えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

偽作の出所(7)補足あれこれ

いろいろあって大変。
まず、リシュパンから。Kさん見てますか〜?
Jean Richepin, Truandailles, Charpentier, 1890.
の内、
"Pouillards"が、7 "The Clown"( 4, 2)
"Ch'tiote"が、8 "Babette" (4, 1)
の元であったことを、遅まきながら確認する。
ついで、同じリシュパン
Jean Richepin, Cauchemars, Charpentier, 1892.
の、
"Correspondances"が、9 "Sympathy" (4, 5)でありました。
タイトルが大きく変わっていたために見落としていたのが以上3点。


そして同じくジャン・リシュパン。なんと、
Jean Richepin, Les Morts bizarres, Decaux, 1876 (Ed. définitive: Dreyfous, 1883).
の中の、
"La Uhlane"が、46 "The Lancer's wife" (6, 14)だったのである。
普仏戦争時のフランス東部が舞台なので、お前もさてはリシュパンだな、と探していて発見。
モーパッサンは原則的にほとんどノルマンディーが舞台。)
『奇妙な死者たち』は1890年にもたぶん再版がある。元はそれか。


ということでなんのことはなく、見落としリシュパンが計4点。
これで原作未特定は残り2編となる。


そこで次。本日届いた本。まだ懲りずに注文してしまった一品。
René Maizeroy, Sur l'amour et sur le baiser, Lemerre, 1894.
(『愛と接吻について』なんちゅうタイトル。さすがメズロワ)この中で一編だけ、
"Sous le joug", p. 171-181.が、49 "Under the Yoke" (7, 4)の元でありました。
当たってるのか、外れたのかよく分からん。


そして最後に残った1編は、4 "The Mountebanks" (4, 1)だ。
舞台はフランス。リシュパンはLa Miseloque, Charpentier, 1892
に該当するものがなければ(ガリカで確認できる)、他にはもうありえない。
ということは、もうルネ・メズロワ以外であるはずもない。
改めてあれこれ見直していて、ついに見っけたのが、これだ。ちなみに、これもガリカ。
René Maizeroy, Celles qu'on aime, Ollendorff, 1883.
(『愛される女たち』しかしまあ一貫している)これの冒頭、
"Les Monteflore", p. 1-13.が、まさしく"The Mountebanks"であった。


かくして、ついに、少なくとも原作が何であったかは、一応確定したといって
大丈夫だろう。(なんだか留保が多いけど。)すなわち、
ジャン・リシュパン、3冊、20編
ルネ・メズロワ、6冊、28編
ザッヘル=マゾッホ、(ドイツ語)4冊、18編
計66編が、モーパッサン英訳に紛れ込んだ偽作の正体だったのである。
うーん、嬉しい。


メズロワのばらけた3編は、他の作品集に入っている可能性はまだ否定できないが、
1冊の内から3編だけ取る、というのもやっぱり訳が分からん、ような気もする。
ザッヘル=マゾッホに関しては、当時出た仏訳作品集は、どうも可能性が低いように見えて、
これがいまだによく分からない。
なにはともあれ、ひとまずはめでたいことであった。