えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

動物農場

ジョージ・オーウェル、『動物農場』、高畠文夫 訳、角川文庫、2010年(57版)
いわずとしれた傑作寓話。独裁的権力の見事な諷刺。豚のナポレオン。
馬のボクサーがことのほか哀れであった。
これも周知のことながら、他に3編の掌編が付されていて、その中でも
「象を射つ」はとくに印象深い。
ビルマで警察官をしていたオーウェルは、さかりがついて暴れた象を
その必要もないながら、その場の雰囲気で射殺することを余儀なくされる。

ここに、銃を手にした白人のわたしが、武器ひとつ持たない土民の群衆の前に立っている――なるほど、見た目には、たしかにこの事件の立て役者だ。しかし、本当をいえば、わたしは、背後に控えている、この黄色い顔の連中の意志によって、あちらこちらへ振り回されている、間の抜けたあやつり人形にすぎないのだ。わたしは、このとき、白人が圧制者となるとき、彼が破壊するのは、自分自身の自由なのだ、ということに気がついた。つまり、彼は、一種の間の抜けた、見せかけだけのでくの坊、いいかえれば、白人旦那(サーヒブ)という、あのおきまりの人形になりさがるのだ。というのは、彼が一生涯かかって、「土民ども」を感服させることが白人支配の条件である以上、まさかのときには、いつでも、その「土民」どもが自分に期待することを、してやらないわけにはいかないからである。たとえ大きすぎて顔に合わない仮面でも、かぶっているうちに、やがて顔の方が大きくなって、それにぴったりと合うようになるのだ。(160頁)

ここにオーウェルは「帝国主義というものの本質――専制政治というものを動かす真の動機」(154頁)を見出す。
30年代にこういう意識を持っていた人もいたのだ、
ということをしみじみと思いました。
うまく言葉にならないので、それだけで。