えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

2011-01-01から1年間の記事一覧

よいお年を

12月5日に出発し、 9日、運命の日をどうにか乗り切り(あれこれお世話になりました)、 12日に帰宅した後も、なにやかやとせわしい日が続く。 17日マラルメ。本日27日ネルヴァルで語り尽くす。舞い上がり過ぎ。 明日より帰省。 最近観た映画は『巴里の屋根の…

あわあわ

あわわわ、と言っているうちに日がどんどん過ぎる。 読み終えた電車本。 ディケンズ、『二都物語』上下、中野好夫訳、新潮文庫、1967年 主筋だけ取ると実にロマネスクでロマンチックだけれど、 フランス革命前、民衆の間で不満が高まっていくところと、 革命…

モーパッサン、アグレガシオンの課題に

一月前。おお大変だ。 すでに旧聞に属するけれども、 10月号の『マガジン・リテレール』はLe Mystère Maupassant「謎の人モーパッサン」と題する モーパッサン特集号であった。 これは来年のアグレガシオン(中高等教育教授資格試験)の課題図書の中に、 『…

エッフェル塔の潜水夫

ところでもうずいぶん立つけれど、 ピエール・カミ、『エッフェル塔の潜水夫』、吉村正一郎訳、ちくま文庫、1990年 を読みました。 原著は、Pierre Cami (1884-1958), Le Scaphandrier de la Tour Eiffel, 1929. ユーモア小説とミステリーと冒険ものとを全部…

不機嫌でへこむ

疲れていると寛容度がさがって不機嫌となり、あとで自己嫌悪に陥る。我ながら小物だ。修行が足りないのお。 それはともかく、

物憂い春

逃避のためにデヴィッド・リーン版『オリバー・ツイスト』を観る。1947年。 原作の要点を綺麗に押さえ、終盤はややこしい人物関係を省略してきっちりまとめた佳作かと。 一番良かったのはサイクス役のロバート・ニュートン、 あるいは彼のブサイクな犬。 194…

旅人かへらず

しばらく前にFさんにご教示いただいたもの。 二一 昔の日 野ばらのついた皿 廃園の昼食 黒いてぶくろ マラルメの春の歌 草の葉先に浮く 白玉の思ひ出 無限の情 (西脇順三郎、『旅人かへらず』(1947)、『Ambarvalia / 旅人かへらず』、講談社文芸文庫、1995…

大人の読書

なんとなく、今さらのように、 小倉孝誠、『「感情教育」歴史・パリ・恋愛』、みすず書房、「理想の教室」、2005年 を読む。まことに明快明瞭。 『感情教育』は主人公フレデリックに語りの焦点が当てられているにもかかわらず、 その主人公に対して批判的距…

休眠中

長らく休眠中で、ブログ書く習慣もどこへやら。 9月末、我が人生のそれなりの大仕事に、時間切れでどうにかけりをつける。 Xデーは12月9日。それまでいわゆる蛇の生殺し状態。あうあう。 逃避でほそぼそ読んだ電車本。 ディケンズ、『大いなる遺産』、佐々…

ご返事遅れまして

竜之介さん、ペレンナさん、いつもコメントありがとうございます。 ピエール・カミなんてよくご存知でしたね。 ふーむなるほど。シャーロック・ホームズのパロディ『ルーフォック・オルメスの冒険』は 今や希覯本と化しているようだ、と。 とりあえず『エッ…

求めびと

件の原稿を送信して一息つく。 さしもの私も毎日モーパッサンと向き合ってると息が詰まってくるので、 誰か他の人はいないじゃろか、と浮気心を起こした話。 以下妄言につき乞うご寛恕。 考えるにつけ、私が作家に要望するものは至って明確に次の4点である。…

ニヒルなひと

今日、ふと「ああこれがニヒリズムということなのか」と納得してしまったので、 そのことを記す。 モーパッサンの作品について考えていると、その大きな特徴として 価値の相対化というものに突き当る。 モーパッサン、あるいは極めつけの相対主義者。 そこに…

オブセッションがいっぱい

竜之介さん、ペレンナさん、コメントをどうもありがとうございます。 風邪のことまでどうもどうも、お恥ずかしい限りです。 昨年の冬にFさんに「手洗いうがいをちゃんとしてたら風邪なんか引かないんだよ」 と力づよく断言いただきまして、「おおそうか」と…

モーパッサンと渡辺一夫

『渡辺一夫評論選 狂気について 他二十二篇』、大江健三郎・清水徹編、岩波文庫、1993年(2010年8刷) を読むと、戦後すぐ、冷戦の始まった頃に渡辺一夫がすごく怒っていることが分かる。 終わったと思えば、またぞろ戦争をする気なのか、と。 16世紀フラン…

部屋の中で本を探す

人生の貴重な時間の1%ぐらいは、 自分の部屋の中で本を探すことに費やしているのではないか、という疑念にかられることがあって、まあ虚しいことだ。 これも以前に読んだ本をようやく見つけ出す。

レアリスムじゃないかも

日記を書く余力のないまま日がどんどん過ぎる。 6日慶事で関東遠征。 この一月ばかりの間に二度風邪を引いたので、 一度目で『Xの悲劇』、二度目で『Yの悲劇』を読み、 遠征の行き帰りに『Zの悲劇』(いずれも越前敏弥訳、角川文庫)を読み、 勢いで『レーン…

パリ20区、僕たちのクラス

Entre les murs, 2008 監督・脚本ローラン・カンテ、原作・脚本・主演フランソワ・ベゴドー。 ZEP(教育優先地区)の中学校の様子をドキュメンタリー風なタッチで描いた、パルムドール受賞作品。 とりあえず初見の印象としては、生徒達の演技があまりに自然…

リハビリ

日記の書き方も忘れてしまったこの頃。 ここしばらくの間に観た映画。 『男と女』 『TAXi』 『グラン・ブルー完全版』 『プチ・ニコラ』 『禁じられた遊び』 『まぼろし』 我ながらなんという選択。 一番印象に残っているのは結局のとこ『禁じられた遊び』だ…

一杯一杯

暑さも加わって一杯一杯の日々を過ごす間に、あっという間に一月経ってしまう。 6月18日、ついで昨日とマラルメ「詩の危機」3、4回目。 「詩を書くこと」versificationが先にあって、 その後に韻律法prosodieは確認されるのであって、 韻律さえ守れば詩がで…

ジュリヤンについて

なんか目の覚める曲でもないじゃろか、と思ってさ迷ううちに、 Michel Delpeche, "Pour un flirt"(邦題「青春に乾杯」)に辿りつく。 目は覚めたが、腰がくだけた。 引き続き『女の一生』。 ジャンヌの夫ジュリヤンについて、あんまり誰もものを言っていな…

あるいはカンディード

誕生日。 なにかよいことはないかと思って、『舞踏会の手帖』を観る。渋い選択だ。 オムニバスの各篇いずれも味わい深いが、それにしても人生観、苦み走りまくり。 これぞ古き良き大人の映画かな。 相変わらず『女の一生』。 「無垢」な状態にある人物が、そ…

ジャンヌの父

週末、東京に。色々あった。 先日、『女の一生』のジャンヌはルソー的な「野性人」だと記してみたが、 それってつまりは『人間不平等起源論』ということなのか。 ところで、もちろん、ジャン=ジャックの名前は『女の一生』の冒頭に書き込まれているのである…

タイトルの語ること

精神的にゆとりがないとブログなんて書けないわ。 とかなんとかぶつぶつと。 おもむろに『女の一生』のタイトルを考える。 原題Une vie はどうしたって「ある一生」「一つの人生」という意味である。 身も蓋もないタイトルだ。 『ボヴァリー夫人』に倣うなら…

ノー・マンズ・ランド

モーリス・ルブラン、『ノー・マンズ・ランド』、大友徳明訳、創元推理文庫、1987年 Le Formidable Evénement は1920年雑誌『ジュ・セ・トゥ』掲載、翌年刊行の由。 英仏海峡に謎の竜巻出現で客船が次々沈没、という出だしはさながらパニック・サスペンス映…

いやな夢

『大脱走』を観終えて眠りこけたら、ものすごく嫌な夢を延々と見続ける。 目覚めた瞬間、「夢でよかった」と心底思った。

三つの目

モーリス・ルブラン、『三つの目』、田部武光訳、創元推理文庫、1987年 Les Trois Yeux は1919年雑誌掲載、翌年単行本の由。 それはつまりアルセーヌ・リュパン絶頂期に、一方でこの純然たるSFが書かれたということで、 なんでおもむろにSFなのか文脈が分か…

おおヴィルヘルム

改めて今度こそ『女の一生』に取り組まん。 と気合いを入れつつ。

ユゴーの呪縛

連休はあちこち遠征。 土曜日マラルメ。評論「詩の危機」を読む第一回目。2ページ。 あらゆる言説を韻文の内に叩きこんだヴィクトール・ユゴーは 自らの存在で詩句そのものを体現するがの如くであり、 余人をして発話する権利さえもを奪い取ってしまった。 …

ジェリコ公爵

モーリス・ルブラン、『ジェリコ公爵』、井上勇訳、創元推理文庫、1974年(2000年16版) Le Prince Jéricho は1930年刊行の由。 エレン・ロック、はたまたジェリコ公爵が実はアルセーヌ・リュパンだった、 と途中で言われてもあまり驚きはしなかったろうけど…

殺しは御法度

心おきなくフランス映画が観れるかな、と、とりあえず、 『ムッシュ・カステラの恋』 『8人の女たち』 『かげろう』 を観る。文化が洗練されるとはかようなものかとしみじみ思う。中には爛熟のものもあり。