えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

マゾッホ『社会のシルエット』

要点をかいつまむと、
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オーストリアの国立図書館のサイトで、次の本が電子化(画像)されている。
Leopold Ritter von Sacher-Masoch, Soziale Schattenbilder, Aus den Memoiren eines österreichischen Polizeibeamten, Halle, Gesenius, 1873.
ザッヘル=マゾッホ著『社会のシルエット、オーストリアの一警察官の手記より』ですか。
一括ダウンロードのできない(ぽい)とこが恨めしいが、幸い目次はすぐに見れて、
そこに問題の作品名が散見されますよ、というお話。
ふーむ、さようでござったか。実にまあよい勘をされている。
なるほどと思って見てみてびっくり。
ドイツ語圏では1870年代にまだこんな活字を使っていたとは知らなかった。
正直言って読まれへん。
というわけで辞書を引き引き苦節三時間。以下目次。
便宜上、先日のリストの番号、および「食後叢書」、ダンスタンの巻数を記す。
(読み取り間違い、および誤解の可能性を否定しません。見つけたら教えてください。)

1. Ein exotischer Prinz エキゾチックな王子 (31. An Exotic Prince [5, 3])
2. Das Alibi als Verräther 裏切り者としてのアリバイ
3. Delila デリラ (34. Delila [5, 3])
4. Polnische Emissäre ポーランドの密偵
5. Eine Mesalliance 不釣り合いな結婚 (35. A Mesalliance [5, 3])
6. Eine militärische Diebsbande 軍隊の強盗
7. Onze et demi 11と半分(題のみフランス語、活字も違う)
8. Polizei und Gensdarmerie 警察と地方警察
9. Ein Mord in den Karpathen カルパチアの殺人
10. Gespenster der Kirche 教会の幽霊 (26. Ghosts [5, 3])
11. Eine Damenverschwörung 女の陰謀
12. Eine Smichower Odaliske (58. The Odalisque of Senichou [8, 4])
13. Der entlarvte Aristokrat 暴かれた貴族
14. Ein interssantes Duell 興味深い決闘
15. Die schöne Marketenderin 美しいマルケテンデリン
16. Politische Hinrichtungen 政治的処刑
17. Das letzte Rendezvous 最後のランデヴー
18. Vormärzliches
19. Der verhängnisvolle Jockey 不吉なジョッキー (30. The Ill-Omened Groom [5, 3])
20. Der wahnsinnige Graf 狂った伯爵
21. Karpathenräuber カルパチアの盗賊
22. Fastnacht und Aschermittwoch 謝肉祭と灰の水曜日
23. Ein Demokrat im Bauernkittel 農民の姿をした民主主義者
24. Eine verspätete Denunciation 遅れた密告
25. Eine Spielhölle in Wien ウィーンのカジノ
26. Das Todesurtheil einer Frau ある女の処刑判決

幾つか解読不明なままのものもあって情けないが、それはそれとして
Kさんのご指摘は括弧内に英題を記した都合6編。
それ以外は該当しないと私も思う。
ま、ザッヘル=マゾッホだということ自体は予測範囲内ではあり、
他にもまだ10編くらい胡散臭いものがあるのではあるが、
やはり「オダリスク」よ、お前もか。としみじみ思う(でも地名が分からへん)。
というのは、ザッヘル=マゾッホの作品にはとにかくやたらに毛皮と鞭が頻出するのだ。
なことはともかく。
"Silhuettes sociales" という仏訳作品集が1890年頃に出ていたりするはずもなく、
問題はこの1873年ドイツ語の本が、どこを通ってモーパッサン英訳にたどり着いたか
である。選択肢は三つ。
1 ウイットリングなる人物がドイツ語から訳した。
2 フランス語訳作品集からとってきた。
3 英訳作品集からとってきた。
それとは別にオーストリア国立図書館もまだ調べる余地があるのであるが、
いやさほんまに読まれへんのよねあの活字。溜息でるわあ。
まいどながらKさんにはお礼申し上げる次第です。