えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

2012-01-01から1年間の記事一覧

年の終わりに

放心している間に3ヶ月過ぎてしまう。 せめて(だいたい)今年ビデオで観た映画を 発表年順に並べてみる。 『北ホテル』(1938) 『嘆きのテレーズ』(1953) 『白い馬』(1953)、『赤い風船』(1956) 『死刑台のエレベーター』(1958) 『モンパルナスの灯』(1958) …

モーパッサンのお墓に

夏の終わりに、モンパルナス墓地にある、 モーパッサンのお墓にお参りしておこう。 この夏の個人的課題は、日刊紙『ジル・ブラース』を読むことだった。 1881年末にモーパッサンが寄稿を開始した時、 紙上ですでに活躍していた作家の中心メンバーはテオドー…

ジョルジュ・サンドの理想主義

似顔絵の次は彫像と、我ながらそんなに「顔」が好きなのかと呆れるが、これまたおじさんばかり続いた後には、ジョルジュ・サンドに救いを求めるのだった。 リュクサンブールのサンド像は、 François Sicard (1862-1934)により、1905年作の由。 いかにも19世…

ルコント・ド・リール的絵画

またリュクサンブール公園に戻って、この公園随一の仰々しい大作、ルコント・ド・リールの像。 Leconte de Lisle (1818-1894). 豪勢な名前だが、貴族ではなかった。「前の名前」はシャルルであるが、姓だけをペンネームのように使ったので、もっぱらルコント…

シャトーブリアンの時代

パリ、7区。 Square des Missions étrangères にあるシャトーブリアンの像。 彫刻家 Gambierによって1948年に作られた由。 この公園はrue du Bacに面しているのだが、この通りの住居に、晩年のシャトーブリアンが住んでいたのにちなんでいる。 そういえば、…

ミュッセ頌

モンソー公園に戻って、ミュッセ(1810-1857)の像。 Alexandre Falguière (1831-1890) が手掛けたものを、Antonin Mercié (1845-1916) が完成させたものらしい。 1906年にコメディー・フランセーズの前に置かれ、後に今の場所に移された由。 「夜」連作詩編(…

靴底が前のランボー

ここのところ度々お世話になったT君に 感謝の気持ちを込めて、ランボー像をささげます。 パリ4区、place du Père-Teilhard-de-Chardin にある Jean-Robert Ipoustéguy (1920-2006)による "L'Homme aux semelles devant" 「靴底が前にある男」という題の作品…

モーパッサンの石像に

あちこちに頭を下げてばかりいると モーパッサンに怒られるというか 呆れられそうな気がしないでもないので、 モンソー公園のモーパッサン像。 なにやら子どもがおったり、 頭に鳩がとまったりしてますが、 みんなに愛されるモーパッサン、 ということにして…

モンテーニュの顰み

19世紀ばかり続いたので、今度はモンテーニュ。 rue des Écoles, ソルボンヌの真横あたり。 Wikipédia によるならば、 Paul Landowski (1896-1961)の作。 1934年にパリ市に寄贈される。 もとは石像だったが、1989年に、学生によるいたずらや破壊によりよく耐…

スタンダール徒然

ロダンといえば、リュクサンブール公園にも像がある。 今度はスタンダール。1920年に設置らしいが、正確なことはよく分からない。ブロンズが溶け出してるんでしょうか。 彫刻家David d'Angers のデッサンに基づくものの由。 バルザックといいスタンダールと…

時々はバルザック

私自身が「彫像熱」statumanieに憑かれたみたいになってますが、ロダン作のバルザック像。 ロダン美術館にある方が元のようで、これはラスパイユ通りとモンパルナス通りの交差点にあるもの。 1939年に設置された由。 ロダン作バルザック像は、文学者協会会長…

『ジル・ブラース』の標語

リュクサンブール公園にはヴェルレーヌの像もある。 実物はやたらに大きいことに驚かされる。 Auguste de Niederhäusern, dit Rodo (1863-1913)作。 1911年に公園に置かれたものの由。これまたすり減ったのか、なんだか可愛らしくなっている。 3人の女性の像…

読書の影響

何の脈絡もなく、リュクサンブール公園のボードレールの像。なんとなくおかっぱ頭に見えるのであるが、古びてすりへったからかしら。 Pierre-Félix Fix-Masseau (1869-1937)の作、 1933年に制作、公園に置かれたのは1941年である由。 よく見ると台座に詩が彫…

我らがモーパッサン

通りすがりの猫、一匹。 だから何と言われても困ります。 フランス語の文章では同じ単語の繰り返しを嫌うので、「モーパッサン」の言い換えに、文脈に合わせて「作家」「小説家」「時評文家」 あるいは「『女の一生』の作者」等々をひねり出さないといけない…

パリ、モーパッサン通り

マルモッタン美術館から徒歩で10分くらいのところ、16区の閑静な住宅街の中に、ギ・ド・モーパッサン通りがある。 別にモーパッサンと縁があった場所でもないのだけれど。 長さ90メートルほどの短い通りで、何があるわけでもないが、パリに住めるものならこ…

エッフェル塔は5フラン

写真を貼れることを、おもむろに思い出す。 ご近所のカモさん。お名前は分かりません。 古書市で見つけた本。 Exposition de 1889. Guide Bleu du Figaro et du Petit Journal, 1889. 万博に関しては研究がたくさんあるので、あまり近づかないようにしている…

筆名の氾濫

La pseudonymie contemporaine (...) a pris en effet, dans ces dernières années, des développements considérables et jusqu'alors inusités. (...) Aujourd'hui la pseudonymie s'est généralisée et étendue à un tel point que les mêmes pseudonymes…

ラ岬

ブルターニュへさらに思いを込めて翻訳しました。 http://www.litterature.jp/maupassant/chronique/chro21fev1883.html お読みいただければ幸甚です。 (いつもの記述だと文字化けするのでどこかに問題があるやもしれぬ。 文字コードは今もってよく分からな…

備忘の読書録

備忘のために、て既に読んだことを忘れかけている、読んだ本の列挙。 柳瀬尚紀、『翻訳はいかにすべきか』、岩波新書、2000年(2011年2刷) つまりはまあ、「心してせよ」ということであります。 以下怒涛の日本語関連。順不同。 中村明、『語感トレーニング…

モーパッサンとブルターニュ

6月30日がマラルメ。「エロディアード」を読み終える。ばんざい。 最後8行がどんでん返しだったのね。 そこに至って、エロディアード自身の内面に葛藤があることが暴露される。 だとすれば、劇作品としては、この作品はそこからこそ始まるはずのものではなか…

かつて仏文研究室で

採点と準備と書類書きに追われる日々。 加藤周一の『羊の歌』を読むと、戦時中に東大の仏文研究室が一種のアジールとしてあったことが窺えて感慨深い。 無力ではあったに違いないが、そこに良識が息づいていたということを、記憶に留めておいてもよいだろう…

生存確認とフランス・ミステリ

とりあえず生きております。 5月26日(土)がマラルメ。「エロディアード」読み切れず。 先週末、関東遠征。おもに三四郎池をじっくり観賞。 100年の間に、植物が育ちまくり。 この春、文庫で読んだフランスのミステリを順不同で列挙。すべて創元推理文庫。 …

主語がないなんて

一週間が怒涛の勢いで過ぎ、週末沈没の日々が始まる。 発作的に、 水村美苗、『日本語が亡びるとき 英語の世紀の中で』、筑摩書房、2008年 を読み、これを読んだら絶対読み返したくなる『三四郎』(岩波文庫)を読み、 丸山真男、加藤周一、『翻訳と日本の近…

太宰治「富岳百景」のモウパスサン

「モウパスサンの小説に、どこかの令嬢が、貴公子のところへ毎晩、河を泳いで逢いにいったと書いて在ったが、着物は、どうしたのだろうね。まさか、裸ではなかろう。」 「そうですね。」青年たちも、考えた。「海水着じゃないでしょうか。」 「頭の上に着物…

学期はじまる

今年度も始まりまして、早々にへろへろにくたびれる。 逃避的に一つ小話を。

改めて、簡単なのか

モーパッサンのフランス語は(少なくとも相対的に)簡単だ。 と断言すると、しかしなんとはなしに疾しい気分がしないでもない。 「モーパッサン先生」に怒られそうな気もするし。ははは。 Maupassant par les textes にThierry Selva 氏による、 Une étude q…

フランス語で読むこと

モーパッサン関係の最近のトピックのもう一つは、 佐藤若菜、『フランス語で読むモーパッサン 対訳ジュールおじさん・首飾り・シモンのパパ』、NHK出版、2011年 でありました。 こういう需要があるのは大変喜ばしいことである。 この本が目新しく見えるの…

まんがで読破すること

いかん、もう四月だ。どうしよう。 今更な話ではあるが、 バラエティ・アートワークス、『まんがで読破 女の一生』、イースト・プレス、2012年 を本屋で見かけた時はおどろいた。 190頁で主要なところはきっちり描いて、その職人芸は見事なものです。 なかな…

丙類を思う

相変わらず、翻訳を見直して、会議をして、もう3月も終わります。 22日、ヴェルレーヌとマラルメの充実の一日。 飲み過ぎて電車寝過ごし、あやうく終電を逃しかける。 23日から25日まで新潟へ。まだ雪降って寒かったのお。 今日ぱらぱら読んで、ほうほうと唸…

時はすぎゆく

2月前半、買ってもらえるかどうか分からないまま翻訳に勤しむ。 昨日、ご採択いただけるとのご連絡あり。あれ嬉し。 2月後半、頼まれて翻訳のお手伝い。及び関東遠征。 3月に入って、これも買ってもらえるかどうかはまだ定かならぬ 問題集のお仕事。合間に発…