えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

三月ぶりの翻訳

おやもう三か月も経ってしもたのか。ということで、
今日は仕事がお休みだったので翻訳する。リンクの表記法も忘れる始末。
モーパッサン 『戦争』
戦争は愚劣である、という一文。
フランスがベトナムに侵略していた真っ盛りに書かれたこの一文に、
1870年普仏戦争に一兵士として従軍したモーパッサンが何を体験したのかが
十分に窺われる。
ここでモーパッサンは政治上の現実をあからさまに捨象し、これを一大臣の気まぐれと
貶めることで切って捨てる一方、兵士の直面する現実をこれでもかと並べ立て、
読者の感情を鷲掴みにする。実にレトリカルな一文であって、そこに
ジャーナリスト・モーパッサンの力量を見たい。
モーパッサンの批判する「戦争」を、現今の世界中の紛争と、単純に同一視することはできない
にしても、そこで繰り返されていることは、結局のところ変わりはしまい。
戦争が死滅する日がやがて来るだろう、とここでモーパッサンは記したけれど、
5年後に『水の上』に同じ文章が取り込まれた際には、そんな日はやって来ないだろう、と
改められる。その間に清仏戦争があり、1887年にベトナムはフランスの保護領となった。
つまるところ、私がモーパッサンを信用するのは、彼がこういう文章を残しているからだ。
死ぬ前に翻訳しておきたかったものの一つ。ぜひご一読ください。