えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

愛欲の街

ようやく読了。
金子光晴、『ねむれ巴里』、中公文庫、1976年初版、2005年改版
なんともいえぬ力の溢れる回想録。独特の文体にしびれる。
愛欲の蠢くパリの街のイメージがなんとも鮮烈であるけれど、これが書かれたのは
四十年以上も経た後のことで、著者は70を過ぎていたということに一層驚く。
いつ妻に捨てられるかも分からないということの不安というか諦めというか
なんとも屈折した感情が底にあることで、先行きの見えないどん底の生活に
一層すごみみたいなものが加味されているのだけれど、そういえば
「美しい妻を持つことは地獄である」というのはシェークスピアでありましたか。