えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

フジタの猫

銀行の用事で烏丸四条へ。久し振りに来るとお店がいろいろ変わっている
ような気がするけど、しょせん私にはよく分からない。
ちょっとだけお小遣いが出たのでジュンク堂で奮発。
藤田嗣治画文集 猫の本』、講談社、2007年(10刷)
フジタの猫は少しも媚びておらず、とても気品があるところが
よいと思う。
ところでここに『腕一本』(1936)からの引用がある。それを孫引き。

乞食を描いても傑作は出来る、裏長屋の物干しを描いても名画に成る処に面白い処がある。吾等はいわゆる世の中の人がきたないという物を美しく見る方法を知っている。構図の面白さ、色の配合から物を見てもいいわけである。世間の人とは同じ見方で見ておらぬ。(『猫の本』、86頁)

美は対象にはなく、見る者の主観の内にある。
モーパッサンとまったく一緒だ。
主に印象派から後期印象派と呼ばれる画家達の理念と、モーパッサンのそれとは
比較するととてもよく似ているし、実際モーパッサン特有の描写のあり方は
印象派的と評されることが多い。モーパッサンはモネに会い、ゴッホモーパッサンを愛読した。
フジタは正しくそのフランス絵画の歴史の延長上に立っている、ということかもしれない
というようなことをなんとなく思ってみた。