えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

インドへの道

E・M・フォースター、『インドへの道』、瀬尾裕 訳、ちくま文庫、2004年(4刷)
とりわけ前半は映画が原作にかなり忠実であったようで、
原作を読みながら映画を追いかけてるようで、これは順番まちがえたかもしれぬ。
それはそうとして、
西洋人に捉えることのできない「インド」をそれでも捉えようとする試みそのものが
記述されているような作品という印象。たいへん読み応えある小説を久し振りに読んだ。
フィールディングとアジズに「イギリス」と「インド」がとりあえず代表されるとすれば
両者に永続的な和解の訪れることのないのは、彼らが支配者と被支配者の関係にあるからだ、
と言ってしまえばそれまでではある。ではその関係は変わりうるものなのか、
あるいは変わりうべきものであるとして、作品の中に提示されているかどうかと言えば、
フォースターの筆はそこに及ぶことがないように見える。
小説家は問題を政治化することを拒んで当然である、といえるのかもしれないが、同時に、
沈黙も一つの答であると、考えることもできなくはない。
サイードがこの小説に一定の理解を示しながら、それでも評価に留保を付けるのは、
そのあたりのことと関係があるだろう。
宿題は、アデラに訪れたエコーとは何だったのかを言語化すること。
それから、映画をもう一度見直したいと思う。