The Syrian Bride, 2004
エラン・リクリス監督。
イスラエル占領下のゴラン高原のある村。「無国籍」の花嫁モナは
軍事境界線の向こうのシリアに住む男性に嫁ぐのだけど、
一たび境界線を越えたらシリア国籍になって、戻ってくることはできない、
その結婚式当日の半日を描いた作品。
イスラエルとフランスとドイツの合作で、
アラビア語とヘブライ語に加え、英語とロシア語とフランス語までおまけに飛び交う。
ロシア人と結婚して勘当されて8年ぶりに帰国した長兄と
イタリアでビジネスをしている次兄と
夫との仲の冷え切った、自立志向の姉と
親シリア派で投獄経験もあるお父さんと、
家族を見守るお母さん。
筋らしい筋があるわけでもないながら、それぞれの人物がよく描けていて
この地に住む人たちの暮らしぶりと生き様がしっかり観てとれて、
うむうむ、これは評判どうりに善い作品であった。
わけても、お姉さんアマル役のヒアム・アッバスが抜群に恰好いい。
つまるところ、男というのはどうしようもない、という話なのかねこれは。
主義とか信条とか伝統とかそういうものに縛られておらずに
境界を越えてゆくべし。
そういえば、今年読んだ中で良いなあと思ったこの台詞。
いつか、俺が国境線を消してやるよ。
(金城一紀、『GO』、角川文庫、2007年、215頁)
異文化交流を是とする立場に立つなら、この台詞がとどめをさす、
ということになるのではないかと思いながら、下半期も終わらんとする(終わってないけど)2009年末。
ではでは、皆様どうぞよいお年をお迎えください。