The Secret Life of Words, 2005
イサベル・コイシェ監督。サラ・ポーリー、ティム・ロビンス主演。
イギリスの工場で働くハンナは、勤勉すぎるからと強制的に休暇を取らされ、
旅先(たぶん北アイルランド)で、偶然に、海上の油田掘削所に看護婦として赴くことになる。
患者は、火災事故でやけどを負って、一時的に目の見えないジョゼフ。
掘削所には、社会から身を引いた孤独な男達が寄り集い、
彼らと交流する中で、ハンナは少しずつ心を開いていき、
やがてジョゼフにむかって自らの過去を打ち明ける。
クロアチアの看護学生だった彼女は、戦火の中、友人達と故郷に帰った時に・・・。
深く傷ついた者にも、回復の道はあるのか。
あるとすれば、それはどのようにしてなされうるのか。
そういう問いに、監督は肯定的に答えを見出そうとしているのだと思う。
ユーゴ紛争に関係する作品を探していてこの映画に出会った私には、
ハンナの告白は予想どうりのものだったのであって、
そして、とても良心的であざといところのない作品だと思うのだけれど、
でもここでは、ユーゴ紛争は「およそ考えられる最悪の事態」という以上の意味を持たないので、
その個別性のようなものが希薄なのが少しばかり気にかかる。
戦争とは、常に同じような結果をもたらすものなのかもしれないので、
それはたいしたことではないかもしれない。
スペイン人の監督がアイルランドを舞台にクロアチア人について語ること。
実体験の裏打ちがなければフィクションに力がないとは信じたくはない。
しかしまあ、『サラエボの花』と『ライフ・イズ・ミラクル』の後であれば、
そんなことを思ってしまうのも仕方はないかと。