えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

グランヴィル

『動物の私的・公的生活情景』(1842)のお話。


最近読んだ本をまとめて挙げて備忘にする。


付け焼刃関連。
藤原帰一編、『テロ後 世界はどう変わったか』、岩波新書、2003年(2刷)
は再読。
小杉泰、『イスラームとは何か その宗教・社会・文化』、講談社現代新書、2009年(26刷)
いい本だなあ、と思ったら、やっぱり売れてるのですね。
田中宏、『在日外国人 新版 ―法の壁、心の溝―』、岩波新書、2008年(23刷)
福岡安則、『在日韓国・朝鮮人 若い世代のアイデンティティ』、中公新書、2008年(15版)
知らないことばっかり。
J.V.ネウストプニー、『外国人とのコミュニケーション』、岩波新書、2006年(37刷)
留学前に読んでおくべし、か。


フランスのミステリ3冊。
マルセル・F・ラントーム、『騙し絵』、平岡敦訳、創元推理文庫、2009年
「幻の仏本格ミステリ登場!」という帯に負ける。いかにもマニアさんの作品。
ガストン・ルルー、『黄色い部屋の謎』、宮崎嶺雄訳、創元推理文庫、2008年(新版)
買い置きの一冊。1907年作。なるほど本格物の古典の名にふさわしい。
ガストン・ルルー、『黒衣婦人の香り』、石川湧訳、創元推理文庫、1997年(13版)
続きものなので読まなしゃあないながら、前作には及ばないという、これも評判通りかと。大仰だ。


珍しく今時ものとして
吉田修一、『パーク・ライフ』、文春文庫、2005年(5刷)
所収の「flowers」のほうが迫力あって、個人的には良い。
今年はチェーホフと縁があった。
チェーホフ、『カシタンカ・ねむい』、神西清訳、岩波文庫、2008年
「カシタンカ」は犬のお話。チェーホフはなんでも書けちゃった人かもしれない。
最後に1冊。
岡田暁生、『音楽の聴き方 聴く型と趣味を語る言葉』、中公新書、2009年(3版)
音楽を聴くとはどういうことか、という問いをちゃんと正しく追いかけたら、
こんなに興味深く面白い本ができる。
「本を読む」にも「映画を観る」にも応用可能な部分は多し。「読む」のは技術だ。


あらためて最後に、
モーパッサン短篇集』、山田登世子編訳、ちくま文庫、2009年
これについてはちゃんと書こうと思っているのだけど、
後回しになってずるずるほったらかしてしまった。
これまで数多編まれてきた「モーパッサン短編集」の中で、これは
恐らく、初めて女性が編集したものではないかと思うのだけど、
そのことはなかなか感慨深い。
もっとも、いたずらに「女性らしい」選択を求めたいわけではないのではあるけれど。
「首飾り」と「宝石」がセットになっているところと、
モーパッサンにはきわめて珍しい「死せる女」が入っているとこと、
いろいろ良いところがある。まあ幻想ものはもういいじゃん、と
思わないことはなくもないのと、農民ものが入っていない、という点は特徴的だなあ。
モーパッサンにしか書けない艶笑譚として「森のなか」や「オンドリが鳴いたのよ」
が入っているのもよろしいところで、さて、個人的にこの中から一編となると、
やはり「ミス・ハリエット」になるだろうか。たぶんこの中で一番長い作品で、
それはつまり、作者の気合いの入った作品ということでもある。
モーパッサンの特色がぜんぶ詰まったようなこの一編、
書かれたのが1883年7月だから、前期モーパッサンの一つの頂点を成すといってもよかろう。
ノルマンディーを舞台にしたイギリス女性の悲恋の物語は、
読みようによって悲劇とも喜劇ともとれるもので、人生の残酷さが印象深い。
加えて「印象派画家」としてのモーパッサンの筆も味わいどころで、
リリシズム溢れる海辺の描写が素晴らしい、と。
ちなみに挿絵はアルバン・ミシェル(=オランドルフ)版。
というわけで、勝手ながら売れてけろ、と思うのでありました。