えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

ザッヘル=マゾッホ追記

種村季弘、『ザッヘル=マゾッホの世界』、平凡社ライブラリー、2004年
を改めて見返したら、「マゾッホ文献について」の341頁に、
木村毅訳について書かれており、おまけに「カテリナ二世」についての逸話、
私の引用したのと同じとこが引用されておるではないか。
ううむ。読んだはずなのに。失礼つかまつった。


そこには挙がっていないが、フランスでちゃんとした伝記が出ている、というお話。
Bernard Michel, Sacher-Masoch 1836-1895, Laffont, coll. "Les Hommes et l'histoire", 1989.
とりあえず70年代のとこだけ読むが、
こんなことしてるうちにマゾヒズムに開眼してしまったらどうしよう。
目下の私の関心にひっかかるのは、この個所。

Dans la carrière littéraire de Leopld, les années 1872-1878 sont surtout tournées vers des publications faciles, destinées au grand public. Désormais, c'est cette production de masse qui lui assurera les moyens financiers nécessaires à sa vie quotidienne. (...) En 1872, un roman anticlérical contre les jésuites, Pour la gloire de Dieu, n'a qu'un succès limité. En revanche, en 1873, il publie deux recueils de nouvelles qui passionnent les lecteurs: La Fausse Hermine. Petites histoires du monde de la scène, sur la vie des actrices; et Les Messarines de Vienne. Histoires de la bonne société, sur les turpitudes des grandes dames.(p. 202)
レオポルドの文学的経歴において、1872―1878年は、とりわけ大衆向けの安易な作品に流れた時期である。以降、こうした大衆向けの作品制作が、日常生活に必要な経費を賄う手段となる。(中略)1872年、イエズス会に反対する反教権主義的長編小説『神の栄光のために』は限られた成功しか得られなかった。反対に、1873年に彼は二冊の小説集を出版し、読者を熱狂させた。女優の生活を語った『偽のアーミン 演劇界の小話』と、貴婦人の実態を暴く『ウィーンのメッサリーナ達 上流社会の物語』である。

その二冊の内の幾編かが、偽作としてモーパッサン英訳に流れ込むのであるが、
それはちょうどザッヘル=マゾッホが亡くなった直後のこととなるのだった。
それにしても、たとえ反響があったにせよ、やはり「大衆向けの安易な作品」であったか。
その通りだとは思うが、しかしまあ、よりにもよったものではあった。