えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

エッフェル塔に反対する芸術家たち/フランス・ギャル「エラ、彼女はそれを持っている」

『タン』紙、1887年2月14日


 先日のエッフェル塔の話の続き。

 モーパッサンが加わったというエッフェル塔反対の抗議文書はいったいどういうもので、誰が署名していたのだろうか。

 ということが気になったので、当時の新聞を幾つか見てみる。中では『タン』紙、1887年2月14日の記事が、抗議文全部に加えて、それに対するギュスターヴ・エッフェルのインタヴューを載せていて、もっとも興味深かった。というわけで、それを全文訳してみた次第。

「エッフェル塔に反対する芸術家たち」

 署名者として名が挙がっているのは42名。主に画家、建築家、彫刻家で、一部に作家などが加わっている。錚々たる顔ぶれといってもいいだろうが、復古王政時代から活躍していた画家メソニエ(72歳)、第二帝政時代を代表する音楽家グノー(69歳)、建築家ガルニエ(62歳)、劇作家サルドゥー(56歳)は、一世代前の大御所であり、高踏派詩人だったルコント・ド・リール(69歳)、シュリ・プリュドム(48歳)、フランソワ・コペ(45歳)も今は揃ってアカデミー・フランセーズに入会済みである。モーパッサン(37歳)は、恐らくはアレクサンドル・デュマ・フィス(63歳)あたりから声をかけられたかと思われるが、デュマ・フィスもやはりアカデミー会員である。全体的に、1887年の時点ではすでに保守的な位置に立つ芸術家たちが大勢を占めていたといってよいだろう。当然といえば当然のことであるけれども。

 高踏派詩人から出発し、いわば在野に留まりつづけたテオドール・ド・バンヴィルカチュール・マンデス、そして解説にも記したとおり、エミール・ゾラをはじめとする自然主義作家の名前はここにはなく、この面々の中でモーパッサンの存在はいささか特異なものであるようにも感じられる。

 それはそれとして、ギュスターヴ・エッフェルのインタヴューというのが面白く、実に堂々と反論していささかの譲歩もない。産業革命から五十年以上を経て、まさに科学と産業の時代の申し子といった趣きだ。科学の進歩に無条件の信頼を託せた時代が、21世紀の現在からするとなにやら眩しくさえ見える。それはともかく、勝負は初めからついていたという感が強く、件の抗議文も、やたらに威勢はいいが、なにやら負け犬の遠吠えのようでもある。そう思って読み直すと、一抹の寂しさが感じられたりするのであった。

 まあ、どうということのない話ではありました。

 

 フランス・ギャル France Gall の1987年のシングル「エラ、彼女はそれを持っている」"Ella, elle l'a" は、アルバム『ババカール』Babacar に収録。エラ・フィッツジェラルドを歌った曲。作詞作曲はもちろんミッシェル・ベルジェ。

www.youtube.com

Ella, elle l’a
Ce je n’sais quoi
Que d’autres n’ont pas
Qui nous met dans un drôle d’état
Ella, elle l’a
Ella, elle l’a
Ou-ou ou-ou ou-ou ou
Elle a, ou-ou ou-ou ou-ou ou, cette drôle de voix
Elle a, ou-ou ou-ou ou-ou ou, cette drôle de joie
Ce don du ciel qui la rend belle

("Ella, elle l'a")

 

エラ、彼女はそれを持っている

何か分からないもの

他の人の持たないもの

それが私たちを変な状態に置く

エラ、彼女はそれを持っている

エラ、彼女はそれを持っている

彼女は、あの変わった声を持っている。

彼女は、あの変わった喜びを持っている。

この天からの贈り物が彼女を美しくする。

(「エラ、彼女はそれを持っている」)