えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

ようやく一息

たいそうご無沙汰してもう忘れられてしもうたかしら。
はや年末。
ここ数週間の付け焼刃、というかもはや必要ないのに読んだ本の羅列。
宮田律、『物語 イランの歴史 誇り高きペルシアの系譜』、中公新書、2002年
春日孝之、『イランはこれからどうなるのか 「イスラム大国」の真実』、新潮新書、2010年
上が学者、下がジャーナリストの手になるもので、二冊足していい塩梅か。
さはさりながら、現場を踏んでるジャーナリストの面目躍如の後者は、
イスラム革命から30年、理念と現実が乖離する今のイランの実情をよく語っていて納得。
前田高行、『アラブの大富豪』、新潮新書、2010年
これは純粋に好奇心で手に取った本。
いやもう、アラブの大富豪の家に生まれたかったわあ、と思ってしまいました。
三井美奈、『イスラエル ユダヤパワーの源泉』、新潮新書、2010年
国末憲人、『自爆テロリストの正体』、新潮新書、2005年
広河隆一、『パレスチナ 新版』、岩波新書、2002年(2009年13刷)
このあたり『パラダイス・ナウ』観るための準備のつもりで読むが、
しかし『パラダイス・ナウ』はもういいか、という状況に追い込まれる。あうー。
そういえば、『母たちの村』にあわせて読んだのが、
キャディ、『切除されて』、松本百合子訳、ヴィレッジブックス、2007年
セネガルに生まれて、7歳で性器切除を受け、13歳で結婚し、15歳でフランスに渡り、
二十歳そこそこで5人の子供を産み、うち1人を事故で亡くし、
暴力的な夫から別れて自立を勝ち取るまでの壮絶な戦い、という自叙伝。
いやもうもの凄いです。言葉をなくします。
年明けに向けて、ひとまず二冊。
鄭大均、『韓国のイメージ 戦後日本人の隣国観 増補版』、中公新書、1995年(2010年増補版)
クォン・ヨンソク、『「乾流」と「日流」 文化から読み解く日韓新時代』、NHKブックス、2010年
中国料理も韓国料理も大好きなのに、
だからといって本場に行ってみたいという欲望にさして駆られることもなく、
これまで生きてきたのは、一体なんでじゃろうか、と自問する。
それはそうとここ10年たらずの間に、韓国映画およびテレビドラマは
たくさん日本に入ってくるようになり、クォン・ヨンソクさんが興奮の内に語るごとく、
まこと隔世の感あり。
あんまり多すぎて、何から観ていいかまるで分りもはん。というわけで、
寺脇研、『韓国映画ベスト100 『JSA』から『グエムル』まで』、朝日新書、2007年
は大変ありがたい。これでも多すぎとか贅沢は言うまい。
勢いで購ってしまって、さすがの私も頭痛がするのだけれど、
キム・ミヒョン責任編集、『韓国映画史 開化期から開花期まで』、根元理恵訳、キネマ旬報社、2010年
こういう本まで出るようになって、まこと目出たいと申すべきでありましょう。


しかし、私は別にフランスが嫌いになったわけでは(たぶん)ないので、
いい加減フランス映画も観たくなってくる。
中条省平、『中条省平の「決定版!フランス映画200選」』、清流出版、2010年
これは買っておいて損のない本ですよ。
中条せんせいは褒め上手なのが良いところです。


先日、頂いてしまった本の紹介という名の御用記事。
『翻訳の地平―フランス編』、白百合女子大学言語・文学研究センター編、アウリオン叢書04、弘学社、2006年
『映画と文学』、白百合女子大学言語・文学研究センター編、アウリオン叢書08、弘学社、2010年
いずれの論考も、大変易しく平易な言葉で語られており、
図書館にぜひ入れてほしいコレクションでありましょう。
ここで特筆しておくべきは、『映画と文学』の中の、
野崎歓、「水に書かれた物語―ジャン・ルノワール『ピクニック』をめぐって」、65-77頁
これまた実に語り上手。
土屋宏之、「ジョン・フォードモーパッサン―映画『駅馬車』の系譜をたどる」、125-136頁
によると、『駅馬車』はそもそもはアーネスト・ヘイコックスの短編小説を元にしているのだけど、
フォード自身が、ヘイコックスはモーパッサンからヒントをもらったのだろう、
と述べているらしく、つまりジョン・フォードは『駅馬車』を撮るとき、
多少なりと「脂肪の塊」が意識にあっただろう、ということである。
なるほど、そうであったか、と。


デュラス/コクトー、『アガタ/声』、渡辺守章訳、光文社古典新訳文庫、2010年
は、こんなんまで出して偉いわねー、という一品でありましょう。
どちらもみごとな台詞劇なので、演出家を掻き立てるのはよく分かる。
三次元に立ちあげたものをぜひ観たかったと思いました。
ジュネ、『花のノートルダム』、中条省平訳、光文社古典新訳文庫、2010年
は、とりあえず購いましたが、いつか読めたらいいなあと思いますが、
そんな日がやって来る自信はまるでありませぬ。
おまけに、
アマゾンのDM見て思わず買ってしもうた本、
『フランス政府公式ガイド 最新フランス・ハンドブック』、宝利桃子訳、原書房、2010年
ま、お役所の刊行物なので、ほとんど教科書ですなあ。
はなから関心ある人には役立ちますが、
そうでない人に勧められるかというと、そこはかなり微妙であります。
そんなとこでしょうか。
失われた時を求めて』の新訳二つを読み比べて、
どっちがいいのか判定する!
というような仏文学生らしいことをしたいのだけれど、
それはもう遠い夢のように思われるこの頃です。