えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

荷風

論文のけじめに

改めて考えるにつけ、要するに、 作家永井荷風の「構成要素」というものを考えるなら、 その内の何パーセントかは確実にモーパッサンから成っている。 ということなのだ。 度合は『あめりか物語』の時は相当高く(推定30パーセント程度、適当だけど) 『ふら…

「つゆのあとさき」を読む

永井荷風『つゆのあとさき』岩波文庫、2005年(23刷)。 初版は1931(昭和6年)11月、中央公論社。12月で荷風は52歳。 書いたのが梅雨時だから、という気の抜け具合は何なのかと思うが、 結末もなんだか拍子抜けである。人物をからみ合わせて話を面白くもっ…

引用ついか

どうしてももう入んねえっぽいのでここに挙げさせていただく。 『國文学 解釈と鑑賞』平成14(2002)年12月号に 塚本康彦、網野義紘の対談「荷風文学の軌跡」が掲載されている。 網野氏の発言に、 私はモーパッサンこそもっとも荷風に影響を与えたフランス作…

吉田精一のおさらい

せっかくなので 吉田精一『永井荷風』、『吉田精一著作集』5巻、桜楓社、1979年 のおさらい。 まず『あめりか物語』について。 作者の虚無絶望の気持は、かような社会の消息を語るにふさわしく、時に必要以上に感傷に流れ、主観的な色彩で染め上げているけれ…

二つの疑問

今日も荷風さん。唐突に浮かんだ二つの疑問。 一つめ。 日夏耿之介の荷風論(『荷風文学』平凡社ライブラリー、2005年)には モウパスサンのモの字も出て来ないのだけれど、 (嘘。少なくとも一回は名前だけ出てくる。) ゾライズムやリアリズムについては語…

夜の女

そういうわけで、この作品である。明治41年8月『あめりか物語』初出。明治40(1907)年4月と成稿年月が 記されているが、こういうのを字義通りとっていいのかどうか。ま、それはよく、 「モオパサンが短篇集『メイゾン・テリエー』を読む。」と『西遊日誌抄…

引用つづき

佐藤春夫『永井荷風読本』1936は以前にもひいた。あまり皆さんお読みでないようなので さらに引いておく。『あめりか物語』について。 それに比べるとモウパッサンとツルゲーネフとのそれ(引用者注:影響らしいもの)、就中、前者の影や匂と思はれるものは…

引用いくつか

後年の荷風がモーパッサンを再読していたことを論じる際に不可避の証言。 「近頃またゾラを読んでみようと思つたが、いかにも古い感じで読み通せなかつた。それに比べると、モーパッサンは依然として新鮮である。昔はモーパッサンの小説のもつエロチシスムに…

春と秋

また悪口を言うのである。大人気がないというのである。分かっているつもりなのである。 穏便に行きましょう。 永井荷風「春と秋」『あめりか物語』所収。初出は明治40年10月『太陽』。 再び伊狩論文をひく。いわく 「全体の構成はモーパッサンの "Père" で…

春水とモーパッサン

永井荷風について読んでいると、よくお目にかかるのが 「春水とモーパッサンの合の子」という言葉である。荷風が自身の文学を指して 言ったとのことで、出所は佐藤春夫らしいが、必ず皆さん出典を明記でない。 ので佐藤春夫全集をぱらぱら眺めてみた次第。以…

酔美人

これまた渋いカテゴリーを立ててしまった。 ここしばらく、荷風におけるモーパッサンについて考察中なので、以後つれづれに 記すことあれば、記していきたいと思う次第。 「酔美人」は『あめりか物語』所収の短編。初出は明治38(1905)年6月の「太陽」(11…