えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

密度の濃い人生

まる二日間、部屋の中を片づける努力をする。
努力は努力。
長らく、寝る前用だった
シモーヌ・ベルトー、『愛の讃歌 エディット・ピアフの生涯』、三輪秀彦訳、新潮社、1971年
をようやく読み終える。なんだかずいぶん長かった。
つまるところ、ピアフの恋人だった男性が生涯に何人いたかとても数えられない、ということである。
実にまあ破滅的で濃厚な芸術家の生涯であった。
そういえば、
『わが愛の讃歌 エディット・ピアフ自伝』、中井多津夫訳、晶文社、1980年(2007年12刷)
の中に、マルセル・セルダンを事故で亡くした後に、
ピアフが回転テーブルで交霊術を行っていたという話が出てくるのだが、
シモーヌ・ベルトー(ピアフの義妹?)はそれについても証言している。

わたしは考えた。<もうだめだ、彼女は気が狂ってしまう、それにわたしも。どうしてもこのテーブルを動かさなくちゃ>
 で、わたしはテーブルをそっと持ち上げてみた。エディットはそれにかじりついて、うれし泣きをした。(297頁)

なぜだか分からないが、この箇所にいたく感銘を受けたので備忘に記しておく。


片づけをしていたら(でも片づかないけど)、
ラブレー、『第五の書』、宮下志朗訳、ちくま文庫、2012年
が出てくる。宮下訳『ガルガンチュアとパンタグリュエル』完訳は
昨年あった仏文界でのめでたい出来事の一つであった。
当時刊行された希書『パンタグリュエルの滑稽な夢』の図版が載っているところも素晴らしい。
最近になって見つけたヴァルガス。
フレッド・ヴァルガス、『彼の個人的な運命』、藤田真利子訳、創元推理文庫、2012年
三聖人の三作目。原題は Sans feu ni lieu「火も居場所もない=宿なし」の由。
作者は結局のところ、三聖人のキャラクターを活かしきれなかったのか、と思わないでもないが、
この作品では、ネルヴァルの有名な詩がモチーフに使われている、という点を
どうせ忘れてしまうので、忘れる前に記述しておく。
最後に、つい最近読んだ古典的ミステリー。
梶山季之、『せどり男爵数奇譚』、ちくま文庫、2000年(2012年6刷)
第2話に『ふらんす物語』初版が出てきて成程と思うのだが、
なんといっても特筆すべきは最終話に出てくる、人間の肌で装本をする男である。
こんなに気色悪いものにはずいぶんと久しぶりに出くわしたことであった。

 あたしが知っている限りでは……フランスの、たしか天文学者でしたか、フラムマリオンという博士が、愛人の伯爵夫人が死んだときに、その皮を剥ぎ取って、『天地』という自作の詩集の装丁に使った……という話ですな(後略)(286頁)

 これはカミーユ・フラマリオンのことに違いなかろうが、
しかし本当なんだろうか、この話。