これまたKさんに教えてもらった本が、今日届く。
(写真は本の上のノッポン弟。)
Yann Mortelette, Histoire du Parnasse, Fayard, 2005.
コペーの評論集編纂と同じ人であります。550ページを超えるぶっとい書物である。
巻末のビブリオの詳細ぶりにはたまげるが、1920年代以来、低い評価のまま放って
おかれた高踏派の歴史を大変詳しく掬い上げた貴重なお仕事である。
個人的関心はモーパッサンがせっせと詩・演劇を書いていた1870年代における
パルナスとは何だったのか。というところにあるので、いきなり第三章から
読んでしまう。
するとのっけから大層面白いことが書いてある。
普仏戦争、パリ包囲のさなか、パルナス派の詩人はこぞってプロパガンダ的
作品を書きなぐった、というのである。それだけなら、笑っちまうような、笑えないような
話であるが、要点はこの時、「大衆を先導する詩人」というロマン主義的理想が
つかの間ながら蘇った、ということにある。なるほど。
それが第三共和政に入ると、当然のごとく
詩人(なんか)政治的に相手にされないので、また「芸術のための芸術」に戻って
行くのだけれど、しかしこの時の熱狂が、パルナス詩人を広く世間に知らしめる
効果をもったのは、疑いない事実なのである。
知的貴族をもって任じる彼等がコミューンを否定的に捉えていたというのもよく
分かる話だけれど、上記のような事情も含めて70年代はパルナス派が
前衛の立場から公的な承認を得ていく過程にあった、ということです。
76年第三次『パルナス・コンタンポラン』成立までのルメールとルコント・ド・リール
のごたごたとか、ヴェルレーヌやマラルメが排除される経緯(いきさつ)とか
ルメールに向こうをはったマンデスが『文芸共和国』をぶちあげた、とか
なるほど、ふむふむ、そうだったのね、ということがたくさん書いてあって
ここだけでも十分にお買い得な本でありました。