えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

戦場にかける橋

The Bridge on the river Kwai, 1957
『チート』の早川雪州がかように恰幅のよいおじさんになるものなのかと感慨ふかい。
彼は英語があまり上手でなく、それなのにスター風吹かしていて顰蹙を買い、
監督のデヴィッド・リーンが怒った、という話がなんとももの悲しい。
史実と照らしてどうなのか、という議論は当然のように避けられないところながら、
つまるところは、DVD所収ライナーノートの増當竜也さんの言葉が簡にして要を得ていよう。

 やはり、すべては"Madness"なのだ。その意味で本作は泰緬鉄道建設の"事実"ではなく、戦争そのものの"真実"を追及し得た名作として、これからも語り継がれていくことだろう。

私としてはあの結末はどうだったのかと思わないではない。
「橋を爆破する」ということが既に決まっていたのであれば、普通に考えれば
ニコルソン大佐(アレック・ギネス)がイギリス軍人としての職務を全うする
という結末に持っていくであろう。そこで監督が最後まで迷ったとすれば、
大佐個人の誇りとか信念というものを無下にしたくなかったのであろうし、
そのことは十分に理解できる。しかし、どうなのか。
ところで、組織とか職務が命の日本人と、個人の尊厳第一の欧米人という対比は、
そのまま後年の『ガン・ホー』にまで直結しうるという点を指摘してもよろしいか。
なんのことはなく、それが『菊と刀』以来変わることない一つの「日本人」像という
ことなんだろう。あまりに簡単にまとまってしまって我ながら愕然とするが、
本当にそういうことでいいのかな。