えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

身辺整理

ガニマール警部は Sapristi(ちぇっ)とか言うているが、
これはsacristiから転じたもの。こういうのは今でも言うのか。
それにしても、Ganimard というのは、いかにも耳障りな音であることだ。


それはそうと身辺整理。文字通り半径1メートルぐらいの身の回り。
米原万里、『魔女の1ダース』、新潮文庫、2009年(17刷)
――『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』、角川文庫、2009年(13版)
これは本当に素晴らしい本。
60年代にプラハソビエト学校で過ごした著者が、当時の3人の友人
ギリシャルーマニア、(旧)ユーゴスラビア)の思い出を綴り、
その語数十年を経ての再会を語ることをとおして、
中東欧の激動の歴史が具体的に浮かび上がってくる。
いい面いやな面ひっくるめて友人達のありようを受け入れる著者の姿勢に揺れがなく、
結果的に見事な文学作品に仕上がっています。
――、『ガセネッタ&シモネッタ』、文春文庫、2009年(15刷)
――『ロシアは今日も荒れ模様』、講談社文庫、2009年(20刷)
これの第1章「酒を飲むにもほどがある」はすごく笑える。ロシア人すげえ。
――『パンツの面目 ふんどしの沽券』、ちくま文庫、2009年(7刷)
下着の文化史は奥が深い。
ロンブ・カトー、『わたしの外国語学習法』、米原万里 訳、ちくま学芸文庫、2010年(15刷)
25年で16ヶ国語身に付けた著者の外国語学習論。
興味があり、時間さえかければ、外国語は身につく、と。


なぜかこんな本も読んだ。
小池昌代、『タタド』、新潮文庫、2010年
川上弘美、『センセイの鞄』、新潮文庫、2010年(3刷)


これは大変良いお仕事。
『翻訳家列伝101』、小谷野敦 編著、新書館、2009年
とりあえず「フランス文学の翻訳家」のところだけ読む。
三ツ野陽介さんのお名前も記して、敬意を表したい。


これは見つけて嬉しかった。
吉野朔実、『こんな映画が、』、河出文庫、2008年
――『シネコン111』、エクスナレッジ、2008年
実にたくさんの映画が出てきて、観たくなったものが山ほどあって大変。
どんな作品も分け隔てなく取り上げてあって、映画に対する愛情が感じ取れる好著です。
イラストとのコンビネーションも絶妙。


ところで、
フローベール、『三つの物語』、山田九朗 訳、岩波文庫、1940年(1刷)、2010年(29刷)
がリクエスト復刊してるのには驚いた。おもいっきし旧字体
私は思うのですが、せめてもう一度組みなおして新字体にして出す、というぐらいのことは
できませんか。
岩波書店は近来、日本近代文学漱石、芥川、荷風等)の新版の全集をぜんぶ新字体で出すという
信じがたい愚挙をかましており、この暴挙を私は絶対に許さないけれど、
それとこれとは話が違うのであって、
今さら山田九朗訳で、若い人がフロベールに関心を持ってくれる
というようなことが期待できるのだろうか。いやまあ、期待はしたいけれどさあ。
もちろん手軽に読めるだけでも、ありがたいのではあるのだけれどね。
『三つの物語』の素晴らしさについては、いつかしっかり言葉にしたい。
凝縮された美の極致であって、これこそがダイヤの結晶。
これ以上に密度の濃い文学作品は、おそらく他に例があるまい。


ところで、前から思っていることですが、
Rimbaud がランボーで、Baudelaire がボードレールで、Chateaubriand がシャトーブリアンで、
Rousseau がルソーで、おまけに Maupassant がモーパッサンだったら、
Flaubert はフローベールだろう、と言われると返す言葉がないのであるけども、
しかし、なんでだろうか、フロ「ー」ベールは、なんか嫌なんだな、これが。
うーむ、我ながら、何故だか説明できん。