えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

フランス・ルネサンスの人々

まだ読了じゃないけれど。
渡辺一夫『フランス・ルネサンスの人々』岩波文庫1995年(5刷)
ルネサンスを知るにはまずこれを読みたまえ、というような見事な書物だと
素直に思う。渡辺一夫はこんなにえらい先生だったとは知らなかったこと、多少反省。
つまるところ、作者の文章の端から端にまでユマニスムの精神が貫通しているということだ。

 ユマニスムは、思想ではないようです。人間が人間の作った一切のもののために、ゆがめられていることを指摘し批判し通す心にほかなりません。従って、あらゆる思想のかたわらには、ユマニスムは、後見者として常についていなければならぬはずです。なぜならば、あらゆる人間世界のものと同じく、人間のためにあるべき思想が、思想のためにある人間という畸形児を産むことがあるからです。(281ページ)


ここで作者が問題にしているのは、全然過ぎた過去の話ではないし、実際その通りだろう。
個人的に好きなのは(多分)無頼漢エチエンヌ・ドレながら、
やはりカルヴァン、イグナチウス・デ・ロヨラを語る章が眼目というもの。
それにしてもルネサンスの人たちは、なんというか皆さん超俗なところがあって、
いさぎがよいというか、読んでいてもすがすがしい。
それと引き比べると、19世紀は俗っぽさがどうも抜けきれない感じがする。
本当のところは、そんな単純な話でもないのだろうけれど。