えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

whilstとwhile

おもむろにデザインを元に戻しました。
こんなに広かったのね。


ビゲロー・スミス社1909年の版は、どっからどう見ても「食後叢書」そのまま
なのであるが、「食後叢書」で7巻の "The Man with the pink eyes" は、
ダンスタンと同じように"The Man with the blue eyes"となっている。
ま、誰でもピンクって何やねん、と思うであろうものではあるが、
そういう修正というか校正というか推敲というか、そのどれでもないような
手が加わってはいるのであった。
「食後」はロンドン出版ゆえか、while ではなく whilst が使われている。
これまたダンスタンも、スミスの版も while になっていて、
ふーん、そういうものなのね、と納得はする。
スミスの版がダンスタンも参照した、というのはないではない話かもしれないが、
そんな徒労感溢れる仕事をするぐらいなら、仏語原文探すだろう。
要するに、スミスの版も「食後叢書」そのままでは、必ずしもない。
ダンスタンの方については、引き続き検討を要する点ありで。


ついでなので芥川龍之介について一言。
文芸的な、余りに文芸的な」の「五 滋賀直哉氏」の中で彼が名を挙げている
「ラルティスト」(?)という作品名。彼はもちろん英訳で読んだのだけど
仏題はこうだろう、ということでわざと「ラルティスト」と記したのだろう。
(?)の意味はそういうことだと思うが、こういう書き方をしてしまうところが
いかにも芥川らしい、ように感じたりする。それはそうと、
「食後叢書」4巻では "An Artist" であり、ダンスタン1巻では "The Artist" である。
もしも「食後」で読んでいたら、芥川は「アンナルティスト」(?)と書いただろうか。
まさかね。
(だから、これは芥川が読んだ版の特定には使えない。)
ところで、これのオリジナルは Jean Richepin, "Artiste", in Truandailles, Charpentier, 1890
(ガリカのでは1891年)であり、つまりはただの「アルティスト」だったのだな。
ま、だからどうしたということもまるでない小話でした。