えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

英訳について幾つかの発見

また初心に帰って、Webcatを見ていて発見した3点。
まず「食後叢書」こと The After-Dinner Series に、『ベラミ』も翻訳されて
いたということ。所蔵は1館のみ。出版年不明。翻訳者は不記載。
たぶん表題は A Ladies' man
それから同じ「食後叢書」。
Jean Richepin, Celebrated courtezans, translated by Robert Whitling, London, Mathieson, coll. "The After-Dinner series", n. d.
なんということ! Whitling なる人物はリシュパンを訳していたのである。これは、
Jean Richepin, Grandes Amoureuses, Charpentier, 1896.
の翻訳ではないかと推察するのだけれど、だとすると、
Dalila, Judith, La Belle Hélène, Sappho, Laïs, Phryné, Poppée,
Baudvilde, Vittoria Colonna, La Périne, Sophie Monnier
について綴った評伝集みたいな本。『遊女列伝』てとこですか。ブラントームみたいだ。
ということはともかくとして、
あんたはリシュパンちゃんと訳しておいてからに、別んとこでは偽作として混ぜとったんかい。
どこまでいい根性をしているのだろうか。
それからもう一件。今度はダンスタンがらみ。
The Complete Short Stories of Guy de Maupassant, ten volumes in one, New York, P. F. Collier & son, c1903.
これも所蔵は1件のみ。ただしアメリカでは古書店にごろごろしている。
で、これのコピーライトがまたしても Walter Dunne なのであり、
件の17巻本から短編だけを抜き出して集めた本のようだ。
これがほんまに1903年に出たかどうか疑いがあり、どれほど日本に入って
きたかは分からないが、まったくもって次から次にと、一粒で何度おいしかったのか。
それにしても困ったことには、「食後叢書」はまるで市場に出てこない。
紙質が粗悪で綴じ方も悪い廉価本の宿命なのか、あるいはもっぱら日本にのみ
普及したものなのか。惜しいことである。