えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

捏造の検証

テレビでねつ造の反省番組をやっていたので、ちなんでみる。
昨日載せた目次に、モーパッサンの原作が特定できたものの
仏語題を加えておいた。まだ全部読んだわけではないので
間違いがないとは言えないけれど、今のところ
真作は2,3,4,5,7,9,11,12,15,16,18,19,23,27,30,31,32,34
都合18作ですか。なるほど、なるほど。
って少なすぎるじゃーん。
私に間違いがなければ、なんと35作中17作が偽作ということになる。
我が目を疑う結果だな。


とりあえずちゃんと読んだのは「白の貴婦人」。
夜な夜な現れる白の貴婦人の幽霊は、実は
家庭教師と浮気している奥様だった、という艶笑譚。
途中でネタがばればれなんですけど、そういうのはどうなんでしょうか。
もうひとひねりないと、われらがM君には失礼というものだよ。


さてモーパッサンの偽作は、実のところはこの版が出自なわけではない。
専門家の間で定説になっているところでは、どうやら真犯人は、
Short stories, tranlated by R. Whitling, London, Mathieson, coll.
"After-Dinner Series".
であるらしい。全12巻。ネットでいろいろ見た限りでは出版年不記載の模様。
オックスフォードでは1896とあったが、これは3巻のみ?でちょっとまだ正確ではない。
悪名高き「アフターディナー・シリーズ」別名「食後叢書」は、田山花袋が読みふけった
版としてつとに有名なもの。一冊50銭だったとか。詳しくは『東京の三十年』参照のこと。「撫でたりさすったりした」
という台詞が忘れられません。
で、加えて今度はアメリカの
The Life Work of Henri René Guy de Maupassant, Akron, Ohio, St. Dunstan Society, 1903.
こちらは全17巻にも、相当の偽作が紛れているよし。これも日本に入ってきた可能性が高いと。
ま、これだけのことが分かるのにも結構苦労したので、報告しておく次第。
そうするとこのたびの版は上記のどちらか、たぶん「食後」のほうからそのまま中身を取ってきた
んだろうと思われる(版権がどうなってるのかは理解を超えてるが)。
そうでなきゃこんなに偽作がかぶるわけはないのだが、この版のすごいところは
一冊のうちに偽作品が凝縮して集まってしまったところだろう。実にいい嗅覚をしている。悪意というか
茶目っけというか、なんしか意図的なものまで感じられるが、実際のところは、どうだったのだろう。
以上、とりあえず本日の成果(なのか)なり。