えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

乞食学生

発疹といえば太宰に「皮膚と心」という作品があるのだけれど、
ここに『ボヴァリー夫人』の話が出てくるのである。
そう言えば太宰にはフランス文学の引用、参照が意外?に多い、ということに
この度の再読では気づかされる。
で、「乞食学生」『太宰治全集』3巻、ちくま文庫、2001年(3刷)は、
もちろんヴィヨンが大事なモチーフになっていて引用もある。
けれども私の目を引くのは、これまたフロベールなのでありました。

「おい佐伯、その風呂敷包みは重くないか。僕が、かわりに持ってやろう。いいんだ、僕によこせ。よし来た。アル・テル・ナ・テ・ヴ・マン、と、知ってるかい? どっこいしょの、うんとこしょって意味なんだ。フロオベエルは、この言葉一つに、三箇月も苦心したんだぞ。」(427ページ)

「どっこいしょの、うんとこしょ」という意味かどうかはともかくも、
「若いひと」を書かせたら、実になんとも、太宰とサリンジャーは双璧である、と思う。