えとるた日記

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『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する

亀山郁夫『「カラマーゾフの兄弟」続編を空想する』光文社新書、2007年
これはすごい本で、限られた状況証拠を綿密に検証しながら、文字通り、書かれなかった
カラマーゾフ」の「第二の小説」の内容を推定してゆく様は見事なものだ。
俗に言う推理小説的面白さにも満ちているけれど、新訳を出したばかりの筆者の「第一の小説」
の深い読み込みこそが説得力をもたらしていることは、言うまでもない。
「残された骨片から恐竜の全体像を復元してみせる考古学者にも似たこの試みこそ、「第一の小説」、つまり現存する『カラマーゾフの兄弟』の、本質的な理解に近づくもっとも有効なアプローチのひとつではないか」(10-11ページ)
という言葉に深く納得する次第。それにしても各章の内容まで「空想」してしまうのだから
驚かされる。こんなの読んじゃったらぜひその新訳も読んでみたいと思わせられて、まあ悩ましいこと。