ところでフランスの絵葉書には、著名人の名句を使った
シリーズがあって、私が見たことあるモーパッサンのは二つ。
ひとつは
Un baiser légal ne vaut jamais un baiser volé.
(« Confessions d'une femme » (1882), in Maupassant, Contes et nouvelles, Gallimard, Pléiade, t. I, 1974, p. 468.)
「合法的な接吻は、奪われた接吻に匹敵するものではない。」
これだ。そしてもひとつは
La tentation existe pour qu'on y cède.
であって、いわく「誘惑は屈するために存在する。」
いやーさすがは色男モーパッサン先生、言うことが違いますなあ。
というような紋切型の作家についてのイメージが、こんなところでも
再生産されている。
という話なんだけれども、しかしこの二つめの引用は
本当にモーパッサンのものなのか?
ということが前から気になっていたのをふと思い出す。
モーパッサンの著作をどんだけ探しても、少なくとも
この通りの言葉は見つからない(はずな)のだ。
インターネットで検索すると、やはりモーパッサンのものとしている
例が幾つかの他に、オスカー・ワイルドの名前も出てくるんだけど、
いずれも出典不明の様子である。うーむ。ワイルド?
どこかにご存知の方がいらしったら、どうぞお教えくださいませ。