えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

異邦の香り

野崎歓、『異邦の香り―ネルヴァル『東方紀行』論』、講談社、2010年
事情があって二日で急ぎ読む。
『東方紀行』を読み進めながら、面白いところを拾い上げていく手つきはお手の物で、
ところどころ、アルトーやジュネといった20世紀作家と繋げるところもまったく妥当で、
ネルヴァルの秘めていた新しさをよく明らかにしてみせる上に、
ドルーズ派や、フリーメーソンとの関わりのような、
10年前に翻訳読んだ時には訳の分からなかった事情も明快に説かれているし、
「カリフ・ハーキムの物語」と「朝の女王と精霊たちの王ソリマンの物語」という
作中に挿入される二大物語について、ネルヴァルの詩学との関連で読むくだりに
なるほどそういうことでもあったかと納得する。
これを読むと『東方紀行』をきっと読みたくなるに違いない、という点で、
(で実際に読むとあまりの歯ごたえにびびったりするのだけれど)
つまりはこれは予想以上に良書であった。うむ。
これを機に、
ちくま文庫あたりで(全集の訳があるし)『東方紀行』が出たらすごくいいと思います。