えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

ラ岬

ブルターニュへさらに思いを込めて翻訳しました。
http://www.litterature.jp/maupassant/chronique/chro21fev1883.html
お読みいただければ幸甚です。
(いつもの記述だと文字化けするのでどこかに問題があるやもしれぬ。
文字コードは今もってよく分からない。)


前半はともかく、後半の語りの構造は「妖精たちの国」と同じである。
現地で出会った人に、その土地の民間伝承を伝え聞く。
してみると、ここに出てくる司祭さんも、
実のところはモーパッサンの創作なのかもしれない。
そうでないかもしれない。
石井洋二郎、『異郷の誘惑 旅するフランス作家たち』、東京大学出版会、2009年
を読むと、ロマン派作家の頃以来、「紀行文」とは作家のフィクション混じり放題
の代物であったことがよく分かる。
モーパッサンの『水の上』も、実体験を基にした「創作」であった。
語るという行為は、その本質からして既に「創作」なのだ。
結局、モーパッサンの「記事」を、ノンフィクションとフィクションで区別することは
それほどに有効なものではない。
モーパッサンという一人の作家が残したテクストの全体として、
短編とクロニックを区別せずに通時的に並べる、という形の編集による全集が
あってもよいのだろう。
そのような代物を辛抱強く読む読者が、どれほどいるかはともかくとしても。
そういうわけで、訳し始めてはや6年以上になる、モーパッサンの「時評文」を、
モーパッサン愛好家の方にぜひ読んでもらいたいと、思う次第です。