えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

いつもながら感謝

なんだか教えてもらってばかりで
実にありがたいことです。
本日、Kさんに教えてもらったこと。
Le Livre なるビブリオ雑誌の
1880年によると、Revue alsacienne なる雑誌の5月号に、
Auguste Dietrich による "La Vénus de Braniza" の翻訳が載っている
というのである。
なんとまあ、よくそんなとこまで目を配っていらっしゃる。
でこのディートリッヒなる人は、後にショーペンハウエル
ノルダウの『退化』の翻訳で知られる人物であるそうな。
なるほど、なるほど。


しかし1880年て、ドイツ語版の作品集より前なんですけど、
雑誌から訳出したということなんでしょうか。
アルザスの雑誌に載るのは、分からないではない話ながら
しかしまあよく分からん。
ちなみに、"Récits de ghetto polonais II" とあるので
前を見ると、3月号に、
"Haman et Esther (idylle juive)" なる作品が訳されている。
はーはー。それって、1888年フランス語版『ユダヤ物語』中の
"Aman et Esther" ですか。これってマゾッホ自身の仏語作品らしい
んですが、自分で翻訳したということでしょうか。
にしてもやっぱり「ブラニザ」は入ってない
(古本屋さんを信用する限りはね)。


伝え聞くところではマゾッホは反ドイツ、親フランス親ユダヤ
という人だったらしいので、彼がフランスで結構翻訳されたの
にはその変の事情も絡んでいるように思われる。
(件のクラフト=エビングによるマゾヒズム命名論文は1886年
70、80年代のフランスにおけるマゾッホ評価は
これとは関係ないものと思うべきであろう。レジオン・ドヌール貰ってるし。)
にしても何だか茫洋としてますなあ。


ついでに思うのは、いっそ仏訳じゃなくて英訳が存在してれば
話が早いんじゃなかろうか、ということで、
ブリティッシュ・ライブラリーなんかを見てはみるものの
どうも独語及び仏語の作品集ばかりのようで、
イギリスにはマゾッホは流入しなかったのかもしれない。
とりあえず独語作品集の中身だけでも知りたいものながら、
これも今のとこ見つからないぽくて、
うーん、みんなもっとマゾッホ読もうぜ、とか思う。
40年で120冊から本を出したマゾッホの全貌は
どうやらまだ多くが未探索のようでもある。