えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

『モーパッサンの修業時代 作家が誕生するとき』刊行

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 このたび、水声社より『モーパッサンの修業時代 作家が誕生するとき』を刊行いたしました。A5判上製、361頁、定価5,000円+税。装幀は齋藤久美子さんです。

blog 水声社 » Blog Archive » 10月の新刊:モーパッサンの修業時代――作家が誕生するとき

 そして本にはどこにも記してませんが、表紙の絵は25歳頃のモーパッサンの肖像を私が描いたものを、お恥ずかしながら使っていただきました。

 以下、固い文面ですが、800字で書いてみた自著紹介を掲載します。

 本書は、フランス19世紀の作家ギィ・ド・モーパッサン (1850-1893) の青年時代の著作(詩・戯曲・小説)の分析を通して、一人の作家が〈誕生〉するとはどういうことかを考察するものである。従来、習作として十分に顧みられることがなかった作品を総合的に分析することで、二十代の青年の成長過程を詳細に跡づけ、作家研究および作品研究の両面に寄与することを目ざしている。

 本書は3章(および序章・終章)からなる。第1章「ポエジー・レアリスト」では、1870年代の活動の中心に位置した韻文詩を取り扱う。当時まだ影響の大きかったロマン主義を偽りの詩情として批判し、物質主義的な世界観に基づく荒々しいレアリスム(現実主義)を導入することで韻文詩の刷新を志すという、青年の意図と野心を明らかにする。また、詩作の実践の過程でレアリスム美学が鍛えられ、そのことが後の散文作家を準備したことを論じる。

 第2章「演劇への挑戦」では、同じ70年代に書かれた戯曲を取り上げる。詩と同様にレアリスムの導入によって韻文歴史劇を刷新しようという著者の試みを検証し、その意義を明らかにすると同時に、演劇の試みが彼に何をもたらしたかを明らかにする。

 第3章「小説の誘惑」においては、同時期に書かれた中短編小説と、最初の長編(後の『女の一生』)を対象とする。小説において個人的に重要なテーマが発掘されていること、また長編小説の試みの中に、レアリスム作家の理念と技法の成長が認められることを明らかにする。その後、1880年に発表された「脂肪の塊」の分析を通して、この作品を執筆する中で、作者自身が散文の持つ可能性(その社会性・批評性)を発見したことが、詩人から小説家への〈転向〉の決定的な理由となったと論じている。

 終章においては、1870年代のすべての活動を通して、確固たる文学理念と技法を備えた1人の芸術家が準備されたからこそ、「脂肪の塊」以後の作家の成功が保証されたと結論づけている。

  なお、出版に際しては名城大学学術研究奨励制度の助成を受けたことをここに記し、名城大学に感謝を述べたいと思います。

 ちなみに、モーパッサンの絵は本当はカラーで描いていました。さすがに恥ずかしくてこのままでは出せませんでしたけど。

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