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えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

青春時代は傷だらけ

フランス映画

最近観た映画は、『地下鉄のザジ』と『デリカテッセン』。
どちらも十数年前に一度観た記憶は今やほとんど消えうせていたのでまことに新鮮。
(薄暗い部屋の中、14インチのテレビにレンタルビデオで借りた映画をせっせと観ていたあの頃よ、と。)
『ザジ』とはかくも幸福なドタバタ映画であり、
デリカテッセン』とはかくも黒々としたユーモア炸裂の作品であったか。爆笑。
大変感激したので、続けて
『ミックマック』Micmacs à tire-larigot, 2009 を観る。
(どうでもいいけどひどい邦題ではある。ミックマックには「陰謀」と「混乱」という二つの意味があり、
この映画には当然、両方の意味が含まれている。à tire-larigotは「大量に」。)
兵器製造会社の社長二人をとことんコケにするという、実にストレートなお話ながら、
奇抜で手の込んで意外にスケールのでかい「仕返し」の展開が大変見どころ。
ジャン=ピエール・ジュネは凄く好きかも、という今更の発見。
それからなんとなく、『ノルウェイの森』。トラン・アン・ユン監督、2010年。
私が原作読んだのは、これもゆうに十数年も前のことなので、
見事に記憶が失われており、幸か不幸か、ある程度原作と切り離して観られる。
そういう者の観るところでは、この映画なかなかどうしてよい映画でした。
過剰にナルシスティックで、それが故に傷だらけの青春時代のあり様を、
リリックにロマンチックに、大変よく画面に描き出せているのではありますまいか。
なので、二十歳そこそで原作の小説を読んで見事に「撃沈」した頃の自分の心情が
深いところから湧き上がってくるような(気恥ずかしい)感じを覚える。
私の場合は単に自意識過剰で単に物知らずの世間知らずだっただけなので、
別段思い出したくもないような記憶ではあるけども。まあナイーブではあったわさ。はは。


竜之介さん、ご返事もしませんで失礼いたしました。
全集でまとめて読むとその作家のことがぐんとよく分かるので
大変よいですよね。本を置く場所さえあればねえ。
創土社から出た『ホフマン全集』11巻はまとめて買うとネットで7万以上はする、と。
こういうのは端本をせっせと集めるのがよいのでしょうね。
フランスに怪奇(ホラー)小説ははたして本当に存在しないのか、どうか。
こういうのはなかなか即断できない問いですねえ。
その昔、フランスにはそもそも「幻想」fantastique 小説は存在しないかのように思われていたのだけれど、
カステックスやシュネデールといった研究者の「擁護と顕彰」の努力の結果、
今では広く認知され、研究も盛んに行われました。
80年代に翻訳・紹介が色々と出たのはその波及だったといえます。
最近の事情は追いかけていないのでよく存じませんけども。
18世紀末のイギリスのゴシック小説の影響は、1830年代のフランス・ロマン主義にも見られ、
ユゴーバルザック、ゴーチエ、ネルヴァルなどにも窺える、というのが
文学史で言われる事柄ですが、しかし恐らく彼らは「怖がらせる」ことを
主意に置いて小説を書いてはいない。
もし19世紀フランスにホラーがあった(可能性がある)とすれば、
それはもう少し大衆小説よりなところに見出せるのかもしれない、
と思ってもみるのだけれど、うーん、どうでしょうね。
ことモーパッサンに関しては、彼は当代の人間にはまだ「理解できない」何物かが
この世に存在しうる、ということを、そしてそれが我々に「恐怖」を与える
という認識を持っていました。
実証主義の時代にその限界を意識すること。
そこに19世紀末特有の「不安」が存在したということは、
確かに言えるのではないかと思います。
てなところで、要領を得ませんがご返事に代えまして。再見。