えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

モーパッサンとブルターニュ

6月30日がマラルメ。「エロディアード」を読み終える。ばんざい。
最後8行がどんでん返しだったのね。
そこに至って、エロディアード自身の内面に葛藤があることが暴露される。
だとすれば、劇作品としては、この作品はそこからこそ始まるはずのものではなかったか。
結局、乳母の役割は、ヒロインの独白を引き出す契機にしかなっておらず、
この二人の主従関係に、本当の意味で対立は成立していない。
マラルメが、劇としてこの作品を完成させられなかったこと、
つまり、どっからどこまでも彼が詩人でしかなかったこと、
そのことがこの結末に窺われる、ような気がしないでもない。
次からいよいよ、マラルメ最難関テクスト「古序曲」へ。
ほんまなんかな。


先週末は関東遠征。
ご案内いただいた西部古書会館の即売展で購った一冊、で見つけた翻訳。
ジャン・リシュパン、「二枚の肖像画」、松尾日出子訳、『ミステリ・マガジン』、2005年11月号、p. 162-166.
136頁の解説には短編集Les Morts bizarresに収録とだけある。ちなみに出版は1877年。
なんとまあ、ミステリの世界はすごいなあと。


それはそうと、
ヴァカンスのシーズンだ。どこか遠いところにいってしまいたいなー。
たとえば、ブルターニュ
というわけで、願望を込めておもむろに翻訳をする。
ほぼ半年ぶり。
モーパッサン 『妖精たちの国』―ブルターニュ紀行
お読みいただけましたら幸甚です。


訳しながら改めて読み直していると、
最後のところに出てくる考古学者らしき人物との出会いは、
おそらく作り話なんだろうなあ、という気が強くする。
「伝説が今なお生きた国」を体現する、この人物との出会いを挿入することで、
主題を生きた現実味のあるものにしているのだ。
この恐らくは架空の人物の口からおとぎ話が「語られる」ことも含めて、
1880年末のこの記事にも、短編小説家モーパッサンの姿が既に垣間見られるのである。
それはそれとして、夕暮れ時に、メンヒルに腰かけながら、
ブルターニュの伝説を聴くモーパッサン
という情景は、なんともしみじみと心に残るものだと思う。


しかしまあそんなことをしている場合でもないのではあった。
夢は夢であってこそ美しい、とか。
ブルターニュは遠きことかな。