えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

何事も勢い

ルネ・メズロワづいたので、勢いで訳す。
モーパッサン ルネ・メズロワ著『向こう見ずな女達!』序文
1883年『向こう見ずな女達!』(Celles qui osent ! の訳のつもり)の序文
として書かれたもの。元気な頃のジャーナリスト(というかエッセイスト)モーパッサンらしさ
がよくもわるくもよく出た文章で。今となっては「男って馬鹿」とか言われかねませんか。
まあ、そうかもしれぬ。ただ、ジャーナリスト・モーパッサンはある程度意図的に
こういう色男兼道楽者兼ニヒリスト、みたいなポーズを取っている、と私は思う。
小説の作者は「隠れて」いるけど、時評文では「素の」作家が顔を出している
というのが、この手の文章についてよく言われる言い方なのだけれど、
それほど単純なものでもないのではなかろうか、という気もする。
その点で大事なのは、モーパッサンが「ジル・ブラース」に用いたモーフリニューズの筆名で
「ゴーロワ」の実名ギ・ド・モーパッサンと「モーフリニューズ」の使い分けは、ただ単に
競合紙に同名で書くのがはばかられただけ、という単純なものではない。というか
最初はそうだったかもしれなくても、モーパッサンは「陽気なゴーロワ野郎モーフリニューズ」
という自らの分身キャラクターを作り上げていく、というプロセスがあるような気がする。
筆名の効果とは、そのようなものではなかろうか。
ま、このメズロワ序文はもろに「モーパッサン」の署名ではあるのだけれども、
そういうのって、うまくすると論文一本書けるネタよね、と思っていたのを
ついでに思い出したので。
毎度のように、全国の皆様に乞うご一読。これは面白いと、期待してます。