えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

アラビアのロレンス

Lawrence of Arabia, 1962
いわずと知れたデヴィッド・リーン監督。
はじめて全部観ました227分。なんというか達成感。
この映画が史実をまったく無視した「お話」であるということをよくよく肝に銘じた上で、
それでも見応え十分なのは、なんといっても実写の力でありましょう。
で、この「お話」は何なのかということを考えてみると、
本作の「ロレンス」とは、自分の力を過剰なまでに信じて、一たびは奇跡を成し遂げるも、
目の前で死にゆく者を見た後、自分の限界と無力さを知らされ、
ついには自ら殺戮に我を忘れ、政争に翻弄された挙句、
最後はほとんど廃人みたいな姿で戦場を去っていく、そういう男である。
彼を英雄と呼ぶにはあまりに汚れている(がまあ、英雄つうのは汚れてるもんか)。
だからここでデヴィッド・リーンが描いているものとは、
これも一つの戦争のもたらす「狂気」なのであって、
そう考えると、『戦場にかける橋』との繋がりが見えてくるのではないかと
そういう風に思ったのでした。