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えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

パンドラの匣

話が出て「ヴィヨンの妻」を読み、つづいて思わず読み直す。
太宰治パンドラの匣ちくま文庫全集8巻
恥ずかしながら、この作品が以前からとても好きなのである。
まったくもって実にナイーヴだ。けれどもそのナイーヴさに
厭味がなく、実になんともよく書けている。私は太宰が健康だったころ
あるいは健康であらんとしている時期のものにとても愛着を感じる。
そこに切実な希求を感じるからだろうと思う。
昭和20年、戦後すぐにこの作品が書かれながら、
2年後には「ヴィヨンの妻」であり、そして「如是我聞」にまで
進んでしまわざるをえなかったことはかなしい。
まったく月並みに太宰に入れ込んだのは二十歳前後の頃だったろうか。
もうあの頃のようには読めない。読みたいとも思わないだろう。
だが時には、そのことの意味を問い返すのも
悪いこととは思わない。