えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

亀も空を飛ぶ

Kûsiyan jî dikarin bifirin, 2004
クルド語が読めるはずもないので、あってるかどうか分かりませんが。
バフマン・ゴバティ監督。
さしもの私も、何を好き好んで重たい映画ばかり観ているのかと
自問してしまうが(カタルシスというものがまるでない)、
しかし、これまた凄い映画を観てしもた。
2003年春、イラク北部クルディスタンの小さな村で、
サテライトと呼ばれる少年は、衛星放送のアンテナ設置を請け負ったり、
子供たちを指揮して地雷を掘り出したりしている。
出てくる子供達のタフさは見事なものであるけれど、
サテライトが恋する相手は、難民として逃れてきた少女で、
彼女は目の見えない子を背負っていて、彼女の兄には両腕がない。
その子供は、イラク人の兵士にレイプされて出来た子で、彼女はうまく愛することができない。
戦火に生きる子供達の姿を強烈に印象づける凄い作品です。

 映画館を出れば地雷も化学兵器も無い国で、しかし一時本当に辛い気持ちになるのも豊かな国の特権と言えるでしょう。
吉野朔実、『シネコン111 吉野朔実のシネマガイド』、エクスナレッジ、2008年、141頁)

こう書ける人は強いと思う。惰弱な私は、なんてもん観ちまったんだよう、と
ひたすら悶絶するばかりなのである。