えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

走破

29日マラルメ。「一振りのサイコロ」も実ははや佳境に突入しつつ、いよいよ混迷。
まだ読み方がよく分かっていない気がする。
「ふらないことを躊躇う」船長が、振ってもしそれがあの「唯一の数」だとしたら、
それは・・・偶然であるだろう(と繋がるかどうかも異論あり)
最悪、いやそれ以上でも以下でもなく無関心に同様に(このへんも異論あり)。
というのはつまりこれ、「一振りの賽は断じて偶然を破棄せざらん」というのと
つまりは同じことなのか、どうなのか、何なのか。等々。
いやはや。


それはそうと、本日ついに自転車操業めでたくゴールイン。いや嬉し。
せっかくなので取り上げた14本の映画を並べてみよう。
お題は「映画を通して世界を見る」(「観る」にしとけばよかったなと今にして思う)
キーワードは冷戦終焉とグローバリズム
というわけで極力、過去20年内の作品に絞る。
1 『グッバイ、レーニン!』で冷戦の終焉を振り返る。
2 『スパニッシュ・アパートメント』でヨーロッパ統合の理想を窺う。
3 『ジョイラック・クラブ』でアメリカにおける中国系移民。
4 『ベッカムに恋して』でイギリスにおけるインド系移民。
5 『僕のスウィング』でロマについて学ぶ。
6 『ノーマンズ・ランド』冷戦終焉の混乱のもたらした悲劇。
7 『ツォツィ』アパルトヘイト後の南アフリカの現在
8 『母たちの村』アフリカ人の手で映画を撮るということ。
9 『11'09"01 セプテンバー11』もちろん、9・11について考えること。
10 『子供の情景』で戦争後のアフガニスタンの姿を。
11 『オフサイド・ガールズ』で目下のイラン事情を覗く。
12 『四川のうた』で改革開放30年の中国。
13 『グエムル民主化後の韓国映画かく発展せり。
14 『初恋の雪 ヴァージン・スノー』日韓関係改善の10年を、未来への指針に。


この14本ぜんぶ観ている人はそうはおるまい、という幅の広さが、ささやかな自負だったりします。
ところで私はこれまで、「21世紀」が本当の意味で訪れるのはもう少し先なのだろう
と思っていたのだけれども、
(20世紀が本当の意味で始まるのは第一次大戦後というのと同じ意味で)
そうではなくて、89年から91年にかけての冷戦が終焉した時点で、
20世紀はすでに終わりを迎えていたのだ、というように、
この下半期を終えてみて、考えるようになる。
爾来20年。
インターネットに代表される情報網の怒涛のグローバル化と、
経済の単位の超国家化のとめどない進展、
付随的にこれも地球規模での環境問題の深刻化は、
20世紀と21世紀とを質的に分断して考えるに十分であるように見える。
だからどうしたということも別にないのだけれど、
であればもう、我々は20世紀を清算するに十分な時に来ていると言っていいはずで、
だからこそ私は、おもむろに話は変わるようだけれども、
今こそ20世紀文学史を、完結した一個の物語として書き上げる時だと思う。
今も続いてるからね〜、と適当なところでお茶を濁したようなものはもう要らない。
そうではなく、「20世紀とは何だったのか」を問うために、
敢えて20世紀を完結した一個のフィクションとして捉え、一本の筋の通った物語を語ること。
そのうえでこれにこてんぱんに批評を加えられれば、なお望ましい。
そのような仕方でこそ、我々は自覚的に過去と決別できるし、そうすべきではあるまいか。
とまあ、なにを血迷ったか、そういうことを考えて鼻息あらくしたりしております。
何があったというのだろうか。