えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

必聴!

採点をしつつ、

猫のやうに憂鬱な景色である
(「憂鬱な風景」『萩原朔太郎詩集』白凰社、1994年(8刷)、77頁)

とはどんな風景であろうかと考える。
ところで朔太郎と、「繰り返し」というかなんというかの表現にはこんなのもあるんだなあ。
「恐ろしく憂鬱なる」の冒頭より。

こんもりとした森の木立のなかで
いちめんに白い蝶類(てふるゐ)が飛んでゐる。
むらがる むらがりて飛びめぐる
てふ てふ てふ てふ てふ てふ てふ
みどりの葉のあつぼつたい隙間から
ぴか ぴか ぴか ぴかと光る そのちひさな鋭い翼
いつぱいに群がつてとびめぐる てふ てふ てふ てふ てふ てふ てふ てふ てふ
 てふ てふ てふ てふ
(同前、64頁)

この詩はまだ続くけれど、最後に注釈がある。

注。「てふ」「てふ」はチヨーチヨーと読むべからず。蝶の原音は「て・ふ」である。
蝶の翼の空気をうつ感覚を音韻に写したものである。
(同、66頁)

なるほど、なるほど。