えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

消えた印刷職人

たまたま目にとまった一冊。
ジャン=ジル・モンフロワ『消えた印刷職人』宮下志郎訳、晶文社、1996年(2刷)。
歴史の先生が著したフィクション体裁の薄い書物
ルネサンスの印刷職人の様子がよく分かってなかなか興味深い。文字通りの
職人技かつ人手もかかって大変な仕事だったこと。出版の盛んなリヨン、ジュネーヴなど
の政治的・宗教的事情も重要なファクターであること。とりわけ戒律の厳しかった
プロテスタントの社会のこと。原題が『親方アベル、あるいは妻を寝取られた印刷業者』
であるのには、ちゃんと意味があった。
物語としては物足りないけれど、こんな地味な本が訳されているとは喜ばしい
ことでありました。