えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

竹友文庫とモーパッサン

とは言いながら、写真は別物。おまけにモーパッサンを読んでいない。
そしてまた、偽作がらみの話なのであった。
廉価で日本に入って来たというだけあって、「食後叢書」もダンスタン版も
いくつかの大学図書館に収蔵されている。なんと、手近なところの大阪大学図書館にも
実は「食後叢書」が2冊あるではないか。これはびっくり。そこで本日、めでたく
ご対面して、理由が分かったのだけれど、この2冊は「竹友文庫」のものだった。
詩人・文学者の竹友藻風大阪大学文学部英文科の初代教授でもあった人で、
その蔵書は2度にわたって阪大図書館に寄贈された。それが「竹友文庫」だ。
http://wsv.library.osaka-u.ac.jp/kanpo/35-4-1.htm
は玉井翮、現英文科教授による「竹友文庫」および「藤井文庫」紹介の文章。残念ながら現在まだ
目録の刊行はされていないらしい。
書庫で見つけたモーパッサンは次の4冊。


Short stories by Guy de Maupassant ; translated from the French by R. Whitling, M.A., Oxon, coll. "After-Dinner Series", London, Mathieson, n. d.
の Second Series と Eight Series.
Guy de Maupassant, Pierre and Jean, translated by Hugh Craig ; illustrated by Ernest Duez and Albert Lynch, New York, Brentano's, 1910 (© 1899).
Guy de Maupassant, Yvette, Vienne, Manz, n. d.


うち、『ピエールとジャン』は製本されて元の表紙なし。いずれも写真の通りばばんとバーコード貼られているのがちょっと哀しい。でもこれは仕方ないのでしょう。なお『イヴェット』のみフランス語。他3冊が英訳である。
ちなみにあちこち訳語がふってあったり署名があったり、「藻風荘書」の印があったり、
「食後叢書」8巻は丸善のシールがあったりと、なかなか感慨深いものである。
こういう出会いもまたご縁と思う。

さて、こうなったら例の如く目次を並べよう。
まず「食後叢書」2巻(写真右)
The Horla, or Modern Ghosts
Love, Three Pages from a Sportsman's Book
The Hole
Saved
Bellflower (Clochette)
The Marquis de Fumerol
The Signal
The Devil
Epiphany
In the Wood
A Family
Joseph
The Inn
以上、13編。見たところ、偽作はない模様。


次は8巻(写真左)。
Allouma
A Family Affair
The Odalisque of Senichou
A Good Match
A Fashionable Woman
The Carnival of Love
A Deer Park in the Provinces
The White Lady
Caught
Christmas Eve
Words of Love


以上11話。いやー、いいですね。偽作だらけです。最初2作、最後2作が本物で、
残り7本が偽物というところでしょうか。
なんだか疲れたので今日の検証はここまでに留めよう。問題は偏に、この「食後叢書」が
Dunne (Dunstan) の1903年より前に出たものである、という確証が得られるかどうかだ。
(少なくとも日本に入って来たのは「食後」のほうが早かった模様。)
で、もしそうであるならば真犯人は R. Whitling なる人物だと、ひとまず
結論は出る。そうすると 胡散臭い Dunne の親父はそこにどう関わってくるのか。
なにはともあれ、竹友藻風せんせいはよく勉強なすっていた。
ということを胸に留めて、今日は就寝することにしよう。