えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧

BD『タンタン ソビエトへ』カラー版/ザジ「私はそこにいた」

2017年はロシア革命100周年にあたるが、それを記念して(?)『タンタン ソビエトへ』がフルカラーとなって刊行された。 Hergé, Les Aventures de Tintin reporter chez les Soviets, Casterman, Editions Moulinsart, 2017. タンタンの冒険シリーズの最初の…

BD『ペルセポリス』第1巻/ヴァンサン・ドゥレルム「僕は今晩死にたくはない」

マルジャン・サトラピ『ペルセポリスI イランの少女マルジ』、園田恵子訳、バジリコ株式会社、2005年(2014年第8刷) 原作(1, 2巻)が2001-2002年に刊行された時は、ラソシアシオンという独立系出版社による刊行、(従来のフルカラーとは違う)白黒の画像…

BD『星の王子さま』/パトリシア・カース「アデル」

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ原作、ジョアン・スファール作『星の王子さま』、池澤夏樹訳、サンクチュアリ出版、2011年(2015年第2刷) 今さら言うまでもなく、『星の王子さま』の原作には著者サン=テグジュペリ自身の手になる挿絵が添えられてお…

BD『エロイーズ』/ザジ「エートルとアヴォワール」

ペネロープ・バジュー&ブレ『エロイーズ 本当のワタシを探して』、関澄かおる訳、DU BOOKS、2015年 はじめブログで評判になったこの著者の翻訳としては、先にアラサー女性の冴えない日常を自虐的に1話1頁で綴った、 『ジョゼフィーヌ!』、関澄かおる訳、DU…

BD『ポリーナ』/ザジ「愛の前に」

一言で言えば、とっても絵が上手。 バスティアン・ヴィヴェス『ポリーナ』、原正人訳、小学館集英社プロダクション、2014年 1984年生まれのこの作者には先に出世作の 『塩素の味』、原正人訳、小学館集英社プロダクション、2013年 の翻訳があり、カラーの画…

抹消された α と β /イズィア「波」

2月11日(土、祝)は関西マラルメ研究会@京都大学文学部仏文研究室。4名。 「部屋からの外出」に関する草稿の内のアルファ稿、およびベータ稿の途中まで。プレイヤッド版では851-853ページ。 閉まるドア、振り子の音、廊下、磨かれた壁に映る影、螺旋階段、…

BD『かわいい闇』/ストロマエ「パパウテ」

この作品を好きだと言う自信も、そのつもりもまったく無いのだけれど、一読、その気色悪い感触が尾を引くことは確かな、どうにも無視できない作品である。 マリー・ポムピュイ、ファビアン・ヴェルマン作、ケラスコエット画『かわいい闇』、原正人訳、河出書…

モーム「赤毛」/イェール「子どものように」

「雨」の次は「赤毛」である。これまた嫌な話ではあるのだが、しかし完成度という点では、私は「雨」よりもこちらを取りたいと思う。 舞台はサモアの小さな島。まず、語りの順序とは無関係に話の要点を簡略に記せば、おおよそ次のようになるだろう。 アメリ…

BD『オリエンタルピアノ』/ジュリアン・ドレ「崇高にして無言」

こんな作品にいち早く目を止めて、翻訳・紹介できたらきっと誇らしいだろうと、そんな風に思わせる作品が時々あるものだが、この ゼイナ・アビラシェド『オリエンタルピアノ』、関口涼子訳、河出書房新社、2016年 は、私にとってまさしくそうした一冊である…

モーム「雨」/ミレーヌ・ファルメール「ブルー・ブラック」

考えてみるまでもなく、モーパッサン好きがモームを好きにならないはずもない、というものなのだが、これまで読む機会がなかったサマセット・モームをできるだけ読む、というのが私の今年の目標である。 サマセット・モームは1874年に生まれ(ヴァレリーより…

BD『神様降臨』/ジュリアン・ドレ「湖」

翻訳BDの中で、ニコラ・ド・クレシーに次いで名を挙げたいのは、マルク=アントワーヌ・マチューである。彼の作品でこれまでに翻訳されたものとしては、まず、これもルーヴル美術館BDプロジェクトの一環を成している 『レヴォリュ美術館の地下 ある専門家の…