えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

ピュタゴラスは謎のひと

11回目終了。みんな数字百まで覚えたかね。
一時的に雨降るも、蒸し暑いことおびただし。
夜はホッケでビール。美味。


さて、何の予備知識もなく、
ディオゲネス・ラエルティオス『ギリシア哲学者列伝』(下)加来彰俊訳、岩波文庫、1997年(6刷)
の第8巻第1章「ピュタゴラス」を読む。
なんだかよく分からんがすごい人だ、と思わせるが、なんだかよく分からない。
肉を食ってはいかんというのは、実はただの健康法だったという説もあるらしい。
とにかくいろんなことを「やってはいけない」と言った人。
彼の戒律は、知る人は知る有名なもの(の模様)。

刃物で火をかき立てぬこと。
秤竿を跳び越えぬこと。
一コイニクス(の量の穀物)の上に坐してはならぬ。
心臓は食べてはならぬ。
荷物は、背負うのを手伝うのではなく、降ろすのを手伝うこと。
寝具はつねにたたんでおくこと。
指輪に神の像を刻んではならぬ。
松の小枝でお尻を拭いてはならぬ。
太陽に向かって小便をしてはならぬ。
大通りから逸れて歩かぬこと。
気軽に握手しないこと。
軒下に燕を来させないようにすること。
鉤爪をもつ鳥は飼わぬこと。
切り取った爪や刈り取った髪の毛の上に、放尿したり、その上に立ったりしないこと。
鋭利な刃物は切っ先の向きを変えること。
国外へ出かけようとしているときには、国境で振り向かぬこと。
(25-26ページ)

そんなことしまへんがな、というような項目もあるが、
こういうのは全部文字通りにとってはいけず、アレゴリックに解釈しなければ
ならないものである(のだそうだ)。
たとえば「刃物で火をかき立てぬこと」というのは、
「権力者たちの怒りや、ふくれ上がった激情をつつき動かすことのないように」
という意味である、云々。
そう考えれば、どれもなかなか味わい深いような気がしてくるのである。
「寝具はつねにたたんでおくこと」というのが正しいということは、
私にもよく分かるのであるが、これもまた奥深い意味を秘めた命題なんだろうか。