えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

抹消された α と β /イズィア「波」

 2月11日(土、祝)は関西マラルメ研究会@京都大学文学部仏文研究室。4名。

 「部屋からの外出」に関する草稿の内のアルファ稿、およびベータ稿の途中まで。プレイヤッド版では851-853ページ。

 閉まるドア、振り子の音、廊下、磨かれた壁に映る影、螺旋階段、心臓の脈動、鳥の羽ばたき、大文字の「夜」、といった要素を繰り返し用いながら、恐らくは真夜中、時計の音=鼓動の消滅と同時に純粋自己意識(みたいな何か)が確立せんとするその時に、ふたたび心臓=扉の物音が聞こえ……、という場面の変奏らしきもの。ただしこのアルファ稿、ベータ稿は作者の手によって大きく✕が記されており、ボニオ版には収録されなかった完全な下書きであり、とりわけ修正の多いアルファ稿は不明の箇所が多い。ベータ稿では一転して「夜」の意識内容が述べられ、構文的には平易さが増しているが、それはそれとしてやはり根本的によく分からないテクストである。いやはや。

 次回の読書会は4月15日(土)の予定なり。

 

 ジャック・イジュランの娘、Izïa Higelin イズィア・イジュランはずっと英語で歌っていたが、2015年のアルバム La Vague『波』ではフランス語で歌っている。そのタイトル曲の「波」。

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Je suis la vague qui te ramène

Sur les récifs quand tu te perds

Je suis le soleil qui te brûle

Quand tu reviens nu sur les dunes

Je suis la vague

Qui te ramène

Et le soleil

Tu te rappelles

("La Vague")

 

私は波 あなたを連れ戻す

暗礁の上で あなたが迷う時

私は太陽 あなたに照りつける

あなたが裸で 砂浜に戻る時

私は波

あなたを連れ戻す

そして太陽

あなたは思い出す

(「波」)