『ラ・フォンテーヌ寓話』、ブーテ・ド・モンヴェル絵、大澤千加訳、洋洋社、2016年 『イソップ寓話』というのなら、日本人の大半はよく知っている。昔から、子どもたちに人生の教訓をわかりやすく教えるという目的で、絵本や小学生用教科書に使われてきたか…
アレクサンドル・デュマ『千霊一霊物語』、前山悠訳、光文社古典新訳文庫、2019年 刊行は1849年。舞台は1831年、語り手(デュマ自身)は、妻を殺したばかりだと打ち明ける男に遭遇、市長らと一緒に現場検証に出かけるが、そこでその男は、殺した妻の生首がし…
毎年、6月はバカロレアのシーズンで、今年はどんな問題が出たかとニュースになるが、その時に、ふと読みだしたら止まらずに、一気に読んでしまったのが、 中島さおり『哲学する子どもたち バカロレアの国フランスの教育事情』、河出書房新社、2016年 だった…
二十歳の貴族の青年フランソワは、ドルジェル伯爵夫妻に気に入られ、足繁く出かけて行っては二人と時間を過ごす。彼は妻のマオに恋しているが、しかし夫のアンヌのことも好きであり、嫉妬の感情などを抱いたりはしない。彼はいわば現状に満足しているのだが…
ユゴー『ノートル=ダム・ド・パリ』(上下)、辻昶・松下和則訳、岩波文庫、2016年 は、なんとも長い小説だ。1482年1月6日、「らんちき祭り」の日に、パリ裁判所で聖史劇が行われる、というところから始まるのだが、まずこの裁判所の場面(第1編)がやたら…
書店で偶然出会った本。 石澤小枝子、高岡厚子、竹田順子『フランスの歌いつがれる子ども歌』、大阪大学出版会、2018年 タイトル通り、フランス語の子どもの歌の、楽譜、歌詞(仏日)、それに解説をセットにして、全40曲で構成されている。ブーテ・ド・モン…
初めにお断りしておけば、以下はまったく門外漢の個人的感想です。 ジャン=ポール・サルトル、ベニイ・レヴィ『いまこそ、希望を』、海老坂武訳、光文社古典新訳文庫、2019年 サルトルは晩年、失明し、自身の手による執筆が不可能になった。そこで秘書を務…
こんな本まで出るとは、いったい今はいつなんだろう、という不思議な気分を抱きながら本書を手に取った。 ジッド『ソヴィエト旅行記』、國分俊宏訳、光文社古典新訳文庫、2019年 1936年、66歳になるジッドは2ヶ月かけてソヴィエトを旅行し、帰国後に『旅行記…
フランス文学入門者向けの作品リスト、のようなものを作りたい、としばらく前から思いつつもまだ果たせないでいる。理由はいろいろある。あくまで王道を行くなら古いところを中心にして、あっという間に20も30も書名が上がるが、それでは今時の入門向けとし…
昨日、久し振りに大阪でマラルメの読書会に参加。テオドール・ド・バンヴィルについての一文を読む。 その朝、たまたまテレビで杉田玄白の番組を見た。 杉田玄白は前野良沢らと『ターヘル・アナトミア』を翻訳しようと決意し、顔を合わせてはオランダ語の意…
これまたフランスではないけれど。 バーバラ・ストック『ゴッホ ――最後の3年』、川野夏実訳、花伝社、2018年 文字通り、ゴッホの最後の3年(1888-1890)を描いた、オランダの伝記漫画。つまりパリから南仏へ移って以降、オヴェール・スル・オワーズに至るま…
『宝島』を読んだら、『ジーキル』に行くのはもう避けられないと言うべきか。 スティーヴンスン『ジーキル博士とハイド氏』、村上博基訳、光文社古典新訳文庫、2009年 は、なにしろ有名な作品だ。二重人格という主題は、それだけ人を惹きつけるものがあるの…
ガイブン初めの一冊にお薦めなのは何だろうか? という問いに対しては、無論、私だって好き好んで『ボヴァリー夫人』を挙げるわけではない。19世紀フランス文学限定というなら、『ゴリオ爺さん』を挙げてもいいかもしれないが、いきなり冒頭でつまずかれる危…
一言で言って、これは傑作。 ペネロープ・バジュー『キュロテ 世界の偉大な15人の女性たち』、関澄かおる訳、DU BOOKS、2017年 culotttéは「厚かましい、図太い」を意味する形容詞、と辞書にある。ここでは culotter の過去分詞「キュロット(半ズボン)をは…
こんなの出てるなんて知らなかったなあ、誰か教えてよー、と激しく思ったので、非力ながらここにご紹介に努め、どなたかのお役に立てればと願う。 アレクサンドル・デュマ原作、森山絵凪『モンテ・クリスト伯爵』、白泉社、Young Animal Comics、2015年 マル…
久方ぶりにモーパッサンの翻訳をする。 モーパッサン 「恐怖」(1884) 昨年の秋にモーパッサンの幻想小説について発表する機会があり、その余波で「さらば、神秘よ」を訳し、今回は「恐怖」(1884)を訳した。まるで15年ぶりくらいにようやく宿題を提出したよう…
ジュリー・ダシェ原作、マドモワゼル・カロリーヌ作画『見えない違い 私はアスペルガー』、原正人翻訳、花伝社、2018年 原作者の経験に基づく自伝的漫画。主人公のマルグリットは27歳、会社員として働き、恋人もいるが、様々な面で生きづらさを感じている。…
『ふらんす』3月号に、「対訳で楽しむモーパッサンの短編(最終回) 「クロシェット」②」が無事に掲載されました。クロシェットとあだ名される老婆は、かつては美しい少女オルタンスでした。彼女の身に起こった事件とは……。コラムは「映画『女の一生』」です…
モーパッサンの短編を漫画化した作品というのは、いろいろあってもよさそうだと思うのだけれど、これまでお目にかかる機会がなかった(ご存知の方がいらしたら、教えて頂けると嬉しいです)。このたび初めて目にすることができたのが、Iさんに教えてもらった…
いやはや、こんなに長かったっけ。 ヴィリエ・ド・リラダン『未来のイヴ』、高野優訳、光文社古典新訳文庫、2018年 は、なんと800頁を超えており、本文だけでも768頁まである。もっとも比較的短い章に区切られているし、この新訳は平易な言葉遣いで書かれて…
『ふらんす』2月号に、「対訳で楽しむモーパッサンの短編(5) 「クロシェット」①」が無事に掲載されました。これまで扱ったことのない作品を取り上げられたのが嬉しいです。コラムは「オールド・ミスと呼ばれた女性たち」、モーパッサンは生涯独身で通した…
フランスではないけれど。 ビルギット・ヴァイエ『マッドジャーマンズ ドイツ移民物語』、山口侑紀訳、花伝社、2017年 この漫画を読むまでモザンビークの歴史なんて何にも知らなかったから、歴史的事実にまずは驚くばかり。 ポルトガルの植民地だったこの国…
Tsさんに存在を教えてもらって、そんな翻訳が出ていたなんて知らなかったなあ、と感動したので読んでみた本。 エミール・ファゲ『読書術』、石川湧訳、中条省平校注、中公文庫、2004年 もとは戦前に出ていたものの復刊であり、ごりごりの直訳調は今となって…
北村薫のいわゆる「円紫さんと私」シリーズは、今年で登場以来30年になるが、今も人気のある作品であることは言うまでもない。語り手の「私」、探偵役の落語家春桜亭円紫をはじめとした登場人物がいずれも生き生きと描かれていることはもちろん、この作品に…
『死刑囚最後の日』と言えば、今は昔、大学生の頃に岩波文庫の豊島与志雄訳で読み、結構感動したことを覚えている。若かったなあ。 当時はフランスについて勉強を始めた頃でもあったから、1981年、ミッテラン政権下に法務大臣ロベール・バダンテールが、民意…
『ふらんす』2019年1月号に、「対訳で楽しむモーパッサンの短編(4) ソヴァージュばあさん②」が掲載されました。今回が完結編です。コラムは「新聞小説家モーパッサン」、「これが言いたかった」ということが書けて嬉しく思っています。ご一覧いただけました…
モーパッサン『宝石/遺産 モーパッサン傑作選』、太田浩一訳、光文社古典新訳文庫、2018年 が11月に刊行される。『脂肪の塊/ロンドリ姉妹』に続く、モーパッサン短編集の2冊目だ。つい、1冊目は内容が渋すぎるのではないかなどと言ってしまったが、はたし…
これはBDではなく漫画だけれど。 Emmanuelle Maisonneuve / Julia Pavlowitch 原作、高浜寛『エマは星の夢を見る』、講談社、モーニングKC、2017年 エマニュエル・メゾンヌーヴさんは、あのミシュランガイドの調査員を務めていて、本作は彼女の実体験を基に…
アルベール・カミュの『異邦人』。有名だし、そんなに厚くないし、と思って気楽に手に取ると、前半はなんだかけっこう退屈だし、後半はなんだか難しく、なんだか訳が分からないまま終わるんだけど、なんだか大事なことが書いてあるような気はする、という「…
信州大学国際シンポジウム2018「19世紀における文学と民衆文化―フランスを中心として―」 | お知らせ | 信州大学 人文学部 12月2日に信州大学で開催される国際シンポジウム「19世紀における文学と民衆文化 ―フランスを中心として―」のチラシ(勝手に転載しま…