えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

文学研究

『あらゆる文士は娼婦である』

石橋正孝・倉方健作『あらゆる文士は娼婦である 19世紀フランスの出版人と作家たち』、白水社、2016年を読む。 芸術作品はそれが流通する媒体と切っても切れない関係にある。19世紀フランス社会においてはペンで身を立てることが可能となり、作家が職業とし…

我らがモーパッサン

通りすがりの猫、一匹。 だから何と言われても困ります。 フランス語の文章では同じ単語の繰り返しを嫌うので、 「モーパッサン」の言い換えに、文脈に合わせて「作家」「小説家」「時評文家」 あるいは「『女の一生』の作者」等々をひねり出さないといけな…

関東支部論集19号

仏文学会の関東支部論集19号(2010年)をご恵贈いただいたので、興味のあるとこだけ読む。 その前に一言申し上げておきますが、 表紙に目次印刷して、1頁目から本文というのは、今の時代、貧乏ちいからやめたほうがいいです。 本としての体裁というものを、…

学会誌お勧め論文2本

おもむろに、読みかけの学会誌のうちの2本のご紹介。 どちらも知ってる方のですけどね、よいものは褒めねばなりません。 辻川慶子、「ネルヴァル神秘主義再考 ―『幻視者たち』「ジャック・カゾット」における引用、歴史、断片の詩学ー」、『フランス語フラン…

Cirque TZARAのこと

そのKさんが寄稿されたという Cirque TZARA, no 3, par Club Tzara, 2008 を合わせてお送り頂きました、ということもあって、まことに 勝手ながらここにささやかにご宣伝させて頂こうかと。 詳しくはこちらをご覧じろ。 http://home.t01.itscom.net/tzy/tris…

アカデミーと詩人

さて成程たしかにメリメもノディエも生き残っている と言えよう。しかし シャルル・ノディエ(1780-1844)(入会1833年)は、 辞典も出してる文法学者でもあったということが、 プロスペル・メリメ(1803-1870)の場合(1844年、ノディエの後を継ぐ)、 考古学者的…

アカデミーについて知りたい

おもむろに気になったのでメモ。 権威と束縛を嫌ったモーパッサンが馬鹿にしたものとして 勲章(レジオン・ドヌール) アカデミー・フランセーズ 『両世界評論』 の三つがある、というのが昔から語られるのだけれど、 実際のところモーパッサンは『両世界評…

ヴェルレーヌ『歌詞のない恋歌』論文

倉方健作、「『歌詞のない恋歌』における伝記的要素 −非人称的詩法とヴェルレーヌの自己表象―」、『日本フランス語フランス文学会 関東支部論集』、第16号、2007年、p. 189-202. Romances sans paroles (1874)においてヴェルレーヌが 模索していた新しい詩法…

エドモン・アロクール

そもそも誰なんだ、アロクールって。 という点に関しては、仏語版ウィキペディアが多少なりと教えてくれる。 Edmond Haraucourt, 1856-1941 詩人、小説家、作曲家、作詞家、ジャーナリスト、劇作家にして美術館学芸員。 1882年、『性の伝説、ヒステリックで…

Atelier Bovary

さて、これは本当に本当に凄いことです。仏文研究者はすべからくぜひこのサイトを見て頂きたい。 http://www.zoulous.com/bovary/ 2007年は『マダム・ボヴァリー』150周年だったわけだけれど、それを記念してあまりある 一大プロジェクトの成果がこれである…

写実主義廃止宣言

ここに私は、レアリスム(リアリズム)の訳語として「写実主義」の語を用いることを 原則として廃止することを誓います。2008年1月吉日 えとるた ということなのだ。 「写実主義」の語はリアリズムの概念を矮小化することに繋がる。リアリズムは写実には還元…

リアリズムと偶然について思うこと

脈略なく引用。 小説 本当らしい小説とは単に事件の発展に偶然性の少ないばかりではない。おそらくは人生におけるよりも偶然性の少ない小説である。 (芥川龍之介「侏儒の言葉」『芥川龍之介全集』ちくま文庫、2004年(6刷)、232-233頁) モーパッサンはボ…

引用は何語でするのか

それはそうと思うことを記しておく。 日本語で論文書くときにあなたは欧文引用をどのように処理しますか というささやかな問題について。 そんなもんケース・バイ・ケースであるわいな、という話ではある。 まったく個人的にはしかし、 日本語の論文中にフラ…

コントとクロニックの近親性

てなことはともかく。 この半年折に触れ述べてきたことの一つは、 モーパッサンのコントは新聞という特殊な媒体を意識して書かれたものであり、そのことを抜きに 彼の特殊なレアリスムは理解できないということであり、フィクションとノンフィクションの境界…

学会誌を読もう(4)

そういうわけで続き。 原大地「詩と不毛性 −マラルメ・ユゴー・ボードレール」, p. 140-154. 60年代のマラルメの詩を「不毛性」の観点から検討する論文で、 「鐘撞き男」とボードレールとの比較から、ボードレールにはまだあったロマン主義的な 詩人像がマラ…

学会誌を読もう(3)

そういうわけでまた続き。 Kensuke Kumagai, "Résurrection de la ville - A propos de la fête théâtrale dans La Dernière mode" de Mallarmé, p. 95-109. パリに出たマラルメは1874年にモード雑誌「最新流行」を発行、「クロニック・ド・パリ」の欄には …

学会誌を読もう(2)

そういうわけで続き。Hiroko Teramoto, "Poétiue de l'opacification chez Flaubert", p. 52-66. 『感情教育』ではしばしば、地の文中に登場人物の言葉がギュメで引用される。 言語の指示対象ではなく言語そのものを指示させる機能を「不透明化」という用語…

学会誌を読もう(1)

そういうわけで、おもむろに個人的に「学会誌を読もう」キャンペーンを展開する。 研究者的書評でなく、基本(素人)褒め褒めモードのつもりなので(でも私利とは無縁よ)、間違いがあっても ご海容にお願いいたします。 Atsuko Tamada, "L'amour de la terr…

詩の本

項目を立てるほどのことはないけれど、最近立ててないので。 一時期集中的に詩の勉強をしたのはもう二年前のことで、今やどうにかシラーブが数えられるだけに なり下がったのではあるが、しかし詩法はちゃんと勉強するとものすごく奥が深くて面白い というこ…

べリアルの散歩

「研究」と呼ぶのはまだおこがましい感想。 全6章の中編小説。46ページ。 新婚のプレヴァル公爵夫妻はお客を排し、生命とは何かについて話しあっている(変な設定)。 ちなみに奥方はクレチアンで、夫は折衷主義。 そこに現れる悪魔。自称「愛を司る精霊」で…

アルフレッド・ル・ポワトヴァン

余韻に浸りつつも、本日ようやく届いた本。 Alfred Le Poittevin, Une promenade de Bérial et œuvres inédites, précédées d'une introduction sur la vie et le caractère d'Alfred Le Poittevin par René Descharmes, Paris, Les Presses Françaises, 192…

ある夜の雑感

帰り道、唐突に思いついたことを記しておこう。 私は「モーパッサンが何であったか」について知ることに 関心があるけれど、それよりもこれまでの人が 「モーパッサンは何であったか」について積み上げてきた言説に対し、 「それは本当だろうか」と問い直す…

フロベール同時代評

まだ読んでないけど(て、そればっかじゃん)。 Gustave Flaubert, textes réunis et pésentés par Didier Philippot, Presses de l'Université Paris-Sorbonne, coll. "Mémoire de la critique", 2006. この「批評の記憶」叢書は、同時代の批評を集めまくっ…

パルナスの歴史

これまたKさんに教えてもらった本が、今日届く。 (写真は本の上のノッポン弟。) Yann Mortelette, Histoire du Parnasse, Fayard, 2005. コペーの評論集編纂と同じ人であります。550ページを超えるぶっとい書物である。 巻末のビブリオの詳細ぶりにはたま…

コペーの評論

モーパッサンをさぼってずいぶんになるのが心苦しい。 代わりに最近学校で見つけた本の話。 François Coppée, Chroniques artistiques, dramatiques et littéraires, édition établie par Yann Mortelette, Presses de l'Université de Paris-Sorbonne, 2003…

ナナと腕くらべ

MLAでNagai Kafuと検索すると、フランス語の論文は多分、一件だけみつかる。 読んでみたので記しておこう。 Gérard SIARY, "La représentation de la courtisane dans Nana d'Emile Zola et Udekurabe de Nagai Kafû", in Japon pluriel, actes du premier c…

ヴェルレーヌとアレクサンドラン

雑誌Europe, no 936, avril 2007 はヴェルレーヌ特集号で、実はKさんも論文を 載せている。読み応えある論文がそろっている中で、特に面白かったのは、 Benoît de Cornulier, "La Pensée rythmique de Verlaine", p. 87-96. の中の話題の一つ。 De la douceu…