons, si peu selon la Nature... Ces hommes-ci, si peu selon l'Humanité... Et tant d'âmes vaines ont circonvenu les âmes instinctives, que nous traversons la vie comme des ét…

レオン・ブルムもいた

粛々と自分の勤めを果たすのみ。 La crainte de paraître emprunter leur indulgence au pathétique des circonstances aura détourné quelques-uns de mes amis d'exprimer une admiration ou même une sympathie. J'avouerai que j'aime beaucoup Maupassa…

なんとモーリス・ピュジョ

あちらやこちらで引っ越しのお手伝いが続く。 ところで前言を翻しまして、 カミュのあれはハンフリー・ボガードであり、つまりハードボイルドである。 うむ、そうに違いあるまい。 で、大人しく宿題をこなす。 Maupassant est un tempérament. Il a traité l…

やっとルナール

バルビュスは駄目でも、ルナールならいいんかい。 没後百周年だった昨年、結局ルナールの名を聞くことが あまりなかったように思うのだけれど、どうなのだろう。 日本でこそ、何かあってもよかったかもしれない、という気もする。 では宿題。すでに疲労ぎみ…

そしてバルビュス

研究会、同窓会と予餞会。 Maupassant a été le plus réaliste des réalistes. Il a compris admirablement le style qui n’est que la façon artistique de voir la pensée et qui n'est rien par lui-même. Il me semble au-dessus de Flaubert, qui mêlai…

次いでモークレール

土佐を満喫して帰る。 四万十川最高。足摺岬感動。 おもむろに一句。 これやこの鰹美味しや土佐の春 感謝のつもりでカミュを描きなおす。 カミュには悪いが、やっぱりこれはヤクザだろう、と。 では本日も宿題。 M. Guy de Maupassant écrivait bien. Il voy…

次がヴィエレ=グリファン

ああ、もう2月が終わってしまう、と、毎年言っているような。 昨日マラルメ。『賽の一振り』もほぼ終わりへ。 最後の手前の頁。主幹文を終えて「後奏曲」とでも呼びたいところか。 たとえサイコロを振ったとしても偶然は廃棄されず、 「場所以外の何も起こら…

お次はヴァレット

おもむろに一息で読んだ本。 出口裕弘、『辰野隆 日仏の円形広場』、新潮社、1999年 半ばまではとても面白い。後半はやや「ふくらまし感」ありか。 というか、この本全体がそれ自体として、日本における仏文学に携わってきた人の思いの記録ということで、 こ…

笑わせてみる

「ゆる度」向上を目指して笑わしてみる。 そんなことばかりしてるわけではないのですけども。 『女の一生』だ、と一度は思ってみるものの、 その前に片づけないとだめなことがやはりたくさんあることを認めざるをえず、 これは困ったなあと。 1881年7月―9月…

ゆるキャラのつもり

時流に乗って(つうか乗り損ねて今更か) いわゆる「ゆるキャラ」で勝負すんぞ、と思いたつ。 これで「モーパッサンを巡って」も千客万来。 名前はくるしまぎれに「むっしゅー・ぎー」(仮称)。 断じて「ミスター・ガイ」ではありません。それはいやだろう…

レコー・ド・パリが読めるなんて

これまた一年ぶりに描きなおしのサミュエル・ベケット。 なぜベケットか(ただの条件反射なので、特に意味はない)。 なんとなくデュラスの『苦悩』と「待ち」つながりで、て、ただのこじつけです。 『ゴドーを待ちながら』の場合、客観的にはゴドーさんはま…

絵はまだないけど

とりあえず告知のみ(ただ今21日午前4時25分)。 モーパッサン 『一冊の書物を巡って』 10ヶ月ぶりの翻訳、10ヶ月ぶりの更新です。 嬉しくって泣いちゃいそうです。 「偽善」を語らせたらモーパッサンは一級品です。 ぜったい面白いので、ご一読いただけたら…

太宰施門『バルザック以後』

ようやく、お教えいただいた 太宰施門、『バルザック以後』、山口書店、昭和18年 を読む。 つねづね辰野隆は日本における仏文のご本尊なので敬うべしと申し上げておるのだが、 太宰施門は西方分派のご本尊みたいな方なので、関西在住者はあだおろそかにはで…

親と子とオルラ

時の経つのは早すぎて、有言不実行の不甲斐なさよ、と。 竜之介様、これまたどうもありがとうございます。 モーリス・ルヴェルはなるほどどこかで誰かがモーパッサンと関連づけて言及していた ような記憶がありますが、いまだ読んでおりませんでした。 太宰…

あばずれのローザ

さすがに我ながら物好きとは思いつつ、もう一冊届いたので確認。 あたちたちは、ちっちゃなお池とおわかれちてきたんですよ! グワ! グワ! グワ! ちっちゃな金串とおちかづきになるためにね――グワ! グワ! グワ! (モーパッサン、『脂肪の塊・テリエ館…

みたびの家鴨

モーパッサン、『快樂』、長塚隆二譯、三笠文庫、1952年 いまさらですが、50年代、60年代には巷の文庫にモーパッサンが溢れていました。 それにしてもこの「快楽」なるタイトルは何なのか。 とずっと思っていたのであるが、現物を見て納得する。 以上、『マ…

毎日がお祭り

「メゾン・テリエ」の家鴨について一例追加。 「あたちたち、小っちゃなお池と別れて来たの。グワッ! グワッ! グワッ! 小っちゃな金串と、お友だちになるために。グワッ! グワッ! グワッ!」ドッと女たちが笑い崩れた。 (モーパッサン、『メーゾン・テ…

家鴨の鳴き声

「メゾン・テリエ」の中で、列車の中で女達は農民の夫婦と一緒になり、 そこに軽薄な小間物商の男が乗ってきて大騒ぎになる場面があるのだけれど、 そこに出てくる家鴨の話。 そういえば、モーパッサンに出てくる「カナール」はカモかアヒルか調べた方もおら…

ルイーズ・ミシェルをからかう

1880年春にモーパッサンは日刊紙 Le Gaulois と契約し、 基本的に週一回(とはいえ実際は大変まちまち)記事を掲載するようになる。 その『ゴーロワ』が、いまやGallicaで全て閲覧することができるのであるが、 しかもいつの間にか、OCRで読みとったテクスト…

短編「刹那」

岸田國士を仕舞ってたら、かわりに出てきた本があったので、 そうか、この話はしていなかったなと思う。 おそらく、日本で一番読まれたモーパッサン偽作の話。 『モオパッサン選集』、平野威馬雄訳、新潮文庫、1934年初版(1939年25版) には19編の短編が収…

岸田國士「二人の友」

『モオパッサン 二人の友』、岸田國士訳註、白水社、仏蘭西文学譯注叢書第一篇、1925(大正14)年 岸田國士がパリ留学中に日本に原稿を送ったが紛失、 関東大震災の後、白水社で発見され、出版となった、 と、「巻頭言」に内藤濯が記している。 ついでながら…

小林天眠と天佑社

さて天佑社に関して、Kさんにご教示いただいた本。 真銅正弘 他編、『小林天眠と関西文壇の形成』、和泉書院、2003年 小林天眠(本名政治、1877-1956)は兵庫出身の実業家。 明治30年から33年『よしあし草』、改題して翌年まで『関西文学』に関わり、自身も…